とうとうやってしまいました。
できれば手を出したくなかったナカミチ、知らずに済ませたかったナカミチ、しかしこうにも並み居るクルマがナカミチだと、一回くらい試してみたいという気持ちも勝ってしまい…
別に上を見なくても、CD-500とかでも良いと思っていたんです。別に六連装CDでもいい、あの2DINサイズで9000円の中古のやつでもいい、とにかくナカミチの音というのを聞いてみたかったのです。
そこへ現れたのがCD-700II…
最上級機、当然ながら決して気楽に導入できるものではなく、暫く小生の中の財務部門と相談。なにせ、これまで手を出してきたDENON DCT-A100や、Soundmonitor CDT-400Xに比べても、倍の値段になるからです。
それが合わなかったらどうするのか。
ところが、誰かが無責任にも「もし売るなら値段が付くほうが回収できる」なんて言ったものだから、そう思えば値段の付き難そうな先の二台よりももしかしたら安いのでは…なんて思えてきたのです。
追い討ちをかけるように、もし気に入ってしまった場合に上位モデルを買うのか、それだったら先に最上位機を買っておいたほうが安上がりだとも思えてきて…
そして思い出されるあの中国人の言葉…高いものを買っておけば、安いものは欲しくならない…
これは、小生のナカミチとの手切れ金なのだと思い込むことにしました。
そしてやって来ました。
最近のデッキにはない見てくれですね。こんな無骨なボタンだらけにするのはナカミチだけです。
これが、一点豪華主義にとりつかれたYAMAHA C-1とか1000ZXLとかを崇拝する、旧時代オーディオ製品マニアにとってはたまらない訳です。
1000ZXLとかがその最高峰ですが、民生用のはずなのに豪華すぎて使いこなすのも難しいようなデッキこそがナカミチです。ミスター過剰性能(褒め言葉)と言っても過言ではないでしょう。
詳しくはパーツレビューに入れようと思いますが、本当に痒い所が無いデッキです。
外部入力はデジタルアナログ両方装備、外部出力も勿論デジアナ両方。さらにトーン回路は、通常は高音と低音だけのところを、中音つまり中域調整までできる仕様です。後々これが結構活躍します。
最早アナログデッキとしてこれ以上求めるものがないというレベルまで高められた機能性、それはこのデッキの音質にふさわしくなるように設計されています。
とにかくガチャガチャとうるさいデッキですが、通常のCDローディングのように記録面に触れるのではなく、ディスクのエッジを挟んでローディングするという恐ろしい仕様です。こんなアナログ機構が組める技術者はもう日本に居ないのではないでしょうか。故に故障も多いらしく、それこそがナカミチデッキに手を出したくなかった二番目に大きな理由です。
特に冬場は潤滑も悪くなるので、ディスクエジェクトができなくなることが多いそうで。
そしてナカミチデッキに手を出したくなかった一番の理由が、恐らく音の好みが合わないであろうという予感です。
小生が聞いたことのあるナカミチの音と言えば、CDショップの試聴機と、その昔に手に入れたLX-3というカセットデッキだけです。試聴機は別として、LX-3は噂に違わぬナカミチらしいデッキで、自家録再ではピカイチの音質だったのですが、他のデッキで録音したテープはテープスピードが違うせいで再生速度がおかしくなるという笑えない仕様でした。
その後、LX-3は誰かさんが物理的に炎上させたせいで見事にスクラップになりました。しかし当時使っていた他のカセットデッキ…例えばA&D GX-9100EVだったと思いますが、その全てを軽く超えて見せた衝撃は今も忘れません。
ナカミチはカセットデッキで有名でしたが、まさにアナログの雄という名前がふさわしいメーカーであり、それが原因で倒産したメーカーでもあります。ナカミチの音と言うと真っ先にアナログカセットの音をイメージしますが、もしCD-700IIもその傾向の音だとすると、今のシステムにはどうかと。一番の問題として小生の音の好みから完全に外れる恐れがあります。
今まで行ったコンペでは、特にロック系の曲に合うようにセットされたクルマに搭載されていたことが多かったので、そこからも小生には合わないんじゃないかという思いがあったからです。
とはいえ、デッキのメーカーにはほぼ選択肢がなく、じゃあADDZESTにするか、ALPINEにするかでしたが、それならまだナカミチのほうが気心が知れていると判断し、導入を決意。
電源部が別体になっているとかインストールが面倒臭そうな気がしますが、とりあえずいつものホーム用12V電源で駆動。RCAケーブルは一番素直だと思うNanotec systemsの#211で自作したケーブルを使いました。
