11月3日発売の映画『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』のBlu-rayソフトです。Amazonで予約していたものが発売日前日の一昨日(11/2)自宅に届きました。
この『大仏廻国 ~』という映画、先月当ブログで取り上げた映画『ネズラ1964』を製作した株式会社スリーワイが製作しており、監督も『ネズラ~』と同じく横川寛人氏が手掛けています。
さて、『大仏廻国(だいぶつかいこく)』とは一体どんな映画なのか…?という事になりますが、この『大仏廻国』という映画、元々原作となる映画があるのです。
原作となる映画『大佛廻國・中京篇』は、昭和9年(1934年)に製作、公開された作品で、愛知県東海市(当時の上野村)の聚楽園大仏が開眼して名古屋市内を巡り歩くという、当時としては…というより現代においてもなかなかソソられる奇想天外な物語だったようです。しかしながら作品のフィルムは戦災等で既に消失してしまい現存しておらず、当時のスチール写真や宣伝記事と思われる一部が残されているのみでその作品自体を観ることはできません。
日本の特撮と言いますと昭和29年(1954年)の『ゴジラ』に始まる着ぐるみ(スーツ)とミニチュアセットによる撮影技法が代表的ですが、この『~中京篇』では役者が大仏に扮してミニチュアセットの名古屋市内を巡る…という撮影手法が取られており、まさに『ゴジラ』以降の日本特撮の先駆けとなっている作品と言えるのです。こうした作品が第二次大戦以前の昭和9年という時代に既に作られていたという事自体がもう驚きですよね。
そんな『~中京篇』を監督したのが枝正義郎(えだまさよしろう)という人物で、この人物は日本映画黎明期に活躍した映画技術者(監督、カメラマン)です。そしてこの枝正監督こそが、戦中、戦後に『新しき土(サムライの娘)』、『ハワイマレー沖海戦』や『ゴジラ』といった多くの特撮作品を残し【特撮の神様】と呼ばれる円谷英二監督を映画業界に誘った張本人でもあるのです。こういった歴史を見ますと、円谷監督に撮影技術のイロハを教えた枝正監督が円谷監督よりも以前に『~中京篇』の様な空想特撮作品を先駆け的に手掛けていたというのは、今日の日本特撮の素地というものが実は戦後の『ゴジラ』を始めとする怪獣映画や空想科学映画ではなく、日本人により馴染みが深い【大仏】が動くという奇想天外な物語として戦前の時代に生まれていたというのは何とも興味深く、当時の枝正監督を始めとする映画人たちの映画に対する熱意の凄さを感じます。
今回横川監督が手掛けた『大仏廻国~』は、既に今は観ることのできない作品を制作費300万円、うち約半分の148万円をクラウドファンディングによって集めて製作した自主製作映画とも言える作品において、再び世の中に『大仏廻国』という作品がかつて戦前の日本で製作されたという事を伝えよう…という想いで作られたものだと考えています。同じくクラウドファンディングを活用して低予算で作られた『ネズラ~』同様、元となっている作品そのものを現代風にリメイクするというものではなく、【実はこういった作品があった】或いは【こういった作品が公開される筈だった】という事を観る側に伝えていこう…という視点で作られた映画ではないかと思いました。
まぁ…『ネズラ~』にしても『大仏廻国~』にしても、特撮作品に出演していた(している)大物俳優陣(宝田明氏、螢雪次朗氏、佐野史郎氏など…)が何人も出演しているのですが、元々限られた少ない予算で製作されている作品ならば、俳優陣のキャスティングに拘らず現代版とも言える自分たちなりの『大群獣ネズラ』や『大佛廻國・中京篇』を新たに作ってみて欲しいなぁ…という気持ちが『ネズラ1964』と『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』の2作品を観て感じましたね。
『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』Blu-rayパッケージ
『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』より
東京の街を巡り歩く大仏様。今作の大仏様は茨城県より来られたのでおそらく【牛久阿弥陀大佛】ではないでしょうかね。
『大佛廻國・中京篇』当時の宣伝記事
いや…こんなの絶対観たいでしょ‼
Posted at 2023/11/04 11:53:16 | |
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