最近休日は秋葉原で電子部品を探すためにそっち方面にドライブに出ていますが、ここへ来て小生行きつけの床屋が
「俺ェ都内向いてく時はァ、小金井まで車で行って↑、駅前の駐車場停めてくんだけど↑、休日限定のおでかけパスってのがあんだけど↑、山手線だったらどこでも乗り降りできっし、普通に往復で切符買うより安いから↑ぁ、俺そっち使っちゃう」
そんな事を言っていたので先日使ってみたんですが、往復の運転で疲れるのと高速代や油代、都内での駐車場代を比較したら、車で行く事のメリットが九割方無くなってしまいました。
ただ一つだけ確実なメリットがあるとすれば、大きい荷物をすぐに放り込める事くらい。これなら、電車に乗っている間に電子工作の本でも読んだほうが小遣い稼ぎになりそうだと、最近買ったまま積み上げた本を前にして思いました。
最近読んだ中で面白かったのは佐藤優「自壊する帝国」
久しぶりにこんなハードカバーの所謂書籍を読みましたが、節の区切りが非常に適切で、ちょうど良いタイミングで止められるので大変読みやすかった。大体節が3ページくらいで区切られるので、そこで切りよく諦められる。この節の区切りがないと、とにかく止められない。しかも再び読み始めたら話がわからない。その心配がないのが良いですね。ただこれはファンタジーのような題材だとやりにくい形式なので、それで小生は本が嫌いになったのではないかと。故にアニメは見るがノベルズは手を出さなかった。
まあ読みやすいだけでなく内容も勿論面白かったですが、本を読み切ったのは本当に久しぶりです。今また別の本を半分くらいまで読みましたが、これも形式が同じ感じで、もっと分厚いのに半分まで読めました。
さてそんな事はどうでもよくて、問題はネットワークの設定の効率化です。
現状ネットワークの設定をゼロから決めるというのはそもそも無理ぽということで、気に入ったネットワークの設定で聞いてみて文句のある所を弄っていく、という流れでやっています。
中には高域ハイパスフィルターが30dB/octスロープとかいう何が何なのかよくわからないネットワークもありましたが、概してミッドバス側は12dBくらいまでしか使われていない感じで、P01のプロセッサーでも18dB以上はほぼ使ったことがありませんので、余程でなければミッドバスは12dBまでで事足りるのかなと。
あとは適宜ツイーター側だけスロープを変えながら探っていけば、そのうち当たりを引くかな~と期待して。
そんな中、メーカー純正のネットワークで、公称しているクロスオーバー周波数と、使われている素子から推測されるクロスオーバー周波数が違うというパターンが多くありました。クロスは3000Hzだと言うのに使っている素子の設定では800Hzとか5000Hzといった数値をとっています。一体どういう事だと。
JBL670GTiはネットワークの周波数特性をグラフで公開しているのですが、確かにこのグラフでは公称のクロスオーバー周波数になっているものの、実際のフィルターのかかり始める周波数は全く違っていました。
要するに計算サイトなんかで出てくるのは「指定した周波数でフィルターのかかり始める、ネットワーク素子の容量」みたいなものと理解しました。
一応そこで出てきた容量の素子でネットワークを組んで鳴らし、スマホのスペクトル測定アプリで測ってみたら、ミッドバスは結構綺麗に減衰の状態が表示されていましたので、多分合ってるのかなぁと。
同じ事を、現在愛用中のETON PRO170のネットワークでも確認するため、PRO170のネットワーク素子から推測される周波数を推算。その周波数からハイパス、ローパスそれぞれのスロープで減衰していくとしたとき、グラフがどのポイントで交わるかを出してみました。
するとやはり公称のクロスオーバー値あたりで交わるという結果になりました。素子からの推算なので少しズレますが、まあまあこの辺りだろうという感じになりました。
スピーカーネットワークの計算サイトはどういう訳だかLPF、HPF共に同じ周波数で設定する前提で表示されてくるので、同じにしないといけないのか?と思ったのですが、それだとクロスオーバー周波数近辺の音が強くなりすぎておかしくなると思っていたので、やっぱり実際のところは各フィルターの周波数設定はある程度離して設定するんだなぁと納得しました。
まだエンクロージャーに放り込むホーム用スピーカーはともかく、カースピーカーで本当にそんなに計算通りに行くのかと疑問は尽きませんが。
さて、グラフにしたらなるほど分かりやすかったという話ですが、ここでのグラフは単なる方眼紙では描けません。
親切にもクロスオーバー設定を公開してくれているJBL670GTiのグラフを見ると、横軸に周波数を、縦軸に減衰量をとっています。但し縦軸は普通方眼の目盛りと同じですが、横軸は対数方眼です。
こんな感じの、縦横どちらか一方が対数目盛で取られている方眼のことを「片対数方眼(かたたいすうほうがん)」と言います。
ちなみに縦横両方とも対数で目盛りが取られているのは「両対数方眼」といいます。
クロスオーバー周波数がどの地点でクロスするかを知りたい場合、周波数側の軸を対数でとらないと減衰のグラフが直線状にならず、交点が読みにくいです。最悪普通方眼でもいいんですが、直線ではなくカクカクになるし、なにより紙幅を取るのでイマイチです。
対数でとらないといけないのは、フィルターのスロープ、減衰が1オクターブあたりで取られるためです。そもそもdB/octという単位は、「1オクターブ上がった時にxdB変わる」という単位で、1オクターブというのは「ある特定の周波数の音が倍の周波数の音になる」ことを表します。
