残念ながら新型スイフトには乗れなかったので、前々から気になっていたフォルクスワーゲンゴルフの1.2TSI、もちろんDSGに乗ってきました。
エンジン
1200ccのSOHC2バルブターボチャージャーでしたね。最大トルクが18kg・m、最高出力が105馬力です。コンセプトは、エンジン本体を小型化し、ターボチャージャーで出力を補って、7速DSGで出力をうまく取り出すというものでした。
発進時は、ほんの一瞬ですが1200ccゆえの力のなさを感じます。もしかしたら、トルクコンバーター式ATのトルク増大作用がないからかもしれません。書いているうちに、初代フィットの発進のトロさを思い出しました。そこからアクセルを踏んで待っていると、1500回転位から急に力が出てきます。この辺は、いくら自然なチューニングにしたといえど、タービンが回り始めるのを待たなければならないので、仕方がないですね。
そこから一気に出力が高まるので運転手としては期待してしまいますが、その後はあたかも小さな自然吸気エンジンのごとく緩慢な加速をします。私自身、ターボチャージャーエンジン車に乗ったのは、EP71スターレットのMTにほんの少し、そしてEP82スターレットのATに数時間乗っただけですが、それらの頃のターボチャージャーとは性格が異なります。まさにエンジン小型化を補うターボであって、出力に余裕を持たせている感じはしません。
市街地走行では、トルクたっぷりという感じはしないものの、普通に走ります。スロットル制御がまさに「オートECO」にされているようで、加速を終えて一定速度走行をしているとアクセルレスポンスが鈍くされるようです。その雰囲気も相まって、走り出し後から過給が始まっての加速の鋭さと、一定速度走行時とではエンジンの性格が全く異なります。なんとなくですが、余裕が感じられません。三本和彦さん流にたとえると、「倉にお金をたくさん持っているお金持ち」の走りとは正反対の走りです。「会社生活に必要なお金はこのくらいでしょ?」とばかりに、給料のほとんどを持っていかれる「千円亭主」の走りですね。
全開加速も試しました。やっぱりトルクが感じられないんですよ。その辺はやはり1200ccであることを感じさせます。トルクカーブがフラットであることは感じますが、全体的に必要にして最小限の力を発している感じがしました。
このエンジンで特筆すべきは、振動の少なさです。Dレンジ停車時はもちろん、加速時にもびびり振動を車体に伝えません。5,6気筒のようにというわけには行きませんが、ステアリングを握る手がブルブルしないというのは気持ちが良いです。
トランスミッション
乗る前は、頻繁にシフトが切り替えられ、そのときの車速にもっともふさわしいトランスミッションを常に選ぶようなシフトスケジュールかと思っていましたが、実際にはCVT的な変速を行います。
発進時は当然1速ですが、ちょっとでも車速が上がるとすぐに2速にアップされます。街中トロトロ渋滞では、2速かもしれません。これにより、鋭い発車と低いエンジン回転を両立しています。そして市街地での加速は、3速主体にしているようです。そして加速を終えると、4-5-6とどんどんアップシフトをしていき、街中は6速で走ります。空いた道では7速にします。そしてそこからアクセルを踏むとすばやくダウンシフトをして加速に備えるのかと思いきや、ほんの少しアクセルペダルを踏んだ程度では、上記オートECOモードになるためか、アクセル操作がやや無視されます。シフトもその際のギヤ固定で加速しようとします。
すなわち、結局
トヨタ流のCVT変速方式を有段で行っているとも言えます。この変速レスポンスの鈍さから、あたかもトルクコンバーターがあるかのような錯覚に陥り、それでいてトルク増大作用がないのですから、どうにもアクセルペダルを踏む足に違和感を感じたまま試乗を終えてしまいました。
このことから、この7速トランスミッションは、1200ccエンジンを補うためのものであって、多段化によるすばやい変速レスポンスを楽しむものではないと言えます。
ステアリング
この車は、ステアリングインフォメーションと言うものが全くありません。路面の凹凸をステアリングに伝えないので、路面の状況を視覚で得なければなりません。これは非常に疲れます。ステアリング系統が良くできた車は、ステアリングホイールを介していても路面を素手で触っているかのような感じが
するものですが、この車のステアリングホイールは全くゲーム機やおもちゃそのもの。気になって運転に集中できませんでした。もちろんそんなステアリングですので、路面キックバックは全くありません。
あとですねえ、ステアリングホイールがプラスチックそのもので、操作すると少し変形してステアリングシャフトに伝わるかのような錯覚を覚えます。まさか安全のために、ステアリングホイールから骨格を取り除いたのではないでしょうね??
