2005年09月02日
ホンダ フィット 1300cc(初代、DBA-GD1) 試乗
このブログを読む人は、日付にお気を付けください。このブログは、2005年9月に試乗したホンダフィット(初代)について、2011年12月に思い出しながら書いているものです。
この1週間後、CVTに関する仕事をするため、さすがにCVT車に乗ったことがないと話にならないと考えました。そこで、自費でCVT車を借り、ドライブをしながらいろいろ試してみることにしました。後に続く、「試乗」の始まりです。
ホンダ フィット について
1996年に登場した「マツダ デミオ」により、コンパクトカー市場がにわかに熱くなりました。それまでコンパクトカーは、地方の女性の通勤用車として設定していましたが、このデミオは、「コンパクトファミリーカー」として登場してきました。車自体はそれまでの「オートザム レビュー」の焼き直しで大したことはありませんでしたが、久しく絶えていたコンパクトファミリーカーを具現しており、バブル崩壊後の経済状態が厳しい方の買い替え車として、爆発的にヒットしました。
そのデミオにより、「トヨタ車入門者」として設定されていたスターレットは、コンセプトを大きく変えてきました。それが1999年に登場した、「ヴィッツ」です。デミオがレビューの焼き直しで登場してきたのに対し、ヴィッツはシャシーもエンジンも新型で、西洋兜を模した力強いボデースタイルが特徴でした。
対してホンダは、バブル崩壊後の「安いが一番!」ブームで登場させていたロゴ、そのワゴン版の「キャパ」とともに、忘れ去られようとしていました。そこで両者を統合して登場させたのが「フィット」です。こちらもエンジン、シャシーは新型で、センタータンクレイアウトとともに、力の入ったモデルでした。
翌年(?)フルモデルチェンジされた日産マーチとともに、「コンパクトカー戦争始まる」と、一般週刊誌ともども大騒ぎになりました。
エンジン
L13A SOHC2バルブ ツインプラグエンジンです。2バルブコンセプトは、ロゴのD13Bでも使われていました。このエンジンは、二点点火により燃焼に旋回流を与え、ノッキングを起こす前に混合気を燃やしてしまおうという、かつての日産Zエンジンを思わせるコンセプトのエンジンでした。
後のL型4バルブエンジンと同様、若干「ジリジリ、ザラザラ音」が聞こえます。実用エンジンでありますが、中速域のパワーは十分でした。高回転域での伸びはありませんが、実用エンジンとして可はあり不可はない印象でした。
ホンダのエンジンというと低速域はパワーはないものの高回転では元気、という思い込みがありましたが、全く裏切られました。
しかし、なんとなくもっさりした印象のエンジンで、全域にわたってもっさりした印象でした。
トランスミッション
エンジンの動力をCVTプライマリーぷーりーにそのまま伝達、ベルトで減速をしてセカンダリーぷーりーに伝達、ファイナルギヤとの間に油圧多板クラッチを設けた、第一世代のマルチマチックです。
基本的な「最ロー」の変速比が高く感じました。発進時はクラッチを結合しながら動力伝達を開始し、20km/h程度で完全結合されるようです。その間半クラッチでなめらかな発進をしますが、トルクコンバーターの様にエンジンの力を増大させる作用がありませんので、発進時は非常に頼りないです。急坂では、かなりクラッチを滑らせるのではないでしょうか。
発進時のパワー感は、トルコン4速ATで2速発進をしているかのような印象です。最ローの変速比が高いので、トヨタとは違った感じで「あれよあれよと高い変速比に移行」しているような感じです。
変速スケジュールは、少しでもアクセルペダルを踏むとエンジンの回転上昇が先行し、なるべくエンジンに負担をかけないような感じで行われます。もっさりしたエンジンを、CVTでカバーしている印象です。
なお、ブレーキを踏みながらアクセルペダルを全開にして行う「ストールテスト」は、可能でした。
サスペンション
乗った車は、テールランプ上部がウインカーとなった後期型ですので、それほどの違和感はありませんでした。しかし、ファミリーカーでどうしてこんなに固い必要があるのか?と終始考えさせられる硬さでした。乗っていて、のべつ幕なし下から突き上げられる印象でした。
ロールも不自然なまでに抑えられ、乗っていて不安感はないものの、爪先立ちのコーナーリングをしているような印象でした。
ステアリング
初期型は違和感があったそうですが、乗った車は電動パワーステアリングらしかったものの、違和感はありませんでした。ステアリングを切り込んでいっても舵の効きが逃げず、最後までコントロール可能な印象でした。
これには上記サスペンションも手伝っていることでしょう。ホンダ車の操縦性の高さを思い知らされました。FFのタイプRを出すメーカーだけのことはあります。
ブレーキ
印象に残っていません。可もなく不可もなかったのでしょう。
ボデー
固いサスペンションに対し、ボデーが負けています。突起や凹部にタイヤを落とした時などに、ボデーが「ミシッ」とひずみます。ボデーを負かしてでもサスペンションを固める思想には賛成できません。
実用車としての室内設定は絶妙で、コンパクトワゴンはファミリーカーとして適当であることを思い知らされました。前述の通り、マツダのデミオが切り開いたジャンルですが、トンビが油揚げをさらうがごとく、ホンダが奪ってしまった感じです。デミオは2002年フルモデルチェンジをしましたが、レビューの焼き直しなら負けても仕方がありません。
反面、内装の作りという点では安っぽく、持つ喜びを感じさせない、ジャージーと固いプラスチックでできた内装でした。
まとめ
フィットは二代目となっていますが、初代の頃から「ファミリーカーとして適当」な内容でした。結果として自社のシビックを廃止に追いやってしまったフィットですが、車として便利でよく仕上がっていて、エンジンは気持ちよくないものの必要にして十分でしたので、売れないわけがありません。当時としては、非常に進められる車でした。
が、フィットは二代目に移行し、道具としての完成度はさらに高くなっています。しかし時代はまた変化し、「いかにも道具らしい」車はやや古いコンセプトになりつつあります。ホンダとしてもそこに気づいており、二代目フィットのマイナーチェンジで「RSのプレミアムハッチバック化」「ハイブリッドやシャトルの追加」で、商品性を強化してきています。が、これはまたフィットの初代の否定でもあるわけでして、ヴィッツ同様、今後の動向が気になります。
そんなわけで、今や旧型となったフィットは、「とにかく足車が欲しい人」や、「1.5T(こんにちのRSの元祖)が欲しい」人以外には、あまりお勧めできません。街で初代フィットを見かけなくなってきているのも、「あるトラブル」が原因であるほか、「なんだか流行遅れっぽいね」と、ユーザーに思わせているからかもしれません。
この辺が車作りの難しいところで、実用一辺倒でも良くなければ、流行に乗りすぎても難しい、という、まさに「洋服づくり」と同じといわれるゆえんです。
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試乗 | クルマ
Posted at
2011/12/11 00:30:47
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