
昨年の6月に試乗し、想像以上に楽しかったロードスター。
しかし、前回はホンのチョイ乗りで、じっくり乗ったらどんな感じなのかが判りません。
もしかすると酷い腰痛になるかもしれませんし、もうオープンは二度とごめんだ、と感じるかもしれません。
思い起こせば12年前、マツダの本社へ仕事で訪問した際、ロビーにあるRX-8を触って後席も充分広い事実に感激し、乗り換えの言葉が頭を駆け巡るように。
しかし、当時乗っていたRover75とは真逆のクルマですから、身体がついていけるのかが課題。
そこでレンタカーを借り出し、いつもよく走っている熊野本宮まで往復400kmで試してみることにしました。やはりいつもの道を走らないと、評価できませんから。
その結果、400kmなんてあっと言う間に走り切り、あまりの楽しさにアドレナリンが湧きまくり、思い切ってRX-8の、しかもMTに乗り換えることにしました。
今回は「1日体験 平日無料モニター」という制度を活用し、このハイドロで鈍りきった身体がロードスターによる長距離走に耐えきれるのか否かを試してみることにしました。
本来は熊野本宮まで走りたかったのですが、借用時間に限りがありますし、歳も歳ですから、途中にある道の駅「水の郷日高川 龍游」で折り返すことにしました。
さて、今回試乗させて頂いたのは、S Leather Package。
私は冷え症なので、特にオープンではシートヒーターは必須。
なので、もし買うならシートヒーターがついているS Leather Packageになりますし、室内が汚れやすいオープンは、雑巾でさっと拭けるレザーシートがベストです。
さらに、このグレードだけ幌が厚くなっているので防音も違うらしく、モニターするのはこのグレードしかありません。
ところが、大阪府下にあるロードスターの試乗車のうち、なんとMTのS Leather Packageは1台だけ。
その貴重な個体を岸和田で借り出して、いよいよ試乗へと向かいます。
基本的な評価は前回のブログのとおりなので、今回は特に高速での安定性や快適性、山坂道での楽しさ、腰痛への影響、などに注目しました。
とにかく、オープンで長距離走ることは初めてなので、どんな感想になるのか、心ワクワクです。
1、一般国道でのオープン走行
国道26号 (第二阪和国道)を一路南下。片道3車線の広い道で渋滞もなく、出だし好調。
オープンなので朝日が斜めから差し込みますが、キャップを目深にかぶって遮ります。
クラッチは軽く、シフトもスコスコ入り、いやあ、楽しい。
いつもよりずっと目線が低いのでスピード感が凄く、つい先行車から離れてしまい、後ろから煽られる始末。
2、高速道路での風の巻き込み、騒音
いよいよ泉佐野ICから関西空港自動車道に入ります。
ぐんぐん加速して本線に合流していくと、騒音はぐっと高まりますが、サイドウインドウを上げておけば風は頭上を流れるだけで、ほとんど巻き込んで来ません。
ただ、頭をやや上向きにするとキャップのつばが風にあおられ気味になりますので、一段と間深くかぶらねばなりません。
3、高速道路での乗り心地
普段ハイドロに乗っていると全く感じないのですが、高速道路の路面には結構凹凸があるのだと再認識しました。
短い周期で小刻みに上下に揺すられるのですが、速度が上がるほど周期が短くなって辛くなりますので、鈍りきった私の身体には、80~90km/hくらいがちょうど良い速度域。
さらに、シャープなステアリングは直進するために若干ですが左右への微修正を要求しますので、高速走行はあまり楽しくはありません。
ただ、昔試乗したボクスターのようなピッチングはほとんどなくて姿勢が安定しており、こんな小さな車にしてはたいしたものです。
阪和自動車道に入り、いつもよりずっと遅い速度でチンタラ走行車線を走っていると、クルクル回るライトを頭上に載せた黒いクラウンが追い越し車線をすっ飛んで行き、先行車の後ろにピタッとはりつくのを目撃しましたが、免許証に優しいクルマでもありますね、ロードスターは。