まず真っ先に思ったのは、やっぱりという一言。同時に懐かしさも感じます。簡単に表すと、無茶苦茶音質の良い、解像度の高いカセットデッキの音ですね。言い換えると、今よくあるような音作りではないです。でも昔はこういうのが多かった気が。とにかく、懐かしい。
気になっていた音の傾向ですが、懐かしさのほうが勝ったのもあるのか、こういう音でも自分は全然OKだと思いました。少なくともCDT-400X寄りではなく、正反対かもしれない。まだDCT-A100のほうが近い。でも、これでもかという位にアナログらしい音は気に入りました。
解像度や表現力に関しては、CDT-400XやDCT-A100よりも断然上です。まあDCT-A100にはA1ですとかZ1が上に居ますが聞いたことがないのでわかりませんが、たった1DINのデッキでこんな音が出るとは驚きました。
ところで、このデッキの音を聞いていて思ったのですが、中域あたりが非常に特徴的な鳴り方をします。サラウンドっぽいと言うか、ボーカル表現がリアルと言うか。小生が分かりやすかったのはボーカルの違いでしたが、ちょっとこのあたりをイコライザーで持ち上げたような感じに思えます。
この傾向、どこかで感じたことがあります。…手持ちのアンプ、Nakamichi PA-2004です。そういえばそういうのあったねえ…と自分でも思い出しましたが、アンプとの性能差を考えると、本当にCD-700IIと組み合わせることを想定していたのか、疑問符が沸きます。
また、ケーブルではJBL JSC1500もこういう傾向にあると思います。ちょっと待て、そう言えば車に載っているLUXMAN CM-4050もそんな感じだったぞ…あれ?いけるんじゃね?
そう思い早速車に取り付けました。
RCAだけは長さの制約と性能差がありますので、どうしてもTCHERNOVを使う事になりますが、まあ気にせずに。
聴いてすぐに、足りなかった何かが入ったような感覚。そうそうこれだよと言いたくなる。
事前に家で聞いたのを参考にすると、必要だったのは中域だったのか?
確かに中域を下げていくと、CDT-400Xのような音に近付いていく。400Xは最近の音の傾向に近いと思うが、デッキの選択で最初から近付けてしまうと中域が足りなくなるのか?だとすると、車に乗せた途端に音が全然変わるのも頷ける。
もしかしたら、低域よりも中域に問題があったのでは?そんな風に思えてきます。但し低音はこれまでのデッキの中で最も出ているように感じますので、ナカミチの音作りが合ったのでしょう。
家で聴いた時ほどにも中域が濃すぎる感じはなく、バランスも取れているかなと感じます。なにより聴いていて、ここまで来たかという達成感が出てきました。やはりナカミチユーザーが多いのには理由があります。
で悲しいことに、バランスオフだと若干運転席センターから右へずれます。それじゃバランスでズラせばええやんと思いますが、このデッキはトーン回路とバランス回路とで、調節ボリュームが共用なのです。昔あった四連ではなく完全共用なので、切替回路があります。
そしてさらに悲しいことに、この切替回路が効きません。トーン調節はできるのに、バランスへの切替ができないようで、バランス調節ができません。対策として、4chアンプのゲインで合わせようと思ったのですが、そのうちバイアンプ化もしたかったので断念しました。
諦めてそのまま聴いていたのですが、やっぱりアナログではステレオは完全に出ません。しかしそれも気にならないくらい、音は自然です。方向感も必要十分です。
勿論、音自体は良いので音の到達時間のズレは感じようと思えば感じますが、思ったよりも気にはならないです。
これは単にそれだけ鳴り方が自然に近い事なのだろうと納得することにしました。
今もし何かをやるとしたら、やはりバランスを弄りたいところですが、それをするとなるとデッキを修理に出さねばならず、それもなかなか大変です(労力的と言うよりも経済的に)。
ただでさえ導入に大枚を叩いただけに、立て続けに出て行かれるのも考え物です。それに、工夫すればバランスは取れるので、ひとまずこのままでいきます。
それより、ドアで中域あたりが影響を受けるのを何とかしたいですね。ヘッドホンでは強めに出て、ドアスピーカーではそうでもないことから(寧ろちょっと上げると良い感じ)、中域を強くするような何かを入れたほうがよさそうです。
吸音させるほうがよいのか、拡散させるほうがいいのかはっきりしませんが、またレアルシルトディフュージョンと吸音材をそれぞれ試すことにしたいと思います。以前stpの吸音材を入れたら中域がすっこんだ覚えがあるので、吸音材は入れないほうがいいとは思うのですが…
もうちょっとで何か掴めそうです。掴みたいですが…掴めるかどうか。