この日は大阪へ戻る日でした。前日に従兄弟が日産でセレナを契約したため、今回競合した別の販売店へ挨拶をしてから戻ることにしました。
本当はN BOXとCR-V両方に試乗したかったのですが、さすがにそうもいかず、新型エンジン搭載のN BOXにしました。
ホンダのトールワゴン軽自動車の歴史
そもそも、トールワゴンの軽自動車を発売したのは、ホンダが最初でした。とはいっても40年ほど前の話です。「ライフ ステップバン」がそれです。当時発売していた乗用軽自動車の「ライフ」に背が高いボンネットバンボデーを乗せ、乗用と商用を兼ねた車となっていました。
当時は個人商店が多く、仕事用と家族の移動用を兼ねた車が多く、乗用車とボデーを兼ねたライトバンやステーションワゴンがほとんどのセダンに設定されていました。それを軽乗用車で実現したのが、「ライフ ステップバン」でした。
ワゴンR(ミニカトッポ?)登場以前は「亜種軽自動車」として自動車雑誌に取り上げられていました。その後、三菱が同じコンセプトで「ミニカトッポ」を発売しました。主にブティックや花屋の需要を狙っていたようです。
そして、乗用専用として発売された「ワゴンR」が大ヒットしました。すぐに「ムーヴ」が追従しました。当時ホンダでは「トゥデイ、トゥデイアソシエ」といった乗用軽自動車しかありませんでした。そのトゥデイの型式「JA4」をそのままに、新世代の「ライフ」を発売しました。かなり焦っていた模様です。その二年後、新規格(現行規格)軽自動車が発売され、「JB1,2」が発売になりました。
しばらくして、スポーツ感覚を強めたモデルの「ライフ ダンク」シリーズが発売になりました。ターボモデルも設定されました。当時は「カスタムシリーズ」が急に販売を伸ばしていた時期でした。この「ライフダンク」は、他のカスタムシリーズと異なり、スポーツ感覚が前面に押し出されていました。ほんの少し「タイプR」っぽかった???また、トヨタの初代bBがカスタムベースとして大人気であった時期であり、bBを買うほどのお金がない人、あるいはやんちゃな女子の需要がこの「ライフダンク」に集まり、かなり高価格になったとも聞きます。
その「ライフダンク」の人気に気を良くしたのか、あるいはSMXの怨念を晴らすためか、bBにそっくりな「ザッツ」を発売しましたが、明らかにプアマンズbBであったからか、あるいは安っぽさが出ていたためか、不人気車になってしまいました。
その後、ライフはザッツにトールワゴンの座を譲り、JB5,6,7,8は乗用車風の車体に改めました。また、旧ダンクに相当するモデルを「DIVA」としましたが、主流はワゴンRやムーヴに流れ、徐々に影が薄くなっていきました。
そして次のモデルは再びトール車体に改め、「スマイル ライフ」と、上野樹里とフィンガーファイブの学園天国のカヴァー曲とともに、積極的に宣伝されました。一方、ザッツ後継はゼストとなり、こちらもスポーツ→スパークと、いわゆる「カスタムグレード」を展開していました。
ここへきて、ゼストとライフがほぼ同じところに位置してしまい、市場の食い合いとなってしまいました。しかも、「スマイルライフ」がいかにもな独身女性仕様となってしまい、かえって女性に嫌われる結果となってしまいました。同じ轍は、二代目スズキMRワゴン、スバルR1,2が踏んでいます。後期型に及んで、どこかゼスト風のスタイルに変更されました。
そして市場は、ダイハツタント、スズキパレットなどのさらにトールワゴン(?本来のワゴンRやムーヴ)にも及んだため、ホンダでもタント対抗車種を発売することになりました。これが「N BOX」です。
エンジン
新開発S07A DOHC4バルブエンジンを採用しています。一世代前のP07A SOHC i-DSIエンジンは、「SOHC2バルブ、ツインプラグとし、実用域の高トルクと効率よい燃焼を目指した」としていました。
その前のE07ZエンジンはSOHC4バルブでしたので、スペック上はダウンしていました。また、それより前にベンツがガソリンエンジンをSOHC3バルブにしていたので、流行を追った?とも思いました。ツインプラグによる位相差点火で、火炎に旋回流を与えて急速に燃焼させる、という考えはわからなくもありません。
しかし、現代のエンジンは4バルブのペントルーフ燃焼室とセンタープラグの考え方が基本となっていますので、少々こじつけのような感じもしました。メーカーの説明など、こんなもんなんですね。
そしてこのエンジン、自然吸気で58馬力を発揮します。試乗は自然吸気エンジンでしたが、大きなボデーでも出力は十分でした。ミライースやムーヴなどと比較すると、非常に元気が良いエンジンでした。街中でもストレスがなく走ることができます。特に低速からの出力が良く出ていて、回転を上げなくても余裕ある走行が可能です。
