セレナの試乗の帰り、トヨタカローラのお店でラクティス試乗会をしていたため、寄ってみました。
エンジン
1NR-FEエンジンが搭載されています。これはiQの4気等エンジン車追加時に登場したエンジンです。これまでトヨタの1300ccは、3SZ-FE、2NZ-FEでしたが、どちらも初代ヴィッツ登場時に出てきたエンジンです。そろそろ排ガス規制や騒音の点で古くなってきていたところの新エンジンです。
このエンジン、面白いことにノーマルマフラー、ノーマルエアクリーナーなのに、エンジン音、排気音ともなかなかよい音がします。エンジン始動時やアクセル操作時など、エンジン回転が上がろうとするときに「ムオン」と、AE86や初代ロードスターのノーマルマフラーのような気持ちが良い音がします。室内からもやや聞こえますよ。これは運転手をやる気にさせます。これは意外な収穫でした。
室内での音振動ですが、
フィットほどではありませんがジリジリザラザラはあります。ですが、これを打ち消すがごとく気持ちが良い排気音、エンジン音が耳に入るため、気にならなくなります。
出力はこれもフィットとほぼ同じです。余裕があるとはいえませんが、さりとて不足するともいえない、必要にして十分な仕事をします。となると、気持ちよい音のおまけが付いてくる分、得をした気分になります。
CVTについて
これまで
トヨタのCVTは全くダメであると評価し続けました。勝手に高いギヤ比に移行するは、加速時にレスポンスが遅れるはで、「他のメーカーの車に乗ったことある?」と私に言わしめるほどでした。
それがこの車になり、完全とは言えないもののかなり改良されています。日産の車に近い感じが出ていますね。特に加速時のレスポンスがこれまでのものに比べて良くなっています。街中での変速比の上限も、もしかしたら制限されているかもしれません。
ブレーキについて
これは不思議なブレーキでした。効き側(踏んだときの感じ)は普通なのですが、ペダルから足を離してもペダルの返りが遅れます。ブレーキ力調整がしづらくなるというほどではありませんが、なんとなく気持ちよくないブレーキフィーリングでした。踏み込んだときの剛性も、
パッソほどではありませんが今一つです。
サスペンションについて
これも最近のトヨタ流で、コツコツと硬さを感じさせるものです。さりとてヒクヒクと車が常に上下するものではなく、ショックアブソーバーが硬いと感じられるものです。日産車と同じ路面を走ると、日産車は揺れを吸収し、トヨタは忠実に伝え、ホンダは路面凹凸を強調する、というものです。結構気持ちが良い硬さです。
タイヤは16インチとかなり立派です。この大きなタイヤを良く履きこなしています。これは後述するボデー剛性も関係していると思いますよ。
ステアリングについて
サスペンションの硬さから、操作に対して機敏に反応するのではないかと思いましたが、そこはトヨタ車、適当なダルさがあります。このダルさが、特に長時間運転したときの疲れを軽減します。これはトヨタ車の美点です。コーナーリングは試しませんでしたが、おそらく前輪がしっかりする(突っ張る)トヨタ車流のものではないかと思います。
ボデーについて
この車のボデー剛性には驚かされました。1世代前の日産車はボデーがブルブルし、
フィットはタイヤからの入力をいなせない路面でも、この車はしっかり受け止める感じがします。もちろん剛性感たっぷりというわけではありませんが、
旧型マーチや
ノートやフィットより明らかにしっかりしています。やはり
フィットは1時代前の車がマイナーチェンジしただけなんだなあ、と思い知らされました。しっかりしたボデーは、運転手をやる気にさせます。
全高が下がった効果は私が旧型車に載ったことがないため分かりませんが、台形の底辺が長い感じが良く出ていて、安定感がありますよ。タイヤの効果も大きいでしょうが、サーキットを走っても良さそうな気すらしました。
内装は寂しさ満点です。一部をiQと兼用しているのか、どこかで見たようなデザインがあります。また、ウエストラインが高く、囲まれ感が強いです。視界はあまり良くなく、斜め後方は、「まあ見える」程度です。どうしてJラインにこだわるのでしょうか?
内装材は硬く、シボもなんとなく安っぽく、さびしい気持ちにさせられます。この種のコンパクトカーは、通勤用と割り切って買う人が多いからかもしれませんが、持つ喜びが感じられません。その点では、フィットのほうがデザインしようという意気込みが感じられ、まだ「ああ、買ってよかった」と感じることでしょう。
この点では、スイフトの良さが光ります。その昔、軽自動車専業メーカー(スズキかダイハツね)のコンパクトカーは、そのメーカーのトップとなるため力が入るといわれたものでした。シャレードが魅力が詰まった車で、カルタスはアメリカ人の足車と言われたものですが、ダイハツとスズキの位置づけが逆転してしまったのでしょうか?
スイフトのこの点の良さが光ってきます。
まとめ
この車は、非常に大きな期待がかけられています。旧型ラクティスの後継、旧型イストの代替、
パッソセッテの代わり、フィットの対抗馬、非常に難しい役どころです。おそらくもっと背が高い「シエンタ、ポルテ、ラウム後継車」が用意されることでしょう。それまで一台でフィットやノートと戦わなければなりません。価格設定域のことは良く分かりませんが、同程度のフィットの20万円高なのだそうです。
このクラスの車を選ぶ人は、20万円安いほうを選んでしまいそうな気がするのですよね。この車とフィットを比較すると、20万円では買えない、「しっかりしたボデー」、「やる気にさせるエンジン音」が付いてきます。CMからするとそんなことは気にもしない人を相手にしているようですが、試乗する方は、どうぞこの点を気にして乗ってみてください。
フィットRSには負けますが、フィット1300ccより良い車と言えます。RSと比較するとエンジン性能(1500ccの1NZ-FEは旧い!)とMTの設定がないことでは負けますが、ボデーのしっかり感はRSにも勝っています。
社長が代わっても車は変わらないだろうとタカをくくっていましたが、CVTの点などからトヨタの変革が感じられます。この先のトヨタが楽しみになる車でした。たぶん雑誌や評論家はつまらない車と触れもしないのでしょうが、結構楽しい車ですよ。MTを設定してくれないかなあ。あと、内装は何とかなりませんか???
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試乗 | クルマ
Posted at
2010/12/04 23:26:52