
先日紹介した「人情刑事 呉村安太郎」の第二話が、8月18日深夜に放送されます。その予告動画が公開されました。サブタイトルは「復讐のニセ老婆」です。
闇バイトにかかわっていた大学生が殺され、同時に夜中に猛スピードで走り去る老婆が目撃、その関係性を説いていくストーリーになりそうです。
第一話のフードデリバリー「ウマイーツ」の紙カタログ表紙には、「1993年」と書かれていました。そのためこの作品の舞台は1993年になりますが、1993年には「闇バイト」という言葉はありません。もちろん昔から怪しい仕事はあったようで、1973年に放送された「太陽にほえろ!」の58話「夜明けの青春」では、拳銃の運び屋のアルバイトに手を染めてしまい挫折する若者(演:峰竜太)が描かれています。
そんなことから、1993年について振り返ってみたい気分になりました。2年前にも振り返ったような記憶があったのですが、そちらは主に冷夏を振り返るために、日付別気象を記したのみでした。そのため今回は、気象と冷夏、コメ作況を除くことを書いていきます。
政治
・佐川急便事件により、宮沢内閣に対して内閣不信任案が提出され可決、宮沢内閣総辞職。
後任は非自民系新党による細川護熙連立内閣。55年体制崩壊。
・金丸信元自民党副総裁が、脱税容疑により逮捕。
・田中角栄が死去。
・環境基本法が成立。
経済
・2月以降円高が急速に進行。8月半ばには一時1ドル100円40銭を記録。
・公定歩合が初の1%超となる1.57%に。
・JR東日本株が上場。38万円の売り出し価格に対して60万円の初値。
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前年の新卒者採用抑制から、本年はさらに内定取り消しが相次いで問題に。
・村本建設、当時戦後最大の負債額5900億円を抱えて倒産。
事件・事故
・オウム真理教、上九一色村にサリン製造工場を建設
・山形県内の中学校で、マットにくるんで殺害する「山形マット死事件」が発生。いじめ問題が再燃。
・北海道南西沖地震が発生。奥尻島で津波被害発生。
エンターテインメント
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ZARD、WANDS、T-BOLAN、大黒摩季などの「B-ing」系統のアーティストが大幅に躍進。年初から夏にかけてヒットチャート上位を独占。
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trfがデビュー。歌いながら踊る姿が特徴。歌とダンスの融合はじまる。
・ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」放送。緒形拳演じる中年男性を、裕木奈江演じる女性が誘惑。裕木奈江バッシング現象が起こる。国武万理の同名の曲もヒット。
・「誰にも言えない」放送。佐野史郎と賀来千香子主演。前年放送の「ずっとあなたが好きだった」の次作的位置づけの作品ながら、真偽は不明。
・「徹底的に愛は」放送。吉田栄作と仙道敦子主演。NAO名義の二人のデュエット曲「今を抱きしめて」もヒット。
・「高校教師(1993年版)」放送。高校教師と生徒の禁断の愛を描く。
・「あすなろ白書」放送。柴門ふみ原作の若者群像もの。LGBT的要素もあり。
・「ひとつ屋根の下」放送。江口洋介演じる長兄が家族を支える心温まるストーリー。
・「白鳥麗子でございます(松雪泰子編)」年初と秋の2回放送。ドラマを中高生向けにした「ボクたちのドラマシリーズ」内の作品。主題歌の「負けないで」も「きっと忘れない」もヒット。
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「じゃじゃ馬ならし」放送。観月ありさ演じる女子高生が、うだつの上がらない中井貴一演じる父を支える。
・「悪魔のKISS」放送。奥山佳恵、深津理恵、常盤貴子主演。主人公たちが新興宗教や借金などに追われ、それぞれの敵と戦うドラマ。
・「いちご白書」放送。小田茜、辺見えみり、安室奈美恵主演。女子中学生が背伸びをして騒動に巻き込まれる。大黒摩季が歌う「チョット」もヒット。
・「金八先生(シリーズ4)」放送。スケールが小さくなった1988年版に対して、シリアスなテーマや演出。阪神大震災とかつての15歳の母シリーズを関連付けた話もあり。
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「はだかの刑事」放送。金曜日午後8時放送、東宝制作の刑事もの。この作品終了に伴い、1972年以来続いていた同時間帯の刑事ものが終了。
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「磯野家の謎」出版。磯野家の構造などをマニアックに解明したムック本。一般の人にも多く買われ、「オタク」緩和の始まりともなる。
・加勢大周が事務所を独立、元事務所は「新加勢大周」をデビューさせるなどの騒動が起こる。
くらし
