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2023年04月21日 イイね!

M96エンジンの真実

M96エンジンの真実主に騒音規制と排ガス規制の問題から、長かった空冷ブロックエンジン(M64)の歴史にポルシェが終止符を打ったのは1996年のことです。その後継エンジンとして、1997年にType 996に搭載された水冷水平対向エンジンは初期タイプである前期型と、2002年以降に投入された後期型が存在します。今回はその水冷水平対向エンジンの違いや特徴についてご紹介していきたいと思います♪

上述の通り、1997年にポルシェは911で初の水冷水平対向エンジンを搭載するType 996を世に送り出します。最終的に3800㏄まで排気量が上がっていたType 993の空冷ブロックと比べ400㏄も排気量が少ない「ダウンサイジング」エンジンでした。このエンジンは多くのパーツをボクスターと共有していたこともあり、当時は「コストダウンされたエンジン」として見る向きも多かったです。しかし、実際には当時のポルシェの「知の結晶」であることが、エンジンの中身をつぶさに見て行くとよく分かります。登場から5年後、2002年にマイナーチェンジが行われるまでの6年間、前期型Type 996は生産されました。この時代のポルシェのエンジンを「M96-01/02型」といいます。01型はRR、02型は4WDを意味し、駆動方法の違いによってエンジンの呼称を変えるのはポルシェの伝統であり、これ以降も継続されています。

前期型のエンジンの詳細は、以下の通りです:-

総排気量:3387cc
最高出力:300ps/6800rpm
最大トルク:35.7kg -m/4600rpm
ボア×ストローク:96mm×78mm
圧縮比:11.3


M96-01/02型での注目ポイントは、この年代のポルシェではすでに採用されていたバリオカム(特許はロータスが所有しており、1991年式の968での採用が最初)がやっと911に組み込まれたことです。バリオカムとは文字通り可変バルブタイミング機構のことで、低回転域と高回転域でバルブのリフト量を変えるという、今となっては決して珍しいメカニズムではありません。当初M96-01/02型は、水平対向ゆえの独持なヘッドがバリオカム機構の採用を遅らせていました。後述する一体成型のシリンダーヘッドとなりようやく採用に踏み切ったものの、やはり水平対向ゆえの独特なカムシャフト周りの機構が要求されたため、そこには創意工夫の跡が感じられます。ちなみに、Type 993に搭載されていたM64-05型で組み込まれていたバリオラムがM96-01/02型に採用されたのは、初期型の後半からです。

そして、後期型のエンジンの詳細は以下の通りです:-

総排気量:3596cc
最高出力:320ps/6800rpm
最大トルク:37.6kg -m/4250rpm
ボア×ストローク:96mm×82.8mm
圧縮比:11.3


ボアは変わらず、排気量アップはストロークの延長でなされています。また注目すべき点は、バリオカムバリオカムプラスに進化しているということです。バルブタイミングが連続可変であるのは同様ですが、カム機構の大幅な変更により、低速/高速の2種類のカムプロフィールをもつカムシャフトが組み込まれ、バルブリフト量が低速側:3.0mm、高速側:10mmとなりました。実際に乗っていると5000回転付近で明確にフィーリングが変わります。また、M96型のもう一つの注目ポイントは、左右バンクの部品共有化にあります。同じシリンダーヘッドが左右で使われているのです。さらに前期型初期タイプでは、その前後に配置されざるを得なくなったカムシャフトに組み込まれたバリオカムを成立させるための機構が非常に複雑になっています。同じM96エンジンでも前期型と後期型ではフィーリングも、整備性も、まったく異なります(前期型エンジンはエンジニア泣かせで有名です)。

また、一般的なDOHCのようにカムチェーンがIN/EX側の両方のスプロケットに噛み合っていません。このため、前期型初期タイプは、バリオカムを中心とした動弁機構にトラブルが発生する可能性が高いといわれています。Type 996 Carreraの前期型は新車当時1000万円近かった事を考えると~300万円という大変リーズナブルな中古価格相場ですが、特異なメカニズム故にその機能を維持していくのにはそれなりのコストがかかることを覚悟しておく必要があります。また、Type 996Type 997前期型にごく少量みられた悪名高きインターミディエイトシャフトを支持しているボルトが破損し修理費用が異常に高くつくトラブル(通称インタミ問題)は、すでに対策部品に交換、またはエンジンを乗せ換えている場合が多いため、心配する必要はないと考えられます(ポルシェジャパンでもリコール対象となっています)。

