
先週、「13日金曜日 マカロニ死す」を放送したサンテレビは、引き続きジーパン刑事編を放送します。ドラマ史初の殉職降板編に続き、ほとんど無名の松田優作氏を起用した登場編です。
この交代劇では、単なる若手主人公級登場人物の交代だけでなく、いくつかのマイナーチェンジが行われて、番組の雰囲気が少し変わっていきます。
1.新曲録音と魅せるアクション
太陽にほえろ!では、概ね1年ごとに劇中で使用される音楽の追加録音が行われています。今回は、以後定番になるアクション用の曲「青春のテーマ(後にジーパン刑事のテーマと改名)」が追加されます。
この曲により、物語の最後の見せ場を
「犯人が逃走」
「刑事が追走」
「刑事が犯人を追い詰めて格闘」
「犯人を逮捕してエンディング」
とすることが可能になりました。マカロニ刑事編でもアクションシーンはありましたが、この曲を使用したアクションでは、アクションそのものを見せる、となっていきました。
2.青春ものドラマとしての味わい
マカロニ刑事を演じていた萩原健一氏は、俳優としては本作がデビューでしたが、ミュージシャンとしては十分な経歴がありました。一方、松田優作氏はデビュー二作目の、ほとんど新人でした。しかも、劇中でも交番勤務から私服警官になりたて、という設定となりました。
そのジーパン刑事が、新人から徐々に成長していく過程を描く作品となっていきました。脚本でも、同じプロデューサーが担当していた青春学園ものを得意としていた、鎌田敏夫氏が本格的に投入されました。例えば、
「刑事が犯人に同情し、なかなか逮捕できない。」
「刑事と犯人が、捜査の過程で友達になってしまう」
などの、職業刑事としては青臭い描写の作品が増えていきます。その青臭さが、以後しばらくの「太陽にほえろ!らしさ」すなわち、「太陽風(たいようふう)」とか「太陽節(たいようぶし)」となり、黄金期の基礎となっていきます。
3.庶務係の女性の登場
今回から、ジーパン刑事に加えて、庶務係の女性の久美さん(演:青木英美)が登場します。
役者本人がファッションモデル的な活動をしていたこともあり、1970年代初めの、前衛的なファッションで登場します。しかも、年上の刑事にも友達言葉で話しかけるような、後年でいうところの「(コ)ギャル」的な側面もみられます。
そのファッションや髪形は、ジーパン刑事登場期間の1年で大きく変わります。1973年末には「第一次石油ショック」があり、翌1974経済は戦後初のマイナス成長となります。すると、久美さんのファッションも前衛的な感じから、地味で簡素なものになっていきます。経済状態の変化が、ファッションや髪形はもちろん、多くの人に「好まれる」雰囲気の変化にもなっていたことがわかります。余談ですが、久美さんは1年後に登場する「テキサス刑事」ともほんの少しだけ会話をするのですが、ほどなく降板してしまいます。1970年代半ばは、女性の取り扱いが苦手な「体育会系」男子が好まれるようになっていったことを表しています。
なおこの青木英美さん、これ以前は青春学園ものに出演され、人気があったそうで、現在でもシニアモデルとして活躍されています。小顔で長身で、当時の日本人離れしています。
まとめ
マカロニ刑事が、どちらかというと不良学生の雰囲気を持っていたところ、ジーパン刑事はナイーブで純粋な雰囲気に設定されています。俳優本人がそうでもないようで、この雰囲気は半年程度になってしまいましたが、それでもこれ以後の作品に大きく影響しています。
特に、ジーパン刑事登場後3か月間にわたって、佳作が続きます。犯人に騙されてつながれた手錠を手で切断したり、ライフル魔を素手で説得に向かったり、と、他の刑事ものにはない雰囲気を作り出していきます。
サンテレビをご覧になれる地域の方は、ぜひご覧になってみてくださいね。
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Posted at
2021/03/20 19:32:49