この日の作業は思いの外時間がかかりそうだとのことなので、お店では代車を貸してくださいました。お店の人は「古い車ですみません」と言っていましたが、なんのなんの、私の車を考えれば今の車の、「ファミリア ショートワゴン」です。
ファミリアショートワゴンについて
この当時、今のように「5ドアハッチバック」は、不人気ボデーの代表格からまだまだ脱却できていない状態でした。しかも、1990年代前半からのステーションワゴンブームに支えられ、やや全長が長い5ドアハッチバックを、「ショートワゴン」と名乗って販売しました。ショートワゴンというからには「(ロング)ワゴン」もあり、日産のウイングロードを「ファミリアワゴン」と称して販売していました。
この「ファミリアショートワゴン」は、カローラフィールダー、カローラワゴン、ウイングロードなどと比較し、なかなかの健闘をしていました。当時、「間違いだらけのクルマ選び」誌により、「マツダ車は安物の駄車」と刷り込まれていた私は、乗らずにこの車をダメな車と決めてしまっていました。そのショートワゴンは、以後の5ドア車が許容された世の中になって、「アクセラハッチバック」となり、5ドア車へ移行しました。
エンジン
BJ5P(セダン)、BJ5W(ショートワゴン)とも、1500ccエンジンには固定バルブタイミングのZL-DDE 110馬力と、吸気側連続可変バルブタイミングのZL-VE 130馬力の二種類がラインナップされていました。前者は標準グレードに、後者はやや走り向けのグレードに搭載されました。
出力は当時のエンジンとしては出ている方で、ZL-DEは他社の可変バルブタイミングエンジンと等しく、ZL-VEはホンダの1500cc SOHC-VTECエンジンにも匹敵する出力を発揮しています。
これはあくまでも最高出力のお話で、最高出力に至るまでの状態はというと、やはり低回転域のトルクは若干頼りなく感じます。アクセル全開での走行もほんの少しだけ試したのですが、添加系統ないしはエアフローメーターに故障があったのか、4500回転を超えるとエンジンの回転の上がり方が極端に鈍ってしまいました。
その故障?回転域に至るまでの回転の上がり方はスムーズで、気持ち良いです。スポーツエンジンではありませんが、適度な出力で運転士が使いきれるだけのパワーでした。しかも、エンジン回転が「トヨタのA型エンジン(4A-GEUを含む)」とよく似ています。カラカラといった軽めの音ながら、エンジンの回転を上げると、その音が均整がとれた状態で「ウイーン」と唸るのですから、回転を上げる楽しみに満ちています。もともと3A-Uや4A-GEUのエンジン音は好きなので、加速の度にニンマリしてしまうほどでした。
ただし、アクセルペダルから足を離した時のエンジン回転の落ちが鈍く、MTでは運転しづらいのではないか、とも感じました。
また、吸気ダクトホースは既に亀裂が発生していたようで、ビニールテープで補修してありました。
マフラーから発生する音も、「ムワーン」と、4A-GEU当時の音に近い音が発生します。そうそう、
トヨタ ラクティス 1NR-FE搭載車も、この音質でした。
しかし、現代のエンジンとしては明らかに低速の性能が低く、これでは燃費が悪いだろうなあ、という程度の走りでした。燃費を取るか気持ちよさを取るか、難しい選択です。
トランスミッション
スリップロックアップ、ホールドモード付き電子制御4速ATを採用しています。変速制御は、日産のものとは全く異なります。まず、1速で加速をすると、それほどアクセルペダルを踏み込んでいなくても2000回転を超えてから2速へシフトアップします。大きくアクセルを踏んでいないと1500回転でシフトアップしようとする日産のものとは、全く異なります。少しでもアクセルペダルを踏むと、3000回転でシフトアップです。
これにより、標準的な出力のエンジンながら、実に活発に走ることができます。AT車、CVT車では、エンジンを生かすも生かさないもトランスミッション次第であることがわかります。
「ダイレクト感」という点ですが、これはスカイアクティブドライブと比較するのはとても可哀想で、デミオ用4速ATにも劣っています。日産のものと比べても、トルクコンバーターのスリップが多いように感じます。確かに、このATが基準だとすると、スカイアクティブドライブは大幅な進化です。しかし、1速から2速へシフトアップする回転数などの考え方は、この頃とスカイアクティブとで全く異なります。この宗旨替えは、どうしたものでしょうか?
