
今でこそデジタル彩色などの技術の向上が見られるアニメーションですが、昭和40年代はまったく人海戦術任せだったそうです。この理由により、製作が間に合わない回に備えてストーリーとは無関係な回を製作しておき、万一の時に備えていたそうです。
また、マンガ原作がある作品のアニメ化では、原作の連載にアニメが追いついてしまい、アニメオリジナルの回を設けて時間調整をすることも多々ありました。原作を乱さず、脚本家(当然、そのアニメの専門家ではない)でも書ける内容となると、普遍的な内容になるのでした。
今回紹介する「アタックNo1」の「革ジャンパーのマヤ」編は、4回にわたって主人公が旅行中に出会った出来事を描いています。
ストーリー概略
第一話相当
バレーボールの大会に優勝した主人公こずえが所属する富士見高校バレー部は、久しぶりにオフの時間を得ることが出来た。監督の計らいにより、練習などをせずに、部員だけで旅行に出かけられることになった。
旅行は奈良であった。部員の一人である石松が奈良公園で鹿と戯れていると、暴走族のリーダー「マヤ」が、石を投げてきた。マヤは偉そうにしている者に戦いを挑み、勝つことを目的に生きている女であった。マヤは言う。「鹿は餌が欲しいばかりに人間に媚を売る「角の生えたゴマすり」」。
その後、旅行中のバレー部員に対して「バイクを壊した」と因縁を付けるものの、主人公たちはまるで鼻にかけないのであった。それでも戦いを挑もうとするマヤであった。
第二話相当
主人公たちは、平和に旅行を続けていた。しかし、まだ気持ちの整理がつかない石松は、1対1で戦おうというマヤら「マイティ6」の挑発に乗り、単独行動に出てしまう。そこで怪我をしてしまう石松ともう一人の部員。
これ以上部員に怪我をさせてはならないと思ったこずえは、マイティ6のバレーボールの試合を受けることにする。
第三話相当
主人公たちとマイティ6は、オートバイ製造工場のテストコースで試合をすることになった。夜だったので、マイティ6たちのバイクのヘッドライトで場内を照らしての試合であった。
高校生といえど、試合を勝ち抜いてきた富士見高校バレー部に対して、いわば異種格闘技でもあるマイティ6は、当初有利に戦うもののエネルギーが切れてしまう。
ところが試合終了間際、コートの隅に飛んでいったボールを打つためにこずえは走っていくが、バイクにぶつかって怪我をしてしまう。
見事な戦いぶりに、バレー部に敬意を表するマイティ6、マヤはこずえに自分がしていたマフラーを渡し、怪我の応急手当をするのであった。
第四話相当
マイティ6との戦いを終えた部員は、気分を入れ替えて山登りをするのであった。その中で体調不良を感じるこずえ、昨夜の怪我が原因であった。
頂上に登ったものの、帰り道で天候が急変、嵐になった。しかもこずえの容態が悪化し、歩けなくなってしまう。通りがかりの老人に病院を尋ねると、医学部の山小屋が近くにあるという。そこへ避難するのであった。
登板の医師がこずえを診察すると、破傷風であるという。患部を切断するか、血清を打たねば、命が危ないという。しかも嵐がひどく、電話線も道も寸断された。そんな危機的状況の中、たまたま近く鈴鹿サーキット帰りのマイティ6が通りがかる。こずえの状況を聞き、大阪まで血清を取りに行くという。時間制限は、6時間だ。
嵐の中、道なき道を通りながら大阪へ到着するマイティ6.。時間は30分遅延であった。帰り道を急ぐマイティ6.。パトカー振り切り、悪路や倒木に落車、そして落雷と、メンバーが倒れてしまう。そしてマヤ自身も崩れた岩にぶつかり、倒れてしまう。しかし、自分が帰らねば、こずえはバレーができなくなってしまう。自分のせいで怪我をさせたこずえを見殺しにはできない。再びバイクを起こして山小屋へ向かうのであった。
ギリギリのところで山小屋へ到着したマヤ。こずえの命を救って立ち去るのであった。
感想
しかしまあ、バレーボールとの関係が非常に薄いです。脚本家はバレーの素人ですし、この後には別のバレー試合シリーズが待っていますので、登場人物に変化も加えられない、そんな中で作られたシリーズになっています。
私はバレーボールには全く興味がなかったのですが、アタックNo1は欠かさず見ていました。そんな中で、この4話の印象は非常に強くなっています。それはおそらく、このシリーズが「バレーボール部員だけで世の中は成り立っていない」という観点にあるからではないか、と思いのです。
ストーリー自体も、異種格闘技の面白さと、第四話相当の「走れメロス」のような展開、そして時間制限付きのスピーディーな展開と、見どころ満載です。
この後、テレビでは「キャプテン翼」などの、世界的にも有名になったアニメが放送されます。私は、この回などの記憶があったために非常に楽しみにしていたのですが、数回で見るのをやめてしまいました。主人公も周囲の人物もサッカーだけで生きており、物語が横に広がっていきません。この違いが「スポーツを題材にしたアニメ」と「スポーツのアニメ」の大きな違いではないか、と思うのです。ひいては、最近のドラマの面白くなさにも、どこか通じる面を感じるのです。
どうやら、動画配信サイトで見られるようです。
79話(ここの第一話相当)
http://www.dmm.com/digital/anime/-/detail/=/cid=5118attackno1079/
80話(同第二話相当)
http://www.dmm.com/digital/anime/-/detail/=/cid=5118attackno1080/
81話(同第三話相当)
http://www.dmm.com/digital/anime/-/detail/=/cid=5118attackno1081/
82話(同第四話相当)
http://www.dmm.com/digital/anime/-/detail/=/cid=5118attackno1082/
全く個人的な感想ですが、この中のマヤが、格好良いんですよ!!好きになってしまいそうです!少々背景描写が甘いので、なぜここまで戦いを挑もうとしたのか、という動機がわからないのが残念です。しかし、当初は闘士むき出しだったのが、試合に敗れて心を入れ替えて爽やかに立ち去ります。そして、自分の責任を感じて命をかけて救う、という描写が秀逸です。
ドラマチックな脚本の基本が描かれているように思います。最近、フジテレビのヤングシナリオ大賞のコメントで、「斬新な脚本がない」というものがありました。しかし、フジテレビドラマの凋落は、この基本を忘れたことにあるのではないか、と思うのです。
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Posted at
2014/12/13 18:36:33