Type 996は昨今のモデルと比べると相対的に車重が軽いため、個人的に996系は歴代911の中でも最もfun to driveだと思っています(なかなか同意は得られないかもしれませんが)。水冷化されてから、鈍重になったという意見も散見しますがこれは勘違い。水冷化のためのラジエーターやウォーターポンプ等を搭載しているにも関わらず、車両重量はType993 Carreraの1370kgに対して、Type 996前期型の車両重量は1320kgと50kgも軽くなっています(注:乾燥重量なので、実際に水や油が入るとその差は縮まりますが)。ボディワークにテコ入れが入った後期型でも1345kgです。歴代911の中では「圧倒的に不人気」という負のレッテルを貼られてしまっているType 996ですが、発売から20年以上経った今、敢えて乗ってみると現行の911には無いヴィヴィッドさ、そして現代でも十分に通用する動力性能を有しています。

今更Type 996の購入を検討するような変わった方もなかなかいらっしゃらないかもしれませんが、様々な要素を考慮すると、個人的にカレラ系なら2002年以降のモデルがベストだと思います。上述の通り後期型は一般的な可変バルブ機構を持っているため、メカトラブルに悩まされることが少ないためです。参考までに、価格が高騰しつつあるGT3系はご存知の通り空冷ブロック(通称GT1クランクケースもしくは開発者の名を取って"メッツガー"エンジン)を踏襲していますが、エンジンのフィーリングはM96型とはずいぶん異なります。もっと荒々しく、そして高回転まで回しきらないと「旨味を感じにくい」エンジンです。トップエンドのパワー感は素晴らしいですが、年式を考えると整備性(縦割りクランク特有のオイル漏れ)やコストの面で維持するのはなかなか大変だと思います。また個人的には粒の揃った如何にも高性能なエンジンらしい上質感という点ではM96型の方が上だと思います。

以前、それでも911=NAに拘るのか?という内容でType 992のターボエンジンの素晴らしさについて述べさせていただきましたが、一方でネオクラシックの域に入りつつあるType 996~997(前期型)のM96エンジンは当時の技術の結晶であるとともに、まるで生き物のようなヴィヴィッドな感覚を纏ったポルシェ謹製の素晴らしいエンジンです。Type 997後期型からインターミディエイトシャフトが廃され、エンジンも古典的なポート噴射から筒内噴射に切り替えられましたが、残念ながらサウンドもフィーリングもかなりモッサリした物になってしまいました。動力性能的にも、整備性の面でも格段に向上した一方、フィーリングも含め全方位的に良くなったと手放しに喜べるモノではなかった、と個人的には思っています。故に、M96型を搭載するType 996~997は時と共にその輝きを増しているように思えてなりません。

参考文献:中西一雄 水冷ポルシェ・パーフェクトブック 2018年2月5日
Posted at 2023/04/21 14:27:58 | コメント(2) | ポルシェ | クルマ
2023年04月19日 イイね!

過小評価の996世代の雄

過小評価の996世代の雄

まずは何と言っても見た目!丸目が人気の911シリーズにおいて唯一無二の異形フロントヘッドライトと、空冷からの伝統を引き継いだリアガーニッシュ。ローダウンされたサスと、ワイドボディで低く構えたシルエットはさながら戦闘機です。踏めば踏むほどパワー・トルクが沸き上がる古典的なフラット6NAユニットもまた絶品。特にHPE搭載車は5000rpmから上の伸びが違って昔のクルマで言う所の「カムに乗る」ような感覚が得られます。粒の揃った回転フィールもGood!!製造から20年近く経った今でも一線級の動力性能とドライバビリティを感じられるのはさすがです。また、カレラ4Sというグレード、現在は旦那仕様というイメージですが、当時はカレラ系でもっともスポーティーなグレードでした(現行モデルで言うとGTSのような位置付け)。997からは強制的にPASM付となりましたが、996カレラ4Sにはパッシブダンパーのスポーツシャシーとなるため、よりダイレクトなフィーリングです。あ、あとPCCBはやっぱり宇宙一です♪
Posted at 2023/04/19 14:17:33 | コメント(1) | クルマレビュー
2023年04月12日 イイね!

