
内装パネルの本革化の第②段として、前席の「デコレーションパネル」の本革化にトライしました。
(かなりの長編になりますので、適当に飛ばして見て下さい)
<動機>
以前から内装パネルの巻き替えをしたいと思いつつも、どの色に巻き替えるか決心が付かず、ずっと作業が停滞していましたが、メーターフードの本革巻き替えをした際に、
「目立つ色よりも、純正然ながらも"チラッ”と個性を出すだけにした方が見飽きなくて良いかも?」
と思い、同じ 「黒本革×キャメルブラウンステッチ」 で巻き替えることで気持ちが(とりあえず)固まったので実行する事にしました。
<一番悩んだ点>
今回のクラスターパネルも、コーナー部の革の巻き替え作業には神経を使いましたが、それ以上に悩んだのが、「
ステッチ」でした。
純正のパネルを見ると、2本のステッチの縫い目が綺麗に揃っていますが、
これを見ると 「縫い目が揃っているのが当たり前」 の様に思うかもしれませんが、実はこの縫い目が綺麗に並んだ状態のステッチを 一般の
「1本針 ”下送り” ミシン」 で行うのは非常に困難なんです。(不可能と言った方が正しいかもしれません。)
以前に、メーターフードで入れたステッチは、「パッ」 っと見は縫い目ピッチが等間隔で綺麗に見えるかもしれませんが、
厳密にいうと、それぞれの縫い目のピッチ(間隔)が微妙に不揃いなのですが、ステッチが1本だけならそれが判りません(目立ちません)。
しかし、クラスターパネルの様に2本のステッチを片方づつ 2回に分けて順に並べて入れようとする、途中から縫い目が微妙にズレ始め、そのズレがだんだん目立ってくるんです。
このことは私の(厚物用に改造した)ミシンも同じで、徐々に縫い目がズレて、1本づつ分けて入れた2本のステッチの縫い目が揃いません。
おそらく、純正のパネル類のステッチは 工業用の
「2本針(総合送り)ミシン」 という、2本の針で2本の縫い目を同時に縫いつつ、
縫う生地を安定したピッチで送る事が出来る
「総合送り(上・下・針の3つの送り機能)」 という かなり特殊なミシンを使っていると思いますが、素人がそんなミシンを購入するわけにはいきません。(このミシンを使っても、厳密にいうと、進行方向のそれぞれの縫い目間隔は微妙に不揃いになっていると思いますが、左右は同じ縫い目間隔では縫えているので、縫い目間隔がズレている様に見えません(目立ちません)。

(↑2本針総合送りミシンの針部周辺写真)
一般的なミシン(下送り) : 「下側の送り歯」だけで縫う材料を送る機能のミシン
特殊なミシン①(上下送り) : 「下側の送り歯」と「上側の押さえ」の両方で縫う材料を送るミシン
特殊なミシン②(総合送り) : 「下側の送り歯」と「上側の押さえ」と「針」の3つで縫う材料を送る機能のミシン
妻からは
「
(素人なんだから)縫い目のズレなんて気にしなくても良いのでは? 」
とも言われましたが、気になりだすと止まりません。
何とか綺麗にステッチを並べて入れる方法が無いか・・・と真剣に悩みました。
本革でステアリング加工やパネル類の加工をされている専門業者さんの作品を見ても、縫い目ピッチが結構ズレているものが多く、一般的なミシンで2本のステッチを綺麗に縫い目を揃えてステッチを入れるのはプロの方でもかなり難しい様です。
(敢えて写真は避けましたが、業者さんのステッチも良く見るとかなりズレているものが多いです)
実は、シフトブーツを本革で自作する際にもこのことに悩み、散々悩んだ結果、「本革を2つに折り畳んで、ステッチの縫い目の穴をミシンで同時に開けて、
ステッチの糸は(ミシンを使わずに)
「後から『手縫い』でステッチを入れる」方法 を取っていました。
ただ、シフトブーツはステッチ自体の長さがが短いので前述の手間の掛かる方法でステッチを手縫いしてもそれほど時間も掛からずそれほどは苦にならなかったのですが、内装パネル類の場合はステッチがかなり長いので、手縫いで綺麗にステッチを入れるのはかなり大変そうでした。
(クラスターパネルの右側は短いですが、左側のパネルや他のセンターコンソール付近のパネル類はステッチがかなり長いです)
大変だとは思いつつ、
「(自己)満足するステッチを入れる為にはこの(手縫い)工法しかない!!」
と思い、今回のクラスターパネルでも同様の方法を選ぶことにしました。
(ステッチの糸は、純正よりもかなり太い#1糸を使って存在感が出る様にするために、純正のステッチのピッチよりも広めの「約7.5mmピッチ」でステッチを入れて有ります)
<加工方法>
使う材料は、メーターフードの本革巻き替えと同じですが、自動車内装用の約1.4mm厚の本革を専門業者に依頼して0.8mm厚に漉いて(薄く加工して)貰ったものを使用し、存在感のあるステッチを入れることにしました。
使用するパネルは、お友達の「やれんのー」さんから分けて頂いた物を使用しました。
(かなり前に分けて頂いたのにやっと活用する事が出来ました。やれんのーさん、本当に有難うございました。)
以下の説明はステアリング右側の小さいパネルで説明します。
①パネルを取り外し、純正の合皮を剥がします。
手持ちの革を利用して、型紙を起こします。(巻き込み部は多少大きめにカットし、実際の巻き替え時に微調整することにしました)
※こちらの小さなパネルは比較的簡単ですが、左側の長いパネルは本革の伸びも計算しつつ、曲面が多いので、上下分割したパーツの型を起こすのはかなり難しかったです。