サスペンション
この車のサスペンションは、フロントはストラット、リヤはパラレルリンク式ストラットと、当時の標準的なものでです。そして何と、フロントサスペンションメンバーがパイプ材を曲げて出来ています。他社が丈夫なサスペンションメンバーを採用したり、これのひとつ前のファミリアでは、いわゆる「ロワアームバー」を標準で付けていたり等、どう考えてもコストダウンとしか思えませんでした。
しかし、突起乗り越え時などのときに、頼りない感じはほとんどありません。もっとステアリングに不快な振動が伝わったり、車体に振動が伝わったりするかと思っていたのですが、そんなことは全くありません。ロワアームなしのブルーバードシルフィより、ほんの少し劣るかほとんど同じ程度です。
サスペンション自体は、8万kmも乗っている車なので、ショックアブソーバーが完全に劣化し、乗り心地は悪化していました。サスペンションのスプリングが硬めに出来ているのか、コーナーでのロールが少なく、快適にコーナーリング出来ます。普及グレードながら、なかなか楽しい操縦性を得ています。後の「ZOOM-ZOOM第一世代」と比べるとダルですが、「同第二世代」よりはシャープな感じです。ZOOM-ZOOMの前から、マツダは操縦性を重視していたことがわかります。

前輪

後輪
リヤサスペンションが独立式である効果は意外にあり、突起乗り越え時に、車体が左右にゆすられる感じがありません。最近はやりの「トーションビーム」式は、ビーム(梁)がしなやかにねじれて独立懸架に近い性能があるとはいえ、やはり別の車輪の影響したりアライメントが変化したりしているのでしょうね。流行から外れたサスペンションながら、ポテンシャルは高いのではないかと思います。
ブレーキ
これは全くダメです。ペダルはスポンジーな感じで、踏力による制動力調整が困難です。首を振らせずに停車できるようになるまで、かなりの苦労がありました。これに比べれば、今のマツダ車のブレーキはかなり剛性感がある、と言えます。
ステアリング
シャープで遊びも適度で、気持ちよく操作できるステアリングです。スポーティーな感じすらします。
ボデー
視界は良好で、斜め後方の見晴らしも良いです。着座位置はかなり低く、座面の前後方向もカッ結構眺めに作られています。この運転姿勢がスポーティーなフィーリングをもたらしているのかもしれません。ブルーバードシルフィと比べると、5cmは低いような印象です。
スタイルは好みですが、荷物室の容積はワゴンではなく、ハッチバック程度です。この点からも「セダンはフォーマルに、ワゴンはカジュアルに」と、現代へと続くメーカーの作戦が読み取れます。
内装は寂しい限りです。営業車然とした灰色の色使いが外装の赤と合わず、デザインも1990年代後半の感じです。しかも、トヨタや日産の車と比べると、明らかに安く作っているなあ、という殿下各部に見えてしまいます。この辺は、当時のマツダの経営状態を表しています。
まとめ
この車も登録から11年が経過し、中古車としても過去のものになっていると思います。しかし、乗ってみるとトヨタ車でも日産車でも得られない、独特な乗り味が実現されていることに気づきます。このスポーティーで軽快な感じは、他社の車では得られません。エンジンも気持ち良いですよ!
カローラワゴンと比べれば間違いなくこちらを、フィールダーと比較しても良い勝負になると思います。
内装が良くないのはこの頃までのマツダ車の欠点で、次のアクセラから大幅に近代化され、さらにCX5では他社とほぼ同等かそれ以上にもなってきています。
車の性能や機能は、必ずしも評論本と一致しません。本だけで予選をするのではなく、必ず試乗して決めることが必要であると、この車は改めて私に教えてくれました。
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旧型車 | クルマ
Posted at
2012/05/14 01:02:15