2014年10月26日
ヒューズのはなし
暫くの間お休みしていた電子シリーズですが、ついつい買ってしまったヒューズの効果に感動してしまったのが原因で、復活しました。
◇ヒューズとは何ぞや
ところでヒューズとは何でしょうか。
停電になると、古くはヒューズが飛んだという言い方をしますが、実際にはブレーカーが落ちた現象のことを指しています。現在、殆どの現役世代の人はブレーカーが落ちたという言い方をすると思いますが、昔はヒューズを使っていたため、本当にヒューズがダメになったのでした。
でも何故、ヒューズが「飛ぶ」んでしょうか。でも「切れた」という言い方もします。これについてはわかりません。英語で言う「He is gone」のようなものでしょうか。
ヒューズが飛ぶのは、必要以上に電気が流れ「これ以上流すとマズい」時で、電気を供給させなくするためにヒューズを飛ばして電気を遮断します。
ヒューズが切れれば回路は電源から遮断されるので、電気は流れなくなります。
逆に、ヒューズとはそのような場所に使われているのです。特に電源回路など、コンセントに一番近い場所に使われていることが多いです。
物理的な動作としては、ヒューズに必要以上に電気が流れると、ヒューズ内の導線が加熱し、自身を溶かして溶断しまうことにより、両端にかかる電気の流れを遮断します。これはヒューズの形状はどうであれ、物理的なヒューズでは同じです。
ヒューズは色々な種類があり、一般的なガラス管ヒューズや車に多用されるコの字型のヒューズ、リボン型のものがあります。
このヒューズの溶断は非可逆的な物理現象ですから、当然のことながら一度切れてしまえば、交換するしかありません。
ただこれでは代わりのヒューズがたくさん必要になったりするので、今の配電盤にはブレーカーが代わりに付けられていますが、繰り返し使えることを除いて働きは同じです。
まず切れることがない電気機器には、安価なガラス管ヒューズが使われています。
◇ヒューズはどこに
では電気機器には何故ヒューズが必要なのでしょうか。
初代プレイステーションの消費電力はたったの9W、一方でオイルヒーターは1500Wほども使います。
しかしプレイステーションもオイルヒーターも、回路にヒューズが入っています。
何故でしょうか。消費電力が影響するのでしょうか。
結論としては、「商用電源を利用するものには入れるべき」です。
商用電源とはコンセントから来る電気のことを指します。
携帯電話は充電はコンセントでしますが、持ち歩いている時には電池によって動きます。
電池は使い切ってしまえばそれ以上に電気は流れませんが、商用電源では発電所が止まるまで、延々と流れ続けます。
だって、冷凍庫が止まったら困りますから、発電所はとにかく「延々と電気を送り続ける」のが仕事なのです。
ところが発電所は非常に真面目で、余程のことがない限りは止まらないのですが、逆に「止めるのは難しい」のです。
若しどこかの一羽のカラスの感電のため、電気を止めるには発電を止めるしかないとなれば、一件のカラスのために万件、一億件ものパソコンを一旦シャットダウンして貰わないといけません。
一羽のカラスと経済活動を比べたら、カラスが可哀想ですが…
ですが「ずっと感電してろ」とは言えません。電気がムダだし火事にもなるし、死人が出ることもあります。カラスも可哀想です。
これでは穏やかでないので、
「発電所は電気を止められません、その代わり電気を止めません」
という誓いを立てたのです。
…というのは作り話ですが、実際のところ、不断のサービスのためにはこのような送電方法にする必要があるということです。
家一軒一軒にはそれぞれブレーカーがあり、これが遮断装置になっています。
さらに家がある地域単位でも分配するブレーカーがあります。
これと同様に、今度は家の配電盤から各電気機器に電源がいく訳ですが、この電気機器でのブレーカーが、ヒューズなのです。
◇ヒューズが切れるのは
ではヒューズが切れる時とは、そしてヒューズがなくて電気が流れたままだと、どうなるでしょうか。