ポルシェ クラシックテクニカルサーティフケート

ポルシェ クラシックテクニカルサーティフケート996C4S納車から1年が経過しました。1年点検も兼ねて、先日クラシックパートナー認定されているポルシェセンターで定期点検および、予てから気になっていたクラシックテクニカルサーティフィケートの申請をして来ました。この制度は、生産終了から10年以上が経過したポルシェの車両に対し、ポルシェAG本国が仕様を記載した認定書を発行する、というモノ。認定工場のみの受付、費用は55000円です。

フェラーリ・クラシケ認証(純正であることの証明)とはちょっと意味合いが異なりますが、オーダー時の仕様などの詳細が分かりますので、個人的に気になっていました。実は964の時も申請しようと思っていたのですが、タイミングが合いませんでした。サーティフィケートの発行に6か月ほどかかるようですが、楽しみに待ちたいと思います。私が一番知りたいのは、私の996C4Sがスポーツシャシー(-10mmダウン)なのか、スポーツシャシー+(-20mmダウン)なのか、という点。この辺は車台番号だけでは分からないため、サーティフィケートにどのように記載されるのか注目です。その他のOPについては大体分かるのですが、あとはショートシフターが純正か社外品かも気になるところです^^。



さて996C4Sですが、この1年間でオドメーターは900km増えて、現在約32000kmです。週に1、2回程度しか乗りませんし、長距離もほとんど乗っていないのでこんなモンです。距離が伸びない一番の理由は車高の低さ。スポーツシャシーは思いのほかフロントリップの位置が低く、段差のあるような場所や、勾配のある坂道ではとても気を使います。体感的には996GT3RSの時と同じくらい低いように感じます。そんなこともあり、今回のサーティフィケート申請で詳細が分かったらロベルタカップの導入を検討したいと思っています(対象車となるかどうかが判明するので)。ロベルタカップは実績もあり、コスパも比較的良いので、いずれ取り付け可能なショップを探そうと思っています♪
Posted at 2023/04/12 08:33:02 | コメント(6) | 996C4S | クルマ
2023年04月04日 イイね!

もう一つのRR ~ルノー・トゥインゴ試乗記~

もう一つのRR ~ルノー・トゥインゴ試乗記~デビュー当初から気になっていたクルマに試乗して来ました♪そう、ルノー・トゥインゴです。試乗した経緯ですが、もともと911以外で現存する最後のRR車ということで2016年のデビューから常に気にはなっていました。で、今回もし愉しいクルマであれば、妻と私の兼用アシ車として購入候補に上がったというワケです。買うなら中古車一択、目ぼしい個体も絞りこめたところで、いざ試乗へ!



まず、トゥイングの車種構成ですが、現在はインテンスというグレード一択となっています。ただし、キャンバストップも選べますし、一応トランスミッションはDCT(ルノー風に言うとEDC)とMT(ハードトップのみ)が選択出来ます。今回は妻も乗る前提だったので、ハードトップのEDCに試乗して来ました。ちなみにトゥインゴの場合、ATはターボ、MTはNAとなるため、最高出力が全然違います(前車は92㎰、後者は65㎰)。いくら軽量コンパクトなクルマとMTという組み合わせでも65㎰ではかなりパワー不足と感じることは想像に難しくありません。

トゥインゴはかつて3グレードの展開があり、さらには限定モデルも何度か作られて来ました。ディーラーの担当者曰く、現在のインテンスは過去の限定車で見られたような装備が標準化されたとのこと。ちなみにトゥインゴは現行モデルで終了することが決定しており、次世代は「5(サンク)」というEVに引き継がれるそうです。ルノーサンクと言えば、かつて「ルノー5ターボ」がラリーシーンで活躍したこともある痛快ホットハッチで、今となっては完全にクラシックカーの域ですが、根強い人気があります。さて余談はこのくらいにして、試乗インプレに移りたいと思います。

まず、車体の大きさですが、余裕で5ナンバーサイズで非常にコンパクトです。なのですが、実車は車高がそこそこあるせいか、不思議とそこまでコンパクトに見えません。似たようなサイズ感ですが、チンクエチェントの方がコンパクトに見えます。リアハッチはガラス仕様で高級感があり、スマートフォーフォーがベースですが、こちらの方がラテン風味のオシャレ感があります。リアのトランクスペースはミニマル、何せリアのフロア下にエンジンが載っているので底が浅いんですね。ただ、日常的な買い物+αくらいなら何とかこなせそう(夏場は生ものは積めなさそうです)。ちなみにフロントにもトランクがあるかと思いきや、こちらは冷却系の機械がぎっしり詰まっていてまったく荷物が積めません。



