
幸いにして今のところ人間ドックでも病気を指摘されていないのですが、数年周期で突然発症するのが「車欲しい病」。
特に買う気も無いのに試乗したら最後、如何なる治療も効果なく、注文書にハンコを押してしまう、この厄介な病気。
現に今のC5も、試乗したその週のうちにハンコを持って愛知まで買いに行ったという重症ぶり。
この病気の唯一の対策は、とにかくディーラーに近寄らずに試乗しない、ということなのですが、新型トゥインゴのRRコンセプトへの強い興味に抗しきれず、ついフラフラとデビューフェアに行って参りました。
ルノーのウェブサイトで展示or試乗車がある近畿のディーラーを探したのですが、載っていたのは須磨にあるルノー神戸だけ。
東灘ぐらいならともかく、あんな遠いところは行く気がしないと諦めていたのですが、念のためにと近くのルノー大阪城のサイトを調べてみたら、9月15日の発売日に試乗車を用意できることになったというニュースが載っているではありませんか。
なんじゃ、こりゃ!? と喜び勇んで予約の電話。
17(土)の朝一番に試乗できましたので、もしかして第1号かと思いきや、すでに十数人が試乗したとのこと。
成約も続々と決まっており、今注文しても納車は2月以降になるらしい。
試乗に行っていきなり納期の話を切り出されるのは記憶に無く、予想を遥かに超える人気。
クルマがこの出来でこの価格なら、国産車の客層もかなり取り込めそうで、この戦略は大成功じゃないでしょうか。
さて、キーを貰って試乗へと向かいます。
1、ドライビングポジション
私は日本人にしては背が高い方なので、いつも困るのがこのドライビングポジション。特に小型車の場合は足元の奥行きが取れずに、手長猿スタイルになってしまいます。さらに、運転席が前輪に近くなりますので、右ハンドル車ではどうしてもペダルオフセットが酷くなります。
しかしトゥインゴではエンジンをリアに持っていき、フロントタイヤを思いっきり前に配置できましたので、ペダルオフセットは有利な筈です。
さて、いよいよ乗り込み、シートの位置を調整します。
シートの後端を一番下げ、ペダルとの長さを合わせますが、はたしてハンドルがちょっと遠くなりすぎ。
そこで、シートバックを立て気味にしてなんとか妥協点を見い出すのですが、椅子にチョコンと腰かけたような姿勢になります。
シート自体の位置は高く、典型的なアップライトな姿勢です。
べダルオフセットは小型FWD車よりも少なく、大阪城の廻りをぐるっと試乗した限りでは、特に違和感は感じませんでした。
ただ、フットレストが無いのはマニュアル車のペダルスペースを考えてのことだと思いますが、これはちょっと残念な点です。
シートの出来自体は短時間では判断できませんが、ザラッとした表皮は肌触りがよく、国産車によくあるような安っぽさとは異なります。
2、内装の設え
フランス車の良いところは、安物は安物らしく見せ、中途半端に高級感を追いかけないところにあると思っているのですが、このトゥインゴの内装は素晴らしい。安物チックさを感じさせない、ポップでお洒落な印象。如何にもデザイナーの手がかかった設えで、ツートンカラーの配色がとても明るい。
メーター関係は最小限ですし、カーナビもビルトインできる場所が無いですが、オプションのスマートフォンクレードルでスマホを固定するか、7V型のデカゴリラ7が装着できます。
さて、いよいよ走り出すことにします。
3、ステアリング
ちょっと太めでボトムが平らにカットされたステアリングは、見た目がスポーティーです。
動き出してまず感じたのは、ハンドルの軽さ。かといってインフォメーションはそこそこあって接地感もあります。
記憶にあるRWD車のすっきりとしたステアリングの感触とも異なるのですが、前後荷重が前470/後560kg、タイヤも前後異形でリアが太いということで、FWDのような前輪を捻じ曲げるような感触とは全く異なります。
ちなみに、リアエンジンなのでフロントの設計自由度が高く、ステアリングのキレ角が大きくて、狭いところの取り回しは楽。
4、駆動系
ターボとはいえ、たった897ccのエンジンですが、車重が軽いのでハーフスロットルから充分な加速をします。
フルスロットルでは想像通りくらいですが、プロパンタクシーに負けることは無いでしょう。
エンジンは3気筒ですが、特に変な振動は感じませんでした。言われない限り、気づくことは無いでしょう。
変速機はゲトラグ製のEDCと呼んでいるDCTで、ストップアンドゴーでも変にギクシャクすることは無く、駆動系の出来は良好だと思います。
5、乗り心地
今回、これを気にしていましたが、結論から言って、期待はずれでした。
これでもフランス車?というくらい硬くて、いくら車重が軽いとはいえ、ポンポン跳ねるのです。
C5ですと、重くて硬い車体が、まるでマシュマロのような超柔らかい物体の上にふんわりと乗っかっている感触なのに対し、ばね上荷重が軽い感覚といいますか、軽い車体が硬いゴム毬の上に乗っかっている感触です。
ハイドロと較べるな!とお叱りを被りそうですが、もう少し柔らかいのを想像しておりました。
タイヤのハイトが低いのかと思いきや、フロントが165/65R15で、リアが185/60R15と、充分細くて高い。
空気圧は高めですか?と聞いたのですが、標準に合わせてありますということなので、きっとキビキビ感を優先してこういうセッティングにしたのでしょう。
ただ、一般のクルマにお乗りの方なら違和感が無いかもしれません。
6、快適性
エンジンが後なので、その音はほとんど気になりません。今日は暑かったので、エアコンの吹き出し音ですっかり消されていました。
中央の吹き出し口が小さいので、風量が多いと余計にうるさいのかもしれません。
なお、エアコンの効き自体は問題ないと思います。
試乗車がキャンパストップ付きだったので早速開けましたが、やっぱりこの解放感は半端ありません。
もし買うなら、絶対こっちでしょう。
ラジオやオーディオは確認するのを忘れました。
7、リアの広さ
ご覧のように、背もたれが立っていますので、長時間は苦しいでしょう。
前後スペースも頭上スペースも狭いので、女性や子供以外は窮屈だと思います。
8、トランクの寸法
リアオーバーハングにエンジンルームとトランクを確保するというRRコンセプト故、トランクの容量は全く期待していませんでした。
そこで、持参したメジャーで測定したのが、下記の寸法です。
奥行き58cm×横幅103cm×リアシェルフまでの高さ32cm
さすがに高さは低いですが、なにせ全長3,620mmのサイズですから、恐るべきスペースユーティリティ。
トランクの底は2cm程のウレタンを裏貼りしたマットが敷かれており、それをめくるとこの蓋があります。エンジンはこの下。
9、整備性
エンジンがトランクの下にあるといっても、ウインドウウォッシャーのタンクやバッテリーなどはボンネットにありますので、不便を被ることは有りません。
なお、ボンネットは前にずらすようにして20cmほど開けるのですが、開け方は教えてもらわない限り、絶対に判らないでしょう。
10、結論
冒頭でも述べましたが、200万円を切る価格ですし、国産車の客層も取り込み、お洒落な街乗り車として競争力は高いと思います。
イメージカラーでもある試乗車のブルードラジェをはじめとして上品でカラフルだし、特に女性の人気が高まるでしょう。
RRにしたネガは特に見当たりませんでしたので、これだけメリットがあると、小型車は他からもRR車が出て来そうな気がしました。
それにしても、我がC5とはあまりにも異なるクルマであることに驚きましたが、いやあ、クルマって、面白いですねえ。。。