
今回、自作での
「ステアリングの本革巻き替え」 に初挑戦してみました。
数年前から
「一度はカスタムしたステアリングを使ってみたい!」 と思っていて、前車の「CT」の際に (みんカラでお馴染みの)
「 Leather Custom First 」さん に巻き替えの相談をしましたが、
『「ステアリングヒーター」装着車は巻き替えが出来ません』 とのことで諦めていました。
今のアテンザは、幸か不幸か
「ステアリングヒーター」 が装備されていないので、”
カスタム化”のチャンスだと思っていました。
(ステアリングヒーター付きのステアリングは、中に電熱線の様な物が巻かれていて、それを再利用する事が出来ないので、巻き替えが出来ないそうです。(ステアリングヒーター機能を使わないなら巻き替えは可能とのことです))
当初は業者さんに ”
巻き替え” をして貰うつもりでしたが、ずっと
「 Leather Custom First 」さんのブログを見ているうちに、
「ダメもとで、一度自分で巻き替えをしてみたい」 と思う様になり、昨年の秋頃から妄想をしていました。
(↓Leather Custom Firstさんの作品の一部です)
< 苦労した点 >
初めての挑戦で、色々苦労したことが沢山有りましたが、一番苦労したのが
『革の伸び』と 『革の縮め』 の調整でした。
革はある程度伸びるので、その点が便利でもありますが、思った以上に伸びたり、思ったほど伸びなかったり・・・と、
「寸法出し」 や
「形状出し」 には かなり苦労しました。
また、後述しますが、革を縮めなければならない状況も発生し、その方法が見つかるまで時間が掛かりました。
基本は、純正のステアリングから剥がした革を参考に
「寸法出し」 や
「形状出し」 をしましたが、その通りにやると革が余ってしまったり、長さが微妙に足りなくなったり・・・と、なかなか寸法や形状が決まらず、本番に入れませんでした。
もうこれでいいかなあ~と思って 「本番」 に入りましたが、実際にやってみると 練習用の革と本番用では見た目は同じでも性質が違ったり・・・と、予想外の展開になってしまったりもしました。
途中で「大失敗かも?」と思ったりもしましたが、色々経験した調整をしてみたら何とか形にはなったのですが、
「”革”の扱いは難しいなあ~」 とつくづく思いました。
< 革の選定 >
①
革の色選び
無難に全面ブラックにしつつ ステッチでメリハリを出すか、明るいホワイトやレッドなどの色を
混ぜるか・・・。
悩みに悩んだ結果、ブラックをベースに、上下にアイボリー系の色を使う形にしました。
内装のホワイトレザーの雰囲気に似せたかった為です。
(ホワイト系の色は汚れが目立つ心配もありましたが・・・)
今回 選んだ革は
『自動車内装用』 ではなく、市販されている革で、
『シュリンク』
と言われる革の種類なのでステアリングとしての耐久性には不安もありますが、
自動車用よりも触った感じ適度な柔らかさがあって気持ちが良いのと、
『自分使い』 で
初めての挑戦なので その点は仕方無い・・・と思い進めました。
一応表面には防水加工がされている物を選びました。
< 専用の台を製作 >
ステアリングの革巻き替え作業ではステアリング単体で作業しますが、そのままでは不安定で非常に作業がし難いです。
業者さんのブログなどを拝見していると、ステアリングを固定する台を使っている様だったので、ホームセンターなどで売っているパイプ材を使って、簡易的な台を製作してみました。
(↓自作した台)
この台が有れば 作業しながら進行具合によってステアリングを徐々に回すことも出来るので、純正の革を剥がす作業 や ステッチ入れ作業 が非常にし易くなりました。
< 実際の作業 >
① 純正ステアリングから革を剥がします
ステッチの糸を少し切り、ステッチをほどく要領で剥がしていきます。
② 革の切断
剥がした純正の革を参考に、長さや形状を若干修正しながら 型を起こして 革を切り出します。
ステアリングの外周の長さは、剥がした革の96%程度、ステアリングの太さは100%で寸法出ししました。
③ 縫製
4分割の革をミシンで縫い合わせます。
縫った後、ステアリングの溝に埋め込む部分は最小限にするべく切断します。
③ ステッチ用の穴あけ
ベースボールステッチの糸を通す穴位置も、基本的には純正ステアリングに開けられた
位置を参考に 革の端から5mmの位置に、糸を通す穴はФ0.6mmの2号ポンチを購入し
穴の間隔を6mmで開けました。