内装は合皮のシートにパイピングが施されており、これまたオシャレ。樹脂パーツはやや安っぽいものの、シボの作り方やカラーリングの配置が絶妙でチープ感を感じさせません(こういう所は国産車は大いに見倣ってほしいところです)。ナビは無く、スマホを繋ぐタイプの簡素なインフォテインメントシステムと、バックカメラが標準装備となります。この辺はライバルのチンクエチェントと大差ありません。独特なのがリアのウィンドー。ラッチを外して手動で開けるのですが、少ししか開かないw。後部座席のスペースは大人が乗るには少々窮屈なので、そもそも人が4人乗る前提ではないのかもしれません。ドラポジを合わせて、リアシートに収まると、ほぼレッグルームは皆無の状態。まあそれでも911よりは広いですかね。





イグニッションを回してエンジンをかける(この所作自体懐かしい感じがします)と、0.9L3気筒エンジンが目を覚まします。チンクエチェントのツインエアと比べるとプルプル感もあまりなく、意外にスムーズなエンジンで、EDCとの相性も悪くありません。深くアクセルを踏むと小気味良くシフトアップし、流れに乗る事が出来ます。速くは無いですが、遅くもない。まあ普通ですかね。で、期待していたRR感ですが、直線だと正直あまり良く分かりません。しかし、重心が低いからか、フロアの剛性感が物凄く高いと感じるため、このクラスのライバルと比べるとしっかり感が凄いです。さすがスマートフォーフォーベースと言ったところでしょうか。



RRであることを実感したのは坂道ですね。上りではリアの荷重が増し、トラクションがアップした感覚が分かります。と同時に、フロントの荷重が軽くなるためいわゆるドアンダーな特性。大人2人乗車でコレですから、荷室に荷物を積んで1人で乗っていたらどうなっちゃうんでしょう??この辺は結構クセ強めです。一方、下り坂ではニュートラルステアな感じですが、想像していたほどのキビキビ感がありません。良くも悪くもあまり機敏ではないのですね。「スポーツカー乗りを前提」とした911と違って、クセの強いRRを、誰でも運転出来るように敢えてこういうマイルドなセッティングにしているものと思われます。

ボディ剛性、アクセルレスポンス、ステアリング応答性はこんな感じでまずまずでしたが、ブレーキははっきりとダメでした。踏んでも全然制動力が立ち上がらず、結構おっとっととなりました(;^_^A。ココまで露骨にブレーキが効かないクルマはちょっと久々かもしれません。ディーラーの担当に聞いたらブレーキパッドだけ納車時から社外品を入れる方もいらっしゃるとか。これは十分理解出来ます。ボディ剛性感が下手に高いせいで、ブレーキのふかふか感との乖離に対して大いに違和感を覚えるんですね。変な話ボディが緩ければ、ブレーキが効かなくてもそれほど違和感を覚えないかもしれません(フィアット・パンダがそうでした)。

総評。まあ悪いクルマでは無いのですが、RRというレイアウトに期待するような動力性はなく、運転していて愉しいクルマではありませんでした。もう少し小気味よく走って、パンチのある乗り味を期待していたのですが、RRということで期待値が高過ぎたのかもしれません。このクルマが200万円くらいで手に入るのであればライフスタイルによってはアリかもしれませんが、新車だと乗り出し300万円超えるんですよ・・そこまで出すなら他にも選択肢はあるだろう、と思ってしまいます。で、帰りにメガーヌR.S.に乗り換えたら、「うわ!なんじゃこのピュアスポーツカー!最高じゃん!!」ってなりました(笑)。・・ま、乗り換えることは無さそうです^^。
Posted at 2023/04/07 14:15:56 | コメント(4) | 試乗記 | クルマ

プロフィール

「@Tcar01 さん、GPFは再来年施行される欧州騒音規制フェーズ3と排ガス規制に適応するためと思われます。また992.2から、素カレラのタービン&インタークーラーは992.1GTSのモノへと変更になってますが、これも排ガス規制対策ですね。規制だらけで、大変な世の中ですね😓」
何シテル?   06/02 21:00
趣味車→ 992カレラT(2023年式 左MT) ファミリーカー→ G63AMG(2022年式 W463A) アシ車→ アバルト695 esse esse(...
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