サスペンション
すばらしいの一言です。サスペンションが良く伸び縮み、とくによく縮んでいる印象を受けます。硬すぎず柔らかすぎず、日産とマツダの車の中間といった雰囲気です。そしてロールが少なく、快適なドライブフィールです。タイヤハイトが高くなったこともあるのでしょうが、滑らかです。とくに前後コンプライアンスが少なくされているようで、目地段差では車輪が上下するだけで、前後している感じは希薄です。サスペンションを正確に動かすことはこういうことか、と感銘を受けました。
ブレーキ
オーバーサーボである感じが強いですね。国産車で言うところの、「ブレーキアシスト」が付いたばかりの車に多い踏み心地です。ペダルに乗せた足を降ろすと吸われるようにペダルが下がりますが、足を持ち上げてもペダルが少し遅れて戻って来る様な感じです。踏めばしっかりした感じではありますが、ペダルを踏む強さではなくストロークで効きを調整する感じのブレーキです。
アクセラの印象と全く同じです。
ボデー
しっかりしていて、ミシリとも言いません。各種補強をした私の家のブルーバードシルフィよりも、はるかにしっかりしています。曲げ、ねじりともかなりの剛性を感じました。
視界はやや斜め後方に死角を感じますが、見えないという感じはしません。ダッシュボードの上端が高く、前方視界がいまいちでした。幅はやや広く感じましたが、運転に不自由するほどではありませんでしたね。
シートが絶妙でした。しっかりしていて、それでいて体に無理がかからず、気持ちのよさに眠気を覚えるほど?でした。つくづく国産車のシートは遅れているなあ、という印象を抱きました。
まとめ
結構厳しく書きましたが、エンジンとトランスミッションは雑誌が言うほどよくはないなあ、という印象です。ドライブ感希薄なトヨタのハイブリッドよりは自然な印象ですがね。もっとトランスミッションが変速し、一定速度走行時の高いギヤと、加速時にはすばやい変速が楽しめ、「もはやMTはいらない」と思わせてくれるのかと思っていたのですが、進化著しいCVTやトルクコンバーター式ATと比べて大差ないか、ちょっと遅れつつあるような印象すら抱いてしまいました。
エンジンは、この1200ccターボが私に合わないだけかもしれませんが、ターボ過給が始まってからの出力の増大と、安定域に入ってからの余裕のなさ、そしてアクセルレスポンスの鈍さに、「なんだ、最初だけか」と思ってしまいました。
ステアリング操舵感の希薄さは、ドライビングの喜びをすべて捨て去るほどでした。電動パワーステアリングがダメなのか、そもそものステアリング形の設計がダメなのかは不明ですが、路面の状態を伝えないというのはこんなにも不安を感じるものか、と思いました。
反面ボデーのしっかり感と乗り心地はすばらしく、良いと思えるところとダメと感じるところがはっきりしていて、「これが好み?」「「お国柄?」と、終始疑問を感じつつ試乗を終えました。
まあ、雑誌でこの車にほれぼれしている方、悪いことは言いませんので
マツダプレマシー(ミニバンですが)、
スカイラインに乗ってみてください。雑誌編集者は西洋かぶれで、論調が「国産(特にトヨタ)ダメ、輸入車バンザイ!」だということがわかります。双方のアクセルレスポンス、そしてステアリング操作の自然な感じは特筆ものですヨ!
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試乗 | クルマ
Posted at
2010/09/20 22:46:59