当たり前ですが、ステッチを入れるには革の左右には同じ数が開いていないとステッチが
出来ないので、注意して下さい。
上の写真の3時と9時の部分はステッチ部が弧を描くので、外円側に対して内円側は穴のピッチを若干狭めた方がステッチが入れ易く綺麗に仕上がると思います。
④ ポンド塗り
革の接着には
「ゴムのり」 を使いますが、この「ゴムのり」は、接着する両面に
塗り、乾いてから押しつけて接着します。
薄く塗り伸ばすことがポイントだと思います。
私は、強力タイプと普通タイプの2種類を使い分けましたが、文房具店やホームセンターで
入手しやすい コニシ「G17ボンド」 でも大丈夫だと思います。
⑤ ステッチ作業
ステッチ用の糸は、#0番の太い糸に
「ロウ引き」 された
「ビニモ #0 ダブルロー」 を
選びました。
色は、自作したメーターフードのステッチと同じ№14の赤です。
(
「メーターフード」の巻き替え )
ただ
「蝋(ロウ)引き」 してあるので、普通の糸と比べるとちょっと色が濃い目に
見えます。
針は、手縫い用の「極太」を使用しました。
革用の針の糸通しは、普通と違って変わった通し方をします。
針袋の裏に説明が載っています。
ステッチはもっともポピュラーな
「ベースボールステッチ」 にしました。
事前に、何度かこの 『ベースボールステッチ』 で縫う練習をしてある程度、コツを掴んだ
上で本番に挑みました。
このステッチの入れ方は、以下のYouTubeで判り易く解説されているので参考にして
下さい。
実際にステアリング形状でステッチをやってみると、スポーク部分のステッチ
は結構難しかったです。
(↓ステッチ練習時の写真)
ステッチ入れ作業は、糸を引っ張りながら縫っていっても、次の穴へ針を通している内に、
ステッチが徐々に緩んできてしまいます。
上↑の写真では革同士が綺麗に密着していますが、実際には写真の様に次の穴に針を通している間に徐々に隙間が空いてきてしまいます。
そこで考えたのが、
『後から連続でまとめて糸を張る』 事でした。
先ずはある程度 ステッチを作りながら縫い進めていきますが、
『ゆるゆる』 のまま縫い
進め、最後にまとめて縫い始め箇所から順にから、糸のテンションをっていきます。
そうすると緩む前にどんどん先に糸を張りながら進むのでステッチが綺麗になります。
糸を引っ張る治具は車の配線の取り回しなどに使う先が曲がった物が便利だと思います。
④ 革の縮ませ方
これまでの皮弄りで、皮の
「シワ」 を解消するには
「革を伸ばして処理する」こ とは経験的
に理解していましたが、ステアリング巻き替え作業では革を縮めて処理する必要があり、
その方法が判らずに苦労しました。
具体的には、ステアリングの3時と6時と9時の辺り(表・裏共)はステアリングの形状として
窪んでいる部分に革を密着させる必要がありますが、単純に接着剤で密着させようとして
も革が余ってきてしまい
「大きなシワ」 が発生してしまいます。
この
「大きなシワ」を解消するには部分的に革を縮ませなければなりません。
「革の縮ませ方」 について、ネットでは 「革ジャン(全体)を縮ませるには
『水で
塗らして乾かす・・・』」 ということもUPされていて、全体を縮ませる方法は
見つかっても部分的に縮ませる方法は見つからず、しばらく悩みました・・・。
そこで業者さんのブログとかをじっくり見ていると作業台にヒートガンが置いてあるのを
発見!
(↓Leather Custom Firstさんのブログより)
「もしかしてこれかも?」 と思い、ヒートガンでじっくりと革を温めると
革が縮んでくれることが判りました。
下の写真はアイボリーの革にマジックで10mm間隔の格子を書いた物をヒートガンで
熱したサンプルです。
右側が縮んだので、格子が歪んでいます。
(↓革が縮むテストをした写真)
実際のステアリングの写真で説明すると、
(↓革がたるんでいる状態)
(↓たるんでいる箇所をヒートガンで縮ませた状態)

(革が縮んで締まっているのが判りますか?)
⑤ スポーク部の端を折り曲げたり、接着剤で固定させるなどの処理を行います。
⑥ 完成
良く見れば色々問題も有りますが、初めてトライした割には上手く出来たかな?
と自己満足してます。
これで完成ですが、汚れを落としたり、ステアリングに ステアリング専用のオイル
である
「ボランテクリーマ」(Volante cremA) を塗りました。
< 装着写真 >
最後まで目を通して頂いて有難うございました。
どなたか お一人でも 参考にして頂ける方がみえると嬉しいです・・・(^_-)。