例として、1kHzの音が-6dB/octのローパスフィルタで落とされるとした場合、1kHzの音までは影響がないので音の大きさは基準の値、つまり±0dBです。今のフィルタの設定では1octで-6dBされるのですから、1kHzの1oct変化した音、つまり1kHzの倍で2kHzの音では-6dBされている、という事になります。さらにここから1octの音は4kHzですが、既に2kHzの時点で-6dBされているのでさらに-6dBされて、合計で-12dBとなります。次の8kHzで-18dB、16kで-24dB…と続いていきます。
もし、1kHzから2kHzまでの変化を普通方眼でとった場合、横軸1目盛りで-6dB下がるとプロットできますが、次の4kHzを横軸3目盛りで-12dB、8kHzを-18dBと取ると、線で結んでも直線にならないうえ、とんでもなく横に長くなります。なにせ音の周波数は倍になっていくので、間に合いません。そこで普通方眼のように綺麗な正方形のマス目ではなく、マス目の幅を最初は広く、あとは狭くしたものが対数方眼です。
普通方眼は1マスが1、2マスで2…とn+1で変化しますが、対数方眼は対数でとるので、最初は1か2,3、…9、10と変化しますが、10の次は20、30、…90、100、その次は200です。音の周波数は十の位から超高域の十万の位まで扱うので、普通方眼だと幅が足りないし桁が変わりすぎるので、対数のほうが良い訳です。
この対数方眼でとると、プロットを線で結ぶと直線状になります。実際、先のJBL670GTiのクロスオーバー設定もこの片対数グラフで示されています。今回はあくまでも、LPF・HPFの計算に使うクロスオーバー周波数が違う時に実際のクロスオーバー周波数を知る方法として例示しただけであって、グラフ自体が持つ数式だとかを求める訳ではないので、近似式をどうこうまでは扱いません(というか小生が扱えません)。
余談ですが、この対数での方眼を縦横両方に適用したものが両対数方眼になります。
小生はその昔に片対数方眼ばかり使ったので存在自体は知っていましたが、両対数方眼については全く使った覚えがありません。恐らく分野ごとに違うのだろうと思います。
さて頭の痛くなる話はやめて、問題はこのグラフを描くにはそういう方眼紙が必要だという事です。
まあさすがに授業では紙の方眼を使いましたが、本当のサラの方眼紙を使ったのは数度のみで、あとはプリントに印刷された方眼を使ったものです。それだけ、そもそも使う機会はほぼないものだと云う事です。
今やグラフ作成なんてExcelで何とでもなりますし、こんな過去の遺産の珍品を探すほうが難しいくらいですから、大人しくExcelで作ったほうが利口です。
今回こんな理由で片対数方眼なんて使う機会があったものですから、懐かしすぎて実際に書いてみたくて探したのですが、そこそこ大きめの本屋で文房具も扱っており、文房具に飽き足らず線香や仏具まで扱っている所へ行って聞いてみたのですが、「書籍ですよね?」なんて言われてしまい、担当の人にも見たことが無いと言われる始末。恐らく学販とか研究用途で一部の業者に卸されているだけでしか、実物の対数方眼は流通していないみたいです。
恐らくそのあたりの工学系学科のある学校の購買へ行けば置いていると思われますが、小生が手に入れていた時は最早冊子ではなく1枚毎にバラ売りで、しかも1枚100円くらいしていたと記憶しています。
こんな事にカロリーやガソリンや時間を費やさなくても、拘りというものを捨ててネットからフリーのoffice系ソフトを落としてくればタダで描ける時代なんですから、そのほうが遙かに楽だし、また何かの拍子に仕事にも活きるというものですが、それでも紙で描きたいというのが趣味というか下手の横好きの悪い所ですね。
けれど紙に書いてみたほうがクロスオーバーのイメージもしやすいし、1枚でもあれば使える訳で、持っていて損はないというか、そのうち本当に絶滅しそうな部類のイチモツですから貴重品にもなりそうですので、なーんか欲しいんですよね。
と言うより懐かしいなあ。当時は蒸留塔設計をしてたと思いますが、まさか今こんな仕事やってると思いませんでしたね。趣味だけは当時の予想から五割方間違っていなかったですが。
知人が相次いで公害防止の資格を取ったそうで、個人的にもそんな気がない訳ではないし、去年まで数年続けて勉強していたのも休んでいるのでそれもいいかなぁなんて思っていたら、やっぱりこうして片対数方眼とかに縁があるのは生来の性なのかなあなんて感じてます。
なーんかそのうち、クロスオーバーの数値を入れたら設計上の音量レベルがフラットになってるかどうかグラフで表示されるような計算シートを作っていそうな気がしますw
全くこういう知識を仕事で使えばいいのに(怒)
再び先の画像に戻って頂きますと、確かにPRO170の設定というのはスロープこそ違いはしますが、ほどよくフィルターのかかる周波数が離れていて、オーバーラップした部分の音量に影響が少なそうに見えます。これが、PRO170のネットワークが使いやすい理由なのかもしれません。
まあ、スロープは緩いほうがイイというのは先のJBLで知りましたけれども、グラフにしたらわかりやすいですね。12dBに30dBのスロープを合わせるって…
今回の内容に関しては、個人的にこーんな感じに捉えるとわかりやすいかなーという感じにまとめたものです。もしかしたら大いに間違っている可能性があるので、そこは指摘して頂けると幸いです。
きっとこの人、そのうちエクセルにbutterworthフィルターの計算式打ち込んでますよ(棒読み)