2010年02月09日
トヨタハイブリッド自動車のブレーキについて
評論家の皆さんもいろいろと考察していますが、わたしも一市民として分析してみました。なお、「こんなこと書きやがって!コロナの部品を製造廃止にしてやる!」という圧力以外、わたしはメーカーとのかかわりがないため、もう少し自由にかけます。
トヨタのハイブリッド自動車は、「回生(発電)ブレーキ協調ECBⅡ」というブレーキを採用しています。モーターに動力を接続し、電気負荷(抵抗など)をモーターの端子に接続すると、モーターは回らない方向に力を発揮します。しなわち、この力がブレーキ力となります。
ところが、これとは別に運転士がブレーキペダルを踏み、マスターシリンダーで発生した油圧をホイールシリンダーにかけてしまうと「ブレーキが効き過ぎ」てしまいます。そこで自然な制動感を出すために回生ブレーキを弱めてしまうと、今度はハイブリッド自動車としての特徴である「車の運動エネルギーをモーターで電気エネルギーに変換し、電池に回収する」という機能が失われてしまいます。
そこでブレーキペダルとホイールシリンダーの接続を断ち(実際には、フロントの主配管はつながっています。)、完全に電子制御された油圧のみがかかるようにしています。その油圧は、Y32セドリックなどで登場した油圧サーボ方式です。あらかじめ専用の電動ポンプでブレーキ油を高圧にして、アキュムレータータンクに蓄えておき、摩擦ブレーキを使うときはソレノイドバルブを開いてホイールシリンダーに油圧をかけます。もちろん、回生ブレーキで間に合う減速であれば、油圧ブレーキを使いません。
乾燥路面での制動は、主にモーターによる回生ブレーキが強めに効き、摩擦ブレーキは待機程度に効いています。ところが、この回生ブレーキは効きを細かく制御することが出来ないので、滑りやすい路面では「回生ブレーキを使ったABS」というものが出来ないため、車輪がロックすると回生ブレーキをやめ、すぐさま摩擦ブレーキに移行します。この間、ブレーキ油圧が実際にブレーキに到達するまでほんの少しの遅れがあります。この遅れを運転士はブレーキが効かないと感じているのと、摩擦ブレーキがかかった瞬間にパッドがディスクに食いついてブレーキが良く効き過ぎ、こんどはまたABSが作動して油圧を逃がし、ロックが止まればまた油圧を強めることをしています。ここでまた運転士は作動遅れを感じます。
このこと自体はABSが採用され始めに散々議論されたことで、「滑りやすい路面では、ABSが効いて制動力が出ない。」ということが言われました。ところがその後、「ABS(を採用するこの車は)安全」というキャッチフレーズで新車を売ったため、いつの間にか忘れられてしまいました。今でもこのことは変わらず、わだちでブレーキが効きづらくなる車はいくらでもあります。(私の過去ブログを検索すると出てきます。)
先輩である鉄道でも、「遅れ込めブレーキ制御」というものがあり、モーターがない車両は摩擦ブレーキを遅らせて効かせ、モーター車での回生制動を強めに効かせることが出来ます。車との違いは、鉄道は障害物が迫ったところでブレーキをかける機会が少ないことにあります。某もうすぐ発売される電気自動車は、経済番組で取り上げられたときに「摩擦ブレーキをいかに作動させなくするか」ということにいそしみ、回生電力を増やそうとしていたため、同じ現象が起こることをはらんでいます。今頃、急いでプログラムを書き換えていることでしょう。
今回の件は、「ブレーキ踏み込みが遅い上にスイッチ的操作をするあわてものの早とちり」程度にしか考えていません。
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Posted at
2010/02/09 21:14:51
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