4、シートヒーターやブロワー
熱めの温風を足元に噴出しておくとオープンの高速でも凄く暖かく、快晴の空のもと、暑いくらいでした。
特にシートヒーターの効果は大きく、やはりオープンカーには必需品。
ただ、幌を閉めたら温度を下げてエアコンをONにせねばなりませんので、開けたり閉めたりしていると、その設定が面倒ではあります。
5、オープンで高速道路のトンネルに入ると
折角の機会なので試してみたのですが、これはもうひたすら凄まじい轟音。
それ以外に表現のしようがありません。
空気も汚いし、やるもんじゃあないですね。
さて、阪和自動車道の紀ノ川SAに立ち寄り、あの長~い長峰トンネルに備え、幌を閉めます。
幌をするとちょっとうるさいセダン並みになり、オープンとはエライ違い。
オープンでの高速もオツなものですが、折角のBoseサウンドシステムがロクに聞こえませんので、幌を閉めておくことにしました。
6、山坂道でのハンドリングや一体感
いつものように有田ICで高速を降り、国道424号を一路南下します。
今回は、いつもの山坂道のメインである県道198号までは行きませんので傾斜もコーナーも緩いですが、普通の試乗では味わえないルートとなります。
腕が未熟なので全くたいしたことが無いペースですが、コーナーではインに吸い込まれるようにスパッとノーズが入り、まるでミズズマシのよう。
遠い記憶にあるRX-8よりもずっとずっとシャープで、人馬一体感は素晴らしいの一言。
ボンネットを開けると小さなエンジンがフロントミッドシップに鎮座し、如何にも慣性モーメントが小さそうですね。
1500ccのNAなのでべた踏みしてもたいしたことないですが、3,000~5,000rpmをキープし、前後バランスに優れたナチュラルなステアリングを繰ってコーナーを責めると、こんなに楽しいことはありません。
まさに、大きなおもちゃ、若さが甦るアドレナリン噴出装置です。
7、Boseサウンドシステム
運転席のヘッドレストにスピーカーが組み込まれているのですが、明確にその存在を感じることはありませんでした。
ただ、Boseサウンドシステムは高速道路以外ではオープンでも大変クリアーな音質で、ちょうどダッシュボード中央手前に音場がある感じです。
快晴のもと、最近お気に入りの櫻子ちゃんをかけながら、ゆったりと田舎道を流すのは、これもまたオープンカーの醍醐味ですね。
8、気になったこと
クラッチが少し右寄りな事に違和感を感じました。
アクセルとフットレストが左右対称に位置する感じで、クラッチを踏む時に、しょっちゅうフットレストに左足が引っ掛かりました。
もしかして、ATが過半数を占める米国向けに設計したのかと思い、2015年の主な販売実績を調べたところ、特に米国だけが多いことはないですね。
米国 8,591台
日本 8,547台
英国 3,097台
ドイツ 2,278台
スペース的にこれで精一杯なのだと思いますが、クラッチを踏む度に、体を少し捻る感じになるのに違和感を感じます。
また、数時間乗っていると、背もたれが狭いのも気になりました。
左右から強く挟まれて窮屈な感じで、背中や肩が凝ってしまいました。
ただ、コーナーを攻める時にはこれが丁度良い具合なので、設計の基準はこれなんでしょう。
9、結論
絶え間ない振動で身体が揺さぶられ、まるでスポーツしているような感じ。
スポーツカーという呼び名の由来は、これなのではないかと思いました。
強い刺激を受け続け、体が痺れているような、震えているような感覚がずっと続き、疲れているはずなのにその夜はなかなか寝付けませんでした。
試乗が終わり、愛車C5で家に向かったのですが、そのあまりにも安楽な、全くと言ってよいほどショックが無い乗り心地に驚愕しました。
同じようにタイヤが4本あるクルマとは、とても思えないと。
まさに、スポーツをした後、温泉に浸かっているような夢心地で、思わず眠くなったほどです。
いやあ、本当にクルマって、面白いですねえ。。。