スズキのスイフトは、このクラスの小型車としては力が入ったモデルであり、他社の「安いが一番」の小型車とは仕上がりが違います。その一方で、耐久性に少々難があるのも確かで、軽自動車メーカーの小型車は、比較的早いうちに街から姿を消してしまう傾向にあります。
今モデルのスイフトは、高い評価を受けた前モデルをさらに練ったものになっています。柔らかくて上質な乗り心地は、2000cc級のセダンにも匹敵するもので、高級感があふれていました。その一方で、路面の印象を伝えないパワーステアリングに難が有り、安楽さを誤って解釈しているような印象を感じさせました。
今回乗ったマイナーチェンジ後のモデル(以下、
前モデルと表記)では、1気筒当たり2本のインジェクターを備えた「デュアルジェット」エンジンに換装されました。この狙いは、直噴ガソリンエンジンに充填効率を近づける、というものです。今やエンジンは4バルブが基本、すなわち、吸気バルブは2本になっています。吸気通路が2本に分かれていながらインジェクターは1本、燃料の分散性は吸気の流れ次第だったのです。これを1本の通路当たりインジェクターを1本で担い、吸気工程中にガソリン噴射をしても分散よく、さらに吸気冷却による充填効率向上を狙ったものです。
すでに日産のHR15DEでも採用済みの方式ですが、これは宣伝の勝利です。直噴ガソリンエンジンは、インジェクター、インジェクター駆動回路、高圧燃料ポンプに電磁スピル弁追加とコストがかさむので、価格上昇を抑えつつ、効率を良くしています。
エンジン
前述の通り、デュアルジェット方式を採用しています。旧型に対して、中低速トルクがやや上昇したような印象があります。旧型モデルが「アクセルペダルを踏み続けているとパワーが出てくる」のに対し、この車では「アクセルペダルを踏むと反応を開始する」ところにまで改善されています。
とはいえ決して出力に余裕があるとまでは言えない1200ccエンジンゆえ、時速100kmまではなんとか走れる、というもので、それ以上の領域や登坂路、あるいは、追い抜きといった場面では、びっくりするほど余裕がありません。高速道路では、「ああ、やっぱりもう少しエンジンに余裕がある車を買っていればよかったな」と思わされることでしょう。主に郊外の一般路や街中で活発さを味わうエンジンであるといえます。
トランスミッション
マイナーチェンジ前モデル同様の、副変速機機構を備えたCVTが採用されています。以前のような、「勝手にあれこれ変速がいじられている」ような印象は少なくなりましたが、それでも出力が不足しているエンジンを補おうとしている様子が伺えます。CVTはエンジン出力を効率よく取り出す機能に優れているはずなのですが、その能力を活かそうとすると、運転していて非常に気分が宜しくなくなります。これなら普通の段式ATやMTなどのように、「出力が不足していても、リニアな走行感が得られる」トランスミッションの方が楽に扱えます。
ステアリング
前モデルの、アシスト力が安定しないのか、ステアリング軸がねじれているかのような操作感のパワーステアリングは、ごく一般的な操作感のものに改められたようです。操作をしていて、気にならなくなりました。
サスペンション
前モデルは、「縮みが柔らかく、伸びがやや硬い、路面接地感が高いサスペンション」だったのに対し、「動き出しが若干渋く、動き出すと柔らかく、伸びもそれほど硬くない」ごくごく平凡なコンパクトカー調のものになってしまいました。スズキ車の部品は、のべつ幕なし変更されているような話を聞きましたが、これもその一環なのでhそうか?雑誌等で評価された点が、数ヵ月後にはコスト削減により、跡形もなくなくなっている、そんなことを危惧させるような変更でした。
ブレーキ
実はあまりよく覚えていないのですが、それほどしっかりとした踏み応えはなかったような記憶だけが残っています。
ボデー
内外装とも、前のモデルと違いは感じられません。内装は若干地味にされたような気がしますが、相対的に最近の他車が派手になったからかもしれません。とはいえ、デミオを除く同価格帯の車と比較すると、十二分な出来であると思います。
一方で外装ですが、横から見ると不自然なくらいフロントオーバーハングが長くなっています。また、かなり大きな車であることもわかります。スポーツ仕様をラインナップしていますが、意外にボデーはスポーツ向きではないのではないでしょうか??
まとめ
「デュアルジェット」とはなんとも幼稚な命名法ですが、理論的には効果がありそうな方式です。とはいえ、世界的に見ると採用している車種はごくわずかです。直噴ガソリンエンジンが、PM排出量が多いことが報じられており、効果がある一方で先行きが不透明になってきました。CO2削減のために、各メーカーともいろいろな手法を試みてくるでしょうが、今のところはほんの少しの効果しか感じられませんでした。
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試乗 | クルマ
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2014/12/20 16:49:22