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大学新卒者就職市場はさらに冷え込み、文系女子だけでなく文系男子も悪化。
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女子高校生を中心に「ポケベル」がブームに。
・女子中高生が着用済み衣類を売却する「ブルセラショップ」が社会問題化。
・ナタデココとパンナコッタがブーム。
・透明なコーラの「タブクリア」発売。
・屋内スキー場の「ザウス」、10年間限定営業開始。
・Jリーグ開幕。「レッドカード」「イエローカード」などの用語も流行語に。
・アサヒ飲料とシャンソン化粧品が提携し、「十六茶」を発売。
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女子高校生のコギャル、男性の「ロン毛(長髪)に茶髪(染め、ないしはブリーチ)」が出始める。日焼けサロンも流行を始める。
・埼玉県ふじみ野市に国内初のアウトレットモール、「アウトレットモール リズム」が開店。
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消費者の低価格志向を受けて、スーパーなどのオリジナルブランドとなる「PB(プライベートブランド)」商品が出始める。
・安売り店とされていた紳士服店や食べ放題レストラン、ディスカウントショップなど、特定分野で安さを発揮する「カテゴリーキラー」現象が起こる。
・マグカップで食べるカップヌードルの「まぐヌードル」、生タイプカップめんの「ラ王」、明星「一平ちゃん」シリーズなどが登場。
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武田真治、萩原聖人、いしだ壱成など、従来の男らしさにとらわれず、髪形を整えたり化粧をしたりする「フェミ男くん」がブームに。男性も化粧をする時代へ。
・ジュリアナ東京が人気。「お立ち台」や「ジュリ扇」、「派手で水着のように小さなボディコン」はこの頃ならではのもので、主に自分のお金で遊ぶ「おやじギャル」が中心。
技術
・JR東日本、「寿命半分重量半分」を目標にした設計の209系を運用開始。
・東海道新幹線の「のぞみ」が、山陽新幹線まで運転区間延長。
・レインボーブリッジ、長野自動車道が開通。
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インターネットイニシアチブジャパンが、法人向けプロバイダーサービスを開始。日本国内におけるインターネット商用利用の始まり。
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Windows3.1日本語版発売。疑似ウィンドウシステムを採用。パソコンの普及が加速。
・マッキントッシュのカラー液晶仕様のパワーブックが発売。
・NEC、PC-9801NS/Rを発売。インテルの新CPUを搭載。さらにNX/CではCPUのクロックを向上。
・富士通、プラズマディスプレイを発売。
・任天堂、初代ファミリーコンピューターの廉価版、ニューファミコンを発売。
・NECはPCエンジンDUOの廉価版、DUO-Rを発売。
・セガはメガドライブの廉価版、メガドライブ2を発売。
・NTTドコモ、デジタル方式のmovaのサービスを開始。
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シャープ、携帯情報ツールのザウルスを発売。
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カシオ、子供向け電子手帳の「スーパー電子手帳jr」を発売。赤外線を利用し、数mの通信も可能。井上昌己が歌うCMソング「恋が素敵な理由」もスマッシュヒット。
・アーケードゲームの「リッジレーサー」が稼働開始。当時としてはリアルな運転感覚が話題に。
いかがでしょうか?前の時代から次の時代へ移行する片鱗が見え隠れしています。
バブル景気の雰囲気は前年初夏から急速に姿を消し、景気の良い話は全く聞こえなくなりました。
具体的には、趣味が海外旅行やお金がかかるスポーツから、ドラマ鑑賞や邦楽(カラオケを含む)に移行し、若年者の流行も、OLや女子大学生中心から、お金がかからず、そして将来をあきらめて今を遊ぶ中高生中心になってきています。また、1980年代末に否定されていたアニメやパソコンと言ったマニアックなアイテムが、ビジネスや生活に入り込んでいる様子もあらわれています。
この頃、学校の授業でパソコンを使用するのは、おそらく電子技術系や情報技術系の人だけだったでしょう。文科系学生は、そもそも電子的なものや機械的なものを毛嫌いする人も多く、「コンピューターよりも人間性(を養うという名目のサークル・コンパ)をしていたようなので、就職でどんどん不利になっていったと考えられます。まあ、景気はさらに悪化し、製造業も経営を維持することがやっととなり、理系学生でも就職は不利になっていくのですがね。
結局、どんな風に時代が変化しても、それに対応できる基礎と柔軟な価値観を持った人のみが生き延びるのではないでしょうか?