2012年07月11日
「トッカン」第一話に、「突貫工事」なるも基本の良さを見つける
2012年度夏期ドラマは、遅れに遅れて視聴が進行中です。この日は、前の週に録画しておいた「トッカン」を見ました。
「トッカン」とは、「特別国税徴収官」の略で、税金滞納者のところに出向いて、差し押さえなどを行う人たちのことを言うのだそうです。同じような職業ものとしては、大昔の「マルサの女」などがありました。税に関わるキャラクターでしたら、宇宙戦艦ヤマト パート1の「ビーメラ星地下牢の死刑囚!」」が有名?どころですが、まあ、セリフだけの登場人物だわな。
「トッカン」と言えば、産業廃棄物に関わる方々には「特別管理産業廃棄物」の略語としても使われますが、よく考えれば略語の中には「産業廃棄物」の「さ」の字すら入らない、すごい略語です。
さて、このドラマの主人公は、井上真央演ずるヒラ徴収官と、文字通りトッカンの北村有起哉です。第一話は、最近の時流に習って「ご祝儀10分延長」となっていますが、その10分を導入部分に使っています。大金持ちながら脱税していた、佐藤仁美夫妻の家で差し押さえを行うところから始まります。
その場面には無駄にコミカルな描写があったり、プレゼンテーション資料でもあるまいに、登場人物や用語を説明してくれるシーンまであったりで、15分間程度、冗長なシーンが続きます。「ご主義延長」は、どの作品でも大抵無駄な時間延長ばかりです。
今回のゲストは、プラスチック加工工場を営む、泉谷しげるとリリイ夫婦です。この工場が滞納していた税金を徴収しようとする井上真央女ですが、自身が幼い頃、家が経営していた和菓子工場が差し押さえられた思い出があり、なかなか徴収できずにいます。
煽る北村有起哉男に対し、井上真央女は「差し押さえるのではなく、払ってもらう得ばそれが一番良い」と、足繁くその工場に通います。そして夫婦が心を開いた日、井上真央女は夫婦の夕食の場に同席し、夫婦と心を通い合わせるのでした。
そして、その工場が受注していた加工品の納品が迫ったある日、取引先から向上に電話がかかってきます。
「おたく、税務署に入られたんだって?やがてはうちにもはいられることになるだろうから、そんなところとは取引できない。」
と言われ、受注していた仕事を逃してしまいます。息詰まる夫婦。そして翌日、井上真央女のもとに、8万8千円を持って、一部納入をするのでした。違和感を感じる井上真央女。彼女は、銀行や国民健康保険課に、支払い状況を尋ねるのですが、銀行口座に入金された記録はないし、健康保険も滞納のまま。思えば、一部納入に来た時の泉谷しげる男の腕には、先代経営者からもらった腕時計がなかった。その時計は、ゲン担ぎのために、泉谷しげる男は片時も離したことがない、と言っていたものであった。
嫌な予感がし、工場へ走る井上真央女。土日等にはすべて鍵がかかっている、自殺か!?窓を割って中に入った井上真央女が目にしたのは、今まさに薬品で自殺を図ろうとしていた泉谷しげる、リリイ夫婦であった。寸前のところで阻止する井上真央女。
「なんで税務署は弱いものをいじめるんだ!」と叫ぶリリイに、井上真央女は、幼い頃自分の家も差し押さえにあったこと、今この仕事をしていることがたまらなく辛いことを語り、「命を粗末にしないで欲しい」と、生きることを願うのであった。
感想
うーん、青臭い!良い!青春職業者の王道のストーリー展開です。自分の職業の範囲を超え、掲示物なら犯人や加害者に感情移入してしまう若い刑事の話は、特に太陽にほえろ!でよく見ました。ジーパンやテキサスの頃に多い話だったかな?職業人としての任務と、人間としての感情に苛まれる主人公、良い脚本です。私がドラマ評価の基本にしている作品の一つ、「NEWジャングル 公平が泣いた」も、その設定になっています。
前半の軽々しさと、クライマックスのシーンのギャップがすごいです。これも良い!井上真央のエングも、特にクライマックスで素晴らしいです。クライマックスではなく、番組としての最後もちょっとコミカルにされているのも、重苦しい後味にならなくて良い感じです。
残念なのは、突貫工事で作られたのか、シーンのつながりがちょっと良くないこと、選曲のセンスも良くないことです。
例えば、取引先に取引停止にされたことを、井上真央女が訪問してきた時に盗み聞きしてしまい、自分がやったこと(仕事時間中に訪問すること)の問題の大きさに気づくシーンが必要ですね。また、青臭い井上真央女を、「昔は自分もこうだった」という感情を抱きながら、見てみぬふりをする北村有起哉男の描写も弱いです。
音楽では、ミスチルのテーマソングが二回も流れていること。工場へ急行する井上真央女の描写に、この曲はないでしょう。もっとサスペンス系の曲である方が良いと思います。
なんだかんだ言いましたが、結局「刑事ものをやりたいけど、2年前に刑事もののピークを迎えてしまったので、テレビ局の上層部に反対されないように別の職業にした。」感が丸見えです。しかしながらこの作品、コミカルな雰囲気を努めて抑えれば、きっと良い感じになると思います。
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Posted at
2012/07/11 01:10:59
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