反面、少々ノイズが大きく、「キョー」といった音質の音が加速時に発生します。加速時にも音がマイルドであったムーヴとは異なり、ちょっとうるさい感じがしました。耳にキンキン響きます。たとえて言うなら、浜崎あゆみや倖田來未のような声質とでもいいましょうか。「うるさいなあ」と感じる音質です。
一方で振動は比較的少なめで、
スズキのエンジンと
ダイハツのエンジンの中間程度になっています。
このエンジンには、アイドルストップ機能が加わりました。始動はダイハツのものよりも早いように感じられました。
トランスミッション
ホンダ初の軽自動車用CVTです。確かゼストかライフの開発設計者が、「4速ATはベルトを挟む油圧が不要なので、フリクションロスが少なくて済む」と言っていたような気がします。トランスミッション単体ではそうかもしれませんが、エンジンの出力を上手に取り出すという点では、CVTに劣るのでしょう。エンジンとトランスミッションは「パワートレーン」として、一体で考えなければなりません。
ホンダ初の軽自動車用CVTとはいっても、乗用車には長くCVTを採用しています。変速スケジュールの設定ではすでに慣れているメーカーです。ダイハツのCVTと比べて、エンジンの回転数だけが先に上がってしまう印象が非常に少なく、ダイレクト感があるCVTです。加速の元気良さはスズキの副変速機付CVTにはかないませんが、結構元気にこの車を走らせます。しかも違和感の類がないため、乗っていて気持ち良さを感じます。
ステアリング
これは最近のホンダ車に共通しているのかもしれませんね。とにかくただ軽いだけで、路面の状態が全く伝わってきません。ステアリングの中央のすわりも悪く、安心して車に直進を任せることができません。路面の状態が伝わらないというのは、車の状態を視覚と揺れとでつかまなければなりません。これは非常に疲れます。
ブレーキ
先日のステップワゴン同様、比較的しっかりした踏みごたえが得られ、安心して踏むことができます。サーボの効き具合も適当で、踏力でのブレーキコントロールが可能です。この踏みごたえを知ってしまうと、とても
ダイハツ車には乗れません。
サスペンション
硬質な乗り心地です。微振動も良く抑えられていて、不快感はありません。が、若干ストロークは不足するようで、これもまたストロークが増すほどに固さを感じます。
ストロークを規制しないと、簡単に底付きを起こすのかもしれません。今回は後席には乗りませんでしたが、上下に揺すられるかもしれません。
ムーヴ程はよくなく、
モコとはほぼ同じ、
ミライースよりはうんと良いです。
ボデー
ボデーは非常にしっかりしており、ミシリともいいません。内装は「ピアノ調ブラック」が多用され、特にムーヴを意識しています。最近のホンダ車に共通する、若干視覚的に小うるさいデザインで、ちょっと落ち着きがありません。
視界は良好で、運転の際にストレスがありません。前方の視界は良いのですが、なんとなくワンボックスのバモスに乗っているかのような印象があります。バモスにアトレーにエブリィのようなデザインのように感じるため、
タントやパレットを検討する人がこの車も検討するかどうかが心配です。
まとめ
車は進化しますので、後から出る車の方が前の車よりも優れることが多いのですが、ホンダはこの種のボデーには初参入です。ムーヴとは若干市場は異なるのですが、練りという点で少々劣るかもしれません。先に書いたエンジン音の部分がそうです。この種の車で遠出する人は少ないでしょうが、耳に響く騒音というのは乗っていてつらいです。そういえばE07エンジンのアクティやバモスも同じような音を立てていたような気がしますが、あちらはリヤエンジン、こちらはフロントエンジンで、騒音がダイレクトに車内に入ってきます。
なかなか厳しい評価になってしまいましたが、特にカスタムグレードに感じる「派手な顔立ち」「騒がしいデザインのインパネ」「耳をつんざくエンジン音」が原因かもしれません。「ちょっとずつ他車に劣る点が、合算すると結構な減点になっている。」ような気がしてなりません。スズキやダイハツのような、軽自動車が中心のメーカーは軽自動車を渾身の力を込めて車を設計しますが、ホンダ、最近は違いますが三菱は、「ウエルカムカー」としての位置づけでもあります。そうそう、ダウンサイジングカーという点もありますがね。このため、上級車よりも少しずつ性能を落として設計することにつながってしまっているかもしれません。
しかし、車自体は結構良くできているのと内装はダイハツと並ぶかそれ以上の仕上がりですし、何よりブレーキの踏みごたえが良いです。「車は貨車」ではなく、「走らせるもの」なので、ブレーキの点だけで他社の車より良いと感じます。でもなあ、やはりエンジン音がなあ??
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試乗 | クルマ
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2012/01/14 23:29:39