2011年01月03日
ヴィッツの転進に、女性重視マーケティング時代の終わりを感じる
ヴィッツのスタイルが男性的になったことは、以前にもブログに書きました。実際には、女性向けにはパッソを当てたことが原因でしょうが、なんとなく自動車業界には「女性を中心にしすぎたマーケティングを反省する」動きが見えます。
そもそも女性中心マーケティングが始まったのは、1996年のイプサム発売頃ではなかったかと思います。特に既婚女性が子供をつれて買い物に行く上で、乳母車を上げ下ろししたり、買い物袋をどこかの席に置いたりするのに便利なようにすることが命題とされた時代の幕開けでした。
イプサムのCMにも「イプー」なるキャラクターが出たり、タウン・ライトエースノアのCMは、お母さんと子供中心に描かれていたような気がします。おりしもオデッセイのヒットにより、それまでの背が低いハードトップよりも室内が広い車の方が使いやすいと感じた人が多かったためか、あっという間に「ママ’sカー」が増殖して行きました。
また、経済やマーケティング方面(日経、プレジデント、ダイヤモンド)でも、「自動車を購入する際、最も発言力を持つのは女性だ」という意見をどんどん発表したため、自動車メーカーは「女性に気に入られる車」ばかり作ることになってしまいました。
ところが、女性は男性ほど「店の馴染みになる」ことをしません。一方、商慣習として「一見さんよりもなじみの客を大切にする」ことがずーーーっと以前から行われています。新規の顧客を得るのに必要なコスト(宣伝、接客)よりも、リピーターを維持するのは1/10の費用で済むとされています。
もうお分かりですね。
「女性客を大切にしても、メンテナンスはよそに出してしまったり、次の車種を購入するときも散々値引きを迫り、ちょっとでもほかに安いところがあるとそっちで買ってしまう」現象が起こったのです。
しかも自動車販売そのものでは、当初は「女性のことを考えた車は使いやすいネ」だったのが、「軽自動車は安くて使いやすくてよいネ」になり、「自動車を持っているとお金がかかるから、持つのをやめようネ」または「車なんか動けばよいのだから、なるべくメンテナンスをせずに、最後に動かなくなったら買い換えれば良いや」になってしまったわけです。
これにはメーカーの人も泡を吹いたことでしょう。経済マーケティング関係の人が女性を大切にせよといってきたから大切にしていたら、その女性の移り気で今度はお客自体がいなくなってしまうのですからね。
昨今の、「スポーティーカーがないと車市場自体に元気がなくなる」という特にトヨタの姿勢は、「もう女性のことばかりは考えませんよ」という姿勢の現われだと思います。とくに、「パッソセッテ」のCMは、男性はもちろん、女性にも総スカンを喰らいましたからねえ。ラクティスのCMでも、女性の立場が以前よりは弱く描かれているのは、その辺に理由がありそうです。
ちょっと余談ですが、隠居間際?の某ジドウシャヒョウロンカは「イギリス人はある商品の入れかえ更新時期が近づいたら、各社から資料を取り寄せて最も安いもの(?)を選ぶ」と、さも日本人はもの選びを怠けていて、会社はその無知に付け込んで料金を下げていないような書き方をしていたことがありましたが、もし日本人もイギリス人のようにした場合、携帯電話のように「新規顧客のことしか考えない販売価格・戦略」になるだけで、たぶん誰も得をしません。
1990年代半ばから始まったこの「女性優先マーケティング」ですが、2011年にはかなり「男性より」になってくるものと思われます。車にも「伊達」が戻ってきそうです。
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Posted at
2011/01/03 23:44:23
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