2016年09月02日
DEH-P01を取り外したので、前々からやってみたかった、
「P01をホームオーディオで聴く」をやってみました。
構成は以下の通りです。
プレイヤー DEH-P01 … P01純正ハーネス音声出力を、プリメインアンプAUXへ入力
アンプ YAMAHA CA2000 … ボリュームは12時で固定、音量調節はP01電子ボリューム使用
スピーカー YAMAHA NS1000M
スピーカーケーブル ZONOTONE
RCAケーブル stax純正
尚、P01は一般的な3A出力ACアダプタを使用して駆動、キャパシタ等の安定化装置は用いていない。
今回は、全ての音場補正…ネットワークはパス、アライメントはキャンセル、バランス・イコライザーは設定なしとして、最も音質に影響が少ないと思われるタイムアライメントのみを0mm設定にし、音に影響が出るのかを見ます。
ちなみにP01のタイムアライメント設定は、数値設定画面で切るのではなく、定位位置切替でオンオフします。
またタイムアライメント設定値 は、2chホームオーディオスピーカーでありリスニング位置はセンターを取れるため、0.0mmとします。まあ数値が両chで同じであればよいでしょう。
理屈としては、タイムアライメントを入れても影響がないのであれば、数値が2chどちらも同じなら実際の音の発生は同時になるはずで、これはタイムアライメントを使っていない事と同じです。
2chのうち、いずれかの音を意図的に微妙にずらすことによって音が到達するタイミングを変え、単純な音の大小による方向感の錯覚を起こさせるのではなく、実際の音の定位する位置を変えるのがタイムアライメントです。
よくタイムアライメントは、リスニングポジションからスピーカーユニットのボイスコイルまでの距離を測定して設定しますが、実際には「最も遠いスピーカーユニットを0mmとして、近くなるにつれて音を遅らせる」ような設定をすれば、距離によらず任意の数値で設定できます。
但しいざ使うとなると、感覚上では距離を測るほうが明瞭ですから、そのほうがしっくり来ると思います。
前置きが長くなりましたが、タイムアライメントの理屈は重要です。簡単に「音を遅らせる」と言っていますが、これが全てです。音を早くすることはできないのです。
タイムアライメントの実現のためには、音を遅らせるための回路が必要です。例えると、CDウォークマンが音飛びしないようにCDを先読みしておいて、メモリにデータを保存しておき、CDが読めない=音が飛んでいる間は保存しておいたデータを再生する、というのと似ています。タイムアライメントはこれを、各chに分けて行っているのです。
このように、遅れて出すことは簡単に可能です。しかし早くすることは、CDの読み込みがあるので、絶対にこれが限界を生み出します。ならば、遅れて出せばよいのです。何も難しいことはないのです。というよりも、全部を遅らせておいてタイミングをずらして再生すれば、早くするなどという難儀をせずとも、早くしたことと同じことになります。
また、これは遅延回路という、いわば「遅らせるだけ」の回路を使うので、実際に信号に処理を加える手数はネットワークに比べると少なく、その点では実際に処理を加えるデジタルネットワークに比べるとはるかに音質には有利であるとされています。
しかしデジタルプロセッサーはもとよりタイムアライメントすらも使わない(否定とは申しません)考えの人も少なからず居り、曰く「音が変わるから(悪くなるとは申しません)」使わないのだそうです。
一方でそれを、実際にタイムアライメントが完璧に設定されていて期待されている動作を完璧に行えている場合と、その状態からタイムアライメントのみを切った場合とで、比較したという話は聞きません。
車内という、そもそもの環境が音響としては全く理屈に合わないカーオーディオという悪条件で比較しても環境由来の要因が大きすぎて、音響的な面からは結果に有意な差があるとは言い切れないように思われます。これと対照的に、セオリー通りの正攻法であろうとするホームオーディオで評価すれば、純粋に音響としての評価ができるではと考えた次第です。
このあたりの音響でいう音質には、単なる音色だけではなく、定位の再現性というものも含まれます。不思議と定位感は、カーオーディオでは音質と共に話題になることが多いのに、ホームオーディオでは音質に比べると定位感はあまり話題になりません。
それを議論するために、左右スピーカーのいずれとも距離が異なる状態で試したのでは、元々定位を実現することができる条件下であるのかがわかりませんし、ましてや調べたいのは、タイムアライメントによって音に変化があるかどうかです。できる限り余計な要素は消したほうが確認しやすいものです。
そのような理由から、今回はプレイヤーをホームオーディオに接続し、再生して確認します。
これならばスピーカーとの距離による定位の問題は解消されますし、タイムアライメントの設定をきちんとすれば定位は変わらないですから、純粋な音の変化を確認することができます。
前置きが長くなりましたが、結果です。
タイムアライメントを入れた状態と、切った状態とで、音に変化が見られました。
タイムアライメントを切った状態よりも、タイムアライメントが入った状態のほうが、音に響きがなくなり、余韻が少なくなりました。
とは言っても、特に余韻に注意して聞いていると響きにくくなったというレベルで、全く響かなくなる訳ではありませんでした。
また、全体的に繊細さが消えたように感じられました。良く言えば音の粒が丸くなってカドが取れ、まろやかになったようですが、素直に言えば、のっぺりとした音になってしまいました。これは真空管アンプのような温かみでは決してなく、かと言って解像度を重視した傾向でもなく、言ってしまえば悪い意味でのフラットな音です。フラットにされてしまった音と言ったほうがいいでしょうか。
これらの変化は、遅延回路を通したことによるものと考えてよいのでしょうが、何故そのような変化をしたのかについてはよくわかりません。
小生は、このような遅延回路というものはデジタルデータの状態でメモリに入っているというイメージを持っていたので、それならばCDを読み込んで一定時間保持して流すだけだから、CDプレイヤーがリアルタイムで再生しているのと何ら変わらないと考えていました。しかし思いのほか変化が大きかったということは、それだけの変化を生ずる事が行われているのだろうと思われます。それがタイムアライメントの実状なのだと言われればそれまでですが、車内ではそこまでに感じられなかったまでも、音には影響が出ているという結果になりました。
いずれにせよ、位相の揃ったスピーカーの中央に座るのと、バラバラな位置にあるスピーカーから音が出るタイミングを送らせて任意の場所で合成するという試みでは、どちらが容易かと言えば無理も無いことです。それでも補正することができるとすれば、タイムアライメントはなかなかに有効な手段であると言えますが、もしホームオーディオでもし使うとしたならば、これは使いたくないと言わざるを得ないレベルです。
ホームオーディオでは、ちょっと頑張ればジャンク品で買ってきたCDプレイヤーを工夫してやるだけでなかなかの音を出す事も可能です。そのレベルとで比べてみても、P01は厳しいと言わざると得ません。
とはいえ、そこまでのレベルで鳴らすことをいきなりカーオーディオに求めるというのは、条件が悪いのに要求するだけ野暮というものです。
確かにP01は、カーオーディオ用としては優秀な部類には入ると思われますが、音質だけで見ればDCT-A100のほうが断然上です。絶対的に勝っているのは定位感の改善能力です。
そもそも、ホームオーディオとカーオーディオでは開発や設計コンセプトからして異なっており、音響の部類に入るものではあるけれども、完全に同等に語ることはできないものであるということを強く認識させられる結果となりました。
Posted at 2016/09/02 02:40:09 | |
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