ヒューズが切れていることが多いのは、ボリュームを最大まで上げた時や、アンプの許容よりもインピーダンスの小さいスピーカーを鳴らした時など、大きな負荷をかけた時です。
スピーカーを並列接続すると抵抗値が下がるため、アンプは想像以上に負荷がかかるため、大抵は安全回路が働きますが、モノによってはヒューズが切れます。
一台では近所迷惑なほど音量を上げてもビクともしないのに、二台を接続するといとも簡単に安全回路が働くハズです。
逆に、何もしていないのにヒューズが切れてしまった時、交換してもすぐにまた切れる時は、どこかで短絡・ショートしたり、回路的な(往々にして専門的な)問題が起きていることが多いです。
スピーカー端子からケーブルが外れていることが結構多いです。
素人にできるのはヒューズ交換まで、交換しても切れるのであれば大人しく修理に出しましょう。手に負えません。
◇ヒューズがないままだと…
大きな建物で、雨漏りでショートした場合、一番末端のブレーカーをすべて落とし、上流のブレーカーをすべて入れ、順番に末端のブレーカーを入れていくと、どこでショートしているのかがわかります。
ちなみにその間、電気はどうなっているでしょうか。
建物でショートした場合、ブレーカーが飛ぶので、電気は供給されなくなります。
ショートとは簡単に言えば、コンセントの右と左を直結したようなものです。
ですから、間に何も負荷になるものがないと、ショート・短絡になります。
雨漏りはショート原因の最もありふれたもので、雨水は水で、電気を通しますから金属のコードのようなものです。
水が、コンセントの右と左をつなげてしまったらショートになります。
普通はこの状態になって、一気に電気の流れる量が増えるとブレーカーが落ちます。
ところがこのブレーカーが落ちずにずっと電気が流れ続けた場合、極端な話をすれば、家のコンセントの中を「一秒間に一都市分で使う電気が、一秒に流れる」ような状態になります。
正しくは発電所一箇所で出来た電気全て、です。高速機械はともかく、電気溶鉱炉やら何やらかにやら、工業団地と住宅地に供給しても余るほどの電気の量です。
そんな電気が一箇所に来たら?
実際にはそんなことはまずありません。
流れた時には一瞬で電線が溶け、電気は流れなくなりますが、家は焼けるでしょう。
そうならないように何重にも対策がされていますから、そこは安心してください。
ただし、感電したことがあるならわかりますが、そこまでの電気が流れないとしても、交流100Vは結構なショックであり、実際に感電して人が死ぬこともありますから、決して電気を馬鹿にしてはいけません。
殊更、電気は目に見えませんから、流れているのか流れていないのか、それとも、つなげたら電気が流れるのか流れないのか、見た目で全くわかりません。
電気が流れると蛍光色に光るような技術があればいいのですが、残念ながら電気に色を付けることはできないので、くれぐれも電気は慎重に扱ってください。
ここまで書いておいてまた話は元に戻りますが、結局、「発電所から家まで」「家の配電盤から電気機器まで」は同じことで、もしもの時に火事や事故にならないようにするため、ブレーカーやヒューズは必要なのです。
電球などの照明器具は構造が単純で、あまりに電気が流れたとしても電球自体が切れてしまうため、このような電気機器にはヒューズが付いていないこともあります。
(ワット数を合せないと早く切れるのは、このせいだと思われます)
◇ヒューズと仲良くするには
電気機器にはヒューズがつきものです。
音響機器などというレベルになると、500Wとかいう電気を必要としますから、電子レンジと似たようなレベルです。立派な電子機器です。
瞬間的に要求する電力はさらに大きいことがあります。
特にアンプなどは電源系に途方もない大容量のコンデンサーを積むことがあり、このような電子機器は他にはあまりありません。これが稀に破裂するのです。
しかもそもそもが相当な熱を発生させる部品の寄せ集めという性格上、下手をすれば「燃えます」。
ところがアンプとスピーカー、デッキは回路が直結していますから、仮にアンプが何らかの原因で異常な電流を出した場合、スピーカーが巻き込まれてボイスコイルが断線します。
