
1989年の、「新車情報」の夏終わりの特集でしたでしょうか?後に「新くるま情報」と読む回が放送されました。次々に発売される高性能車、高価格車について、「三本和彦」、「徳大寺有恒」、「鈴木五郎」各氏が登場し、それぞれテーマに従って思い思いのことを語る回でした。
その回の中、当時増加傾向にあった交通事故死者に対して語る場面があり、
「日本国内では、交通事故は誰も調査していない。」
「警察は、刑事事件になるかどうかを調べて、ならないなら何もしないんでしょ?」
「損保会社は調べているんだってね?」
「調べていないですよ。彼らは、保険に関するところだけです。」
「あれ?調べているって言っていましたよ?」
などという会話は繰り広げられました。
当時、「これじゃあ、交通事故は起こりっぱなしじゃないか!」と、驚いたものです。
この他、三本和彦氏は著書の中で、「交通事故死者の統計は、24時間以内に死亡したものの統計だ。統計に現れない死者はたくさんいる。」
と、糾弾していました。
そしてそれから15年、先日スイカの苗を買った場所ではパトカーの展示が行われており、近くには警察官の方がいたので聞いてみました。すると、
「我々の努力というよりは、医学の進歩で交通事故死者は減りましたね。統計も24時間でとっていますが、24時間以内で亡くならない方はほとんど助かっています。」
との言葉を得ました。
となると、交通事故原因の調査の方は、放り投げられたままできていることが明らかになりました。警察は刑事事件としての調査しかしないし、損保会社は個人情報の問題に相当するので事故を公開することはないし、で、事故の傾向というのは結局「自分かその周りで起こったこと」しかわかりません。ここでは、報道された「千野志麻アナウンサーが起こした死亡事故」を例にとり、事故傾向を探ってみたいと思います。
なお、千野志麻アナウンサー(以下、加害者)は以前フジテレビに勤務しており、「チノパン」なる愛称で呼ばれていました。私はフジテレビのニュースを見ないので、現役当時のことは知りません。女子アナタレント化第二期の方のようです。
事故の状況
事故現場は、ホテルの駐車場です。ごくごく一般的な駐車場で、都市部の駐車場よりはかなり通路に余裕があります。ホテルの駐車場は、夕方と朝に出入りが集中し、昼間は空っぽ、夜は車のみでいっぱい、という傾向にあります。
加害者は、大型SUVに夫と子供を乗せ、右に二回90度曲がって、直進通路に差し掛かったところで被害者を轢いています。時間は夜で加害者はホテルから自宅へ帰ろうとしていた模様です。すでに日は落ちていた時間のようです。被害者は黒っぽい服を着ていたそうで、見えづらかったのは事実のようです。
加害者は子供に気を取られていたようで、通路を横断していた被害者に気づかず、はねるのではなく「轢き」、さらに体に乗り上げたところで止まったそうです。大型SUVが体に乗ったのでは、それはもう体には大きな重量が乗り、被害者は死亡してしまいました。
分析
この件に限らず、ここ数年駐車場の通路でアクセルを踏んで立ち上がる馬鹿者が多いように感じます。通路の始まりの部分で、「ドゥルルル」と、トルコンAT車でアクセルを操作し、強く加速している音が聞こえます。その多くは、統計を取ったわけではありませんがV6エンジン車が多いような感じがします。「どんな馬鹿だ?」と運転士を見ますと、30-40歳代の女性が多く、しかもこちらを見ておらずに「まっすぐ前だけを」見ているような気がします。もっとも、私が男性だから女性の方が印象に残っているのかもしれませんが。
駐車場には速度制限はありませんが、だからといって時速200kmで走って良いということではなく、「徐行」して走行するのが常識でした。徐行とは、すぐに安全に停車出来る速度です。
私の場合は、ブルーバードシルフィではクリープ現象のみで、コロナの場合では、1速でアクセルペダルは踏まずにアイドリングのままで走行します。ところが、通路で加速する人は明らかにアクセルペダルを大きく踏み、「ここはサーキットのヘアピンコーナーの立ち上がりか?」と思わせるほどです。
また、最近わかってきたことなのですが、「様々な状況」が同時に起こった際に、「何もしない」か「一番優先しなくて良いことを優先している」人が意外に多いようです。
大学時代の同じ部の人に「Y君」という人がいたのですが、彼の車に計5人が乗り、部活移動前の食事を済ませ、いざ発車する段になった際のことです。その日は雨で時間は夕暮れ、道は片側2車線で、車は路上駐車をしていました。
本来なら、ワイパーを作動させ、ヘッドライトを点灯させ、右斜め後方の安全を目視で確認をしてから方向指示灯を作動させ、もう一度目視で安全確認をして発車するところです。
ところが彼は、周りから前述のことを急かされると、「すべてのことをせずに発車だけさせた」のです。これには皆驚き、笑う者、怒る者、皆、彼を責めるのでした。
彼のことはこのくらいにし、ファミリーのドライバー、特に子供連れの人は、何よりも子供を優先してしまう傾向にあるようです。子供がお腹がすいただとか、アニメのDVDを見たいだとかいうと、運転や状況確認をさておいて子供の相手をしてしまうのです。お腹がすいたといっても餓死するほどではないでしょうし、アニメなんか見なくったって、死にはしません。なのに子供が優先してしまう、「優先事項の選択」が誤る傾向にある人です。
家族連ればかりを責める書き方になってしまいましたが、男性も同じです。自身の状況を世情を加味して俯瞰できない方がいます。
再び加害者の話に戻すと、何よりも自車の中の状況が優先する「車内主義」、くわえて加害者はやや混乱しやすい性格であったことが推察されます。すなわち、
「子供が「早く○○!」と要求して、それに対応していた結果、被害者を轢いた上に乗り上げてようやく気付いた、という状況になった」
か、
「いつもの「コーナー立ち上がり癖」を実施し、まっすぐ前しか見ていなかったので、すぐ前にいた被害者を轢いて乗り上げた」
ということです。
だいたい、SUV車なら「顔が大きい」ために「はねる」が普通で、「轢く」の時点でかなり状況確認か運転技能に欠落があり、「乗り上げ」では、もはや運転士失格、と言えます。
以前は、「車の中」というのは「家の外」であり、身だしなみに注意を払って出かけたものです。あるいは、交通事故で死んだ場合に汚い格好をしていたら恥ずかしい、という背景もあったのかもしれません。しかし、居間とは違う緊張感漂う場であったものです。
1996年頃の「間違いだらけのクルマ選び」にて、徳大寺有恒氏は「高速道路のサービスエリアで、ミニバン(当時はオデッセイやラルゴ)の運転席からジャージにサンダルの男性が降りてきて云々」という意見を書いていますが、この頃から車の居間化が始まったような気がします。
車に乗ったら、たとえ身内が危篤であっても運転を優先する、という考えが見直されても良い時期なのではないでしょうか?「安全運転のためなら死んでも良い」、そんな心構えが求められているように思います。
参照して欲しい記事
車にはねられたら「受身」の準備だ!
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Posted at
2014/05/18 00:00:46