いきなり本番の革を使うよりも、似た性質の合皮で型紙の確認をしてから本革での本番の作業に入った方が良いと思います。
②純正の様に上下で分割した革を縫い合わせます。
③ステッチを入れる縫い穴を開けます。
a)前述の様に、2枚の革を縫い合わせた後、折りたたんだ状態でステッチを入れる縫い穴をあけます。
b)裏側の革を開いて、写真の様にボンドで接着します。
c)ミシンで入れたステッチ用の縫い穴は、表側しか開いておらず、裏側の革には穴が開いていないので、「丸錐」を使って裏側の革にも縫い穴を開けます。
④ステッチ入れ
ステッチの縫い方ですが、シフトブーツの時と同じ方法で縫ったのですが、参考にしたのは以下のYouTubeの動画です。
レザークラフトでの手縫いは2本の針を使って縫うのが一般的な様ですが、この動画の方法だと1本の針で縫うことが出来るし、途中での縫い目の修正もし易いので今回もこの方法を選びました。
とはいえ、この縫い方も、慣れるまでは 糸のテンションが不均一になったり、縫い目が膨らんだり、ガタガタになったりするので、練習してコツを掴む事が重要です。
何度も練習し、ある程度ミシンでの縫い目に近い”
糸締まり”のステッチに出来たかなと個人的に満足しています。
(あまりお見せしたくないのですが、見えなくなる ステッチの裏側はこのような感じになっています。表面重視で裏面は犠牲にしています)
(↓裏面の写真)
我ながら、この右側のパネルの手縫いによるステッチは、「
想像以上に綺麗に縫えた」と思いました(^^)。 (左側は大きくて難しいです)
⑤パネルへの巻き替え
純正のパネルは 「接着剤」 と 「溶着」 を使って表皮をパネルに固定していますが、
(↓純正パネルの裏面)
私は 「溶着」 はせずに接着剤だけで固定することにしました。
(↓本革で巻き替えたパネルの裏面)
ステッチを入れた革は、革を裏面に引っぱりながら出来るだけ 「シワ」 が出ない様に巻き替えるので、パネルの表面の周囲は接着剤を塗らずに巻き替え作業をしながら必要に応じて接着剤を塗り巻き替え作業を行いました。
パネルも真っ直ぐな部分は裏面への巻き替えも簡単ですが、コーナー部分はかなり難しいです。
上手く説明できませんが、ポイントとして強いてあげるなら
ア) 表皮を引っぱりながら、上手く折り返して、シワが極力出ない様にする
イ) 接着剤は、塗ってある程度乾いた後に強く押し付けながら貼り合わせる
のが重要だと思います。
接着剤は、ある程度 熱にも強くて、強力なボンドを選んだ方が良いと思います。
というのは、熱に弱いボンドだと、真夏の車内の高温でボンドが解けてきて剥がれ易くなるためです。
(過去のメータフードの巻き替えでこのことを学びました(^_^;))
以前は、「G17」 や 「Gクリヤー」 などのボンドを使用していましたが、その経験もあり、 「革用ボンドでは最強」 とも言われる、
「EVERGRIP 5390M」 という、製靴用のボンドを最近は使用する様になりました。
<完成>
ステッチの入れ方で非常に悩んで1ケ月ほど作業が停滞しましたが、何とか本革のパネルが完成して「ホッ」としました。
右側のパネルはステッチが非常に綺麗に入れれたので大満足ですが、
左側のパネルは大きくてステッチ部分が長いこともあり、手縫いのステッチが 少し凸凹しているのが、やはり気になりますね・・・(^_^;)。
純正のホワイト内装(合皮)のパネルも気に入ってはいますが、黒の「本革」で存在感のあるステッチが入ったパネルも 「
渋くて良いなあ~」 と思い、早速装着してみました・・・・。
<装着>
実際に装着すると・・・。
「 (右側のパネルは) いいんじゃない~!!」
「 左側のパネルは・・・・ 」
「 手縫いのステッチも (縫い目ピッチは揃えることが出来たけど)、
縫い目がガタガタしてて真っ直ぐにはなっていないな・・・。 」
「
イメージしていたのと違う様な・・・ 」
「
もう少し目立つと思ったんだけど・・・ 」
などと、ネガティブな印象が出てきました・・・。
(左側のパネルは、早く完成させたい気持ちでちょっと焦って作業したことも有り、ステッチ入れもパネルへの巻き替えも、右側のパネルと比べると出来がかなり悪くなってしまいました・・・(・_・;)。)
当初は、
「 目立つ色よりも、純正然ながらも"チラッ”と個性を出すだけにした方が見飽きなくて良いかも? 」
と思って、ブラックの本革にキャメルブラウンのステッチを入れましたが、実際に装着してみると、従来の純正のホワイトのパネルと比べると、
渋すぎて、やはり存在感が不足する気が・・・。(・_・;)
「
色の選択はもう少し考えてから実行するべきだったかも・・・ 」
と少し後悔しています・・・。(・_・;)
苦労して巻き替えたデコレーションパネルですが、根本的な
色の選択の問題で残念な結果になってしまい、ちょっと落ち込んでいます・・・。(・_・;)
とはいえ、何とかここまで自力で作業出来て、「
次に繋がる弄りが出来たかな? 」とは思えたので、その点では満足しています。(^_^;)
デコレーションパネルの次は、コンソール周辺のパネルにも取り掛かろうと思っていましたが、ちょっと再検討することにします・・・。
最後まで目を通して頂き有難うございました。
長々と失礼しました。m(_ _)m