今期のドラマはつまらないですよね~。昨年秋期の作品に傑作が多かったのが、まるで夢のようです。もともと、夏期はテレビの視聴率が低くなりますのでどこの局でも力を抜くのですが、年度始めの春期にそうしているとは思えません。
もとより「希望にあふれる」時期であるため、暗く濃厚で味わい深い作品は期待できないのですが、作品が二本も打ち切られるというのは異常事態です。
先日打ち切りが報じられた「家族のうた」は、確か第一話は見ました。そもそも
オダギリジョーさんが出ている時点でかなりマイナスの期待はしていました。
言わずもがな、「落ちぶれた歌手の周囲の事情=芸能界のいろいろなこと」を描くだけで、一部の人しか理解し得ない世界観でした。それに、「最後は格好よく芸能界に復帰する役」を演じたいのだろうなあ、という雰囲気丸出しで、視聴者はおいてけぼりでした。これじゃあ、打ち切りは当然です。
さて、昨日打ち切りが報じられた「クレオパトラな女たち」について書きます。
舞台は美容整形外科で、ここに佐藤隆太男が勤め始めるところから話が始まります。この病院には、医院長、そしてヒロインたる稲森いずみ女、それから主役なのか脇役なのか曖昧な北乃きい女、女優として売り出し中の、結構かわいい受付係役の女性二人(杉本有美さんという目パッチリの方と、小篠恵奈さんという可憐な方)、あとは脇を固める方々で構成されています。
それがそれが、全く主題不明なのです。病院なので患者は来ます。外見から心を痛めた女性、豊胸手術で乳癌が見つかった女性などなどです。舞台設定から、
「患者と医師の心の交錯」
「患者の見た目を治すだけでなく、心の支えにもなる医師」
「時には患者の生活を乱してしまい、医師としての仕事と個人の考えの間に挟まれたり、それを医院長が諭したり」
などと、心情ものドラマだと思ったら、、、。
もとより日本テレビ系列のこの時間帯の作品は、「うちでもフジテレビのような恋愛ものを作りなさい。わかりましたできました」コンセプトで作られています。元祖は「
CAとお呼びっ」でした。先輩格になった観月ありさと、フレッシュな香里奈が魅力的ではありました。フジテレビの恋愛ものとはいっても、それは古い古い「君の瞳をタイホする」から「キモチいい恋したい」位までの作品群のそれですよ。すなわち、仕事はほとんどせず、アフターファイブと土日を描くドラマということです。
そんなこともあって、脚本の大石静氏は、
「この所、ディープなラブストーリーが続いていたので、今回はポップなコメディーに挑戦します。
最先端技術を誇る美容形成外科クリニックを舞台に、様々な世代の医師や患者のあらゆる欲望、葛藤、逡巡をスピード感あふれるタッチで描き、美しさとは何か、老いへの怖れとは何か、QOLとは何か、という深淵なるテーマにも迫りたいと思っています。」
と言っています。すなわち、最初から味わい深い作品を作る気はなかった、ということです。何話か見ましたが、受付の女性は顔を売り、北乃きいは芦名星とともに未だ顔を売り、医院長と佐藤隆太等は結局なんだかいるだけ、患者も来ているだけ、の、全く無内容ドラマになってしまっていました。
そうそう、二週間ほど前は「稲森いずみが泥酔して、佐藤隆太と急速接近?」等という展開でしたっけかね?全く患者不在です。
あまりにもテーマ不在であるため、この脚本家の過去の作品を調べました。そうしたら1994年に東幹久ががん患者を演じて話題になった「私の運命」がこの方のピーク?
その後は、主婦のドタバタコメディ「アフリカの夜」、
藤原紀香の演技が色々言われた「あなたの人生お運びします」、
蒼井優のが奇妙な主役を演じる「おせん」、
藤原紀香にセリフがない、雉も鳴かずば撃たれまいと言われた「ギネ」、
最終回が放り出された「蜜の味」
などと、私が問題を指摘した作品ばかり書いています。もしかして、脚本家さんに一番の問題があったのではないでしょうか?最近の脚本家は、主題を忘れ、ストーリーの基本を無視し、雑多に色々な情景を描く、まるで「パワーポイントの資料を見せられているかのような」ストーリーを描きます。それでていて、「このチームはまとまりが良く」等というコメントが出てしまうのですから、スタッフの人たちもおめでたいですよね。誰か一人くらいは「この作品、面白いのでしょうか?」と、疑問を唱えなかったのでしょうかね?
科学をはじめとした技術は、過去の技術を基礎にして進化をするものです。ところが、脚本の世界について言えば上原正三や高久進、長坂秀佳、峯尾基三や小川英が活躍していた時期と比べて、低下傾向にあります。1987年に、これらの作品は「古い」と、断絶してしまったのが一番の原因なのではないかと思います。脚本家さん、基礎を無視して応用はないよ。
夏期は無理としても、秋期には昨年のように「日本に日本のドラマあり」と、佳作を見せてくれるのでしょうか??
最後に、過去に私のドラマ評価の軸足について書いたブログを
リンクするとともに、傑作を紹介いたします。
無言劇
セリフはありませんが、お話づくりの基本が詰まっています。これは、脚本家でない人が脚本を書いたんですよ。プロの脚本家さん、猛省してください。
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Posted at
2012/05/25 00:37:33