そうならないように電源にヒューズがあったり、スピーカー経路にヒューズがあったりするのですが、しかし万能ではありません。
しかも万能ではないくせに、ヒューズは大抵の場合ヒューズソケットにはまっただけの状態で、しかもソケットもヒューズの接触部も安いスズメッキのまま、下手をすれば何十年も酸化し接触不良寸前の状態で放置されます。
そしてヒューズは電源供給路の要所において、折角太線で接続したのに、それを回路の直前で邪魔をし、しかもボトルネックの働きをしてしまいます。
さらにはソケットに嵌っているだけなので、振動により影響を受けることもしばしば。
こうなるとヒューズは過剰防衛の最たるもので、余分な装備以外の何者でもないのですが、しかし電安法やらでも決まっており、何しろ最後の砦ですから、抜くに抜けないのです。
実はヒューズに関しては昔から色々と言われておるようで、特に音響分野ではその影響が馬鹿にできないということで、玄人向けに色々なアクセサリーが誕生しています。
電子回路用ソケットは、電子工作の自作者向けに高品質なものが出ているだけであり、既製品の回路のものを取り替えるということはごく一部のマニアに留まっているようです(昔やりました)が、古いものではヒューズ管の両端を磨くだけでも随分と改善されます。
この点ではカーオーディオは幾分進歩しており、高音質ヒューズとして販売されているものをチラホラ見かけます。
且つバッテリーから直接、直流電流を引っ張ると言う性格上、下手すれば事故にもなりうるため、専用ヒューズボックスも用意されています。
特に直流電流を大電流で流す必要があるため、バッ直には太い電線を用いるほか、ヒューズ内の導線も太くなります。
ホームオーディオでのアクセサリーとしては、接触抵抗の低下を目的として、両端の接触部分に金メッキを施したものが用意されています。
またガラス管だと振動に弱いからか、セラミック等で代用したものがありますが、導通テスタを使うか実際に使ってみないと切れているのかわかりません。
そして非常に高価です。
中には、1台のアンプの中に10本どころかもっと使われているようなものもあり、全部交換するとなると大変なことになります。
ヒューズは同等品・同数のものと交換するのは全く問題ありませんが、時として間違うことがあります。
それはスローブローヒューズと呼ばれる所謂「遅延型」のヒューズです。
大抵は速断型ですが、一瞬位流れただけで切れるのは困るということで、ある程度の間流れていないと切れないヒューズのことです。
つまりは遅延型なのに即断型を入れると何度も切れることになり、即断型なのに遅延型を入れると煙を吹いて壊れる恐れがあるということです。
両端の金属部に刻印で書かれているので、くれぐれも注意しましょう。
また、すぐにヒューズが切れるからと指定アンペア数を上げる人がいますが、これは非常に危険です。
本来のヒューズの役割を果たしません。
そんな状況になったらほぼ間違いなく故障していますから、下手せずに修理に出しましょう。
定格1Aに20Aのヒューズを放り込んで、そのうち煙を吹いて火が出ても知りません。
◇結局、ヒューズは必要か
ヒューズは「必要悪」の部品です。
音響用コンデンサーの部類と同じで、精々たまに抜き差しして接点酸化を防いでやるか、忘れた頃に新品と交換するくらいで良いのではないでしょうか。
私の場合には放ったらかしで、ケーブルのほうが悪さをしている可能性が高いですけれども、変化はあったという事だけです。
往々にして、このような性格の部品を積極的に交換したいと思って交換する場合、他にもっと効果がありそうな事が無かったという状況を私は知りません。
今回は非常に幸運だったと言えるでしょう。
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2014/10/26 20:20:06
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