
この日は、カー用品店と日産販売店に行き、その帰りにトヨタ販売店の前を通りました。最近の車のヘッドライトは複数のLED光源を持ち、特定光源を消灯させることで対向車や先行車の眩惑をするヘッドライトになりつつあります。
たまたま見たトヨタ ルーミーのヘッドライトも複数の光源でした。じっくり見ていると、営業の人が来店者を見送る場面になり、そのまま話しかける形になり、試乗に至ったのでした。
ミニミニバンの概況
ミニバンは当初大型のモデルで登場しましたが、1996年頃から5ナンバーサイズ化、さらに乗用車ベースから非ワンボックスの箱型へと移行してまいりました。さらに三列シートは使わずに二列のまま室内高が欲しい人へ向けて、今回のルーミーのような車が登場してきました。また、軽自動車の同様の車(タント、スペーシアなど)では狭すぎたり走りの性能に余裕がない、という需要にも答えています。
しかし、これらの市場には、トヨタ シエンタ、ポルテ、スペイド、日産 キューブがありました。が、サイズに合わせたオリジナルな車よりも、ノア・ヴォクシーの小型版を欲しがる傾向が見えてきたようです。スズキのソリオがワゴンR+から進化してただのソリオとなり、さらにフルモデルチェンジをして旧型ソリオになった頃からはっきりしてきました。この車は、bBのフルモデルチェンジ版と位置づけられ、さらにソリオ対抗車種として設定されました。
エンジン

(写真は、1KR-VET)
既に10年間使用されている3気筒エンジンの、「1KR-FE」エンジンが搭載されております。なお、今回は試乗できませんでしたが、よりエンジン出力を望む方には、このエンジンを連続可変バルブタイミング化の上でターボチャージャーを装着した、新開発の「1KR-VET」が設定されています。
もとより振動が大きめで、加速時もノイズが大きめなエンジンです。遮音性能を改善し、後述するトランスミッションでも巧みに振動がひどくなる領域を避け、よく努力した結果が出ております。とはいえ3気筒であることに変わりはなく、少しでも加速をしようとすると、その度に3気筒の振動と排気音を聞かされることになります。
とはいえ、3気筒の利点もあります。各気筒の吸排気が干渉しないこと、摩擦を起こす面積がより祈祷数が多いエンジンと比較して小さいために、中低速時の出力損失が少ないこと、エンジン内部の表面積が小さいために、熱損失が少ないことです。そのために、3気筒の低排気量エンジンに重量が増した車体を、普通に走らせます。この時の余裕度は、4気筒エンジンでは1200ccに相当すると考えられます。
音や振動は、かつての
iQや
パッソ程の不満はなくなったものの、「短距離試乗なら我慢ができる」程度になっています。
トランスミッション
こちらも既に導入済みのCVTが採用されています。3気筒エンジンと組み合わせるに当たり、従来の制御を完全に放棄しています。従来は、アクセルペダルを操作するとエンジンの回転を先に上げる制御をしていました。変速後の回転域が、3気筒ならではの振動を起こす回転域であろうがなかろうが、そのような効率優先の制御です。
3気筒エンジンでは2000-3000回転程度で振動が顕著になるために、この回転域を避けています。アクセルペダルの踏み込みが浅く、運転士がさほど加速を望んでいない場合には変速比を低くせず、変速比を固定してスロットルバルブを開いて加速している模様です。一方、アクセルペダルの踏み込み量が大きかったり、急に踏み込んだ場合、さらに、変速後のエンジン回転数が4000回転を超える倍には、従来通りに変速比を下げてエンジン回転を上昇、加速しています。
この制御により、3気筒らしさは「エンジン音」に限定され、「プルプルとした振動」は、ほとんど感じられなくなっています。しかし、これは「感じさせなくさせている」だけです。変速制御が上記の規則を守るために、「アクセルペダルを少し踏んでもエンジンは無反応、変だと感じてさらにアクセルペダルを踏み込むと急にエンジン回転が上がって急加速」といった、滑らかな運転を阻害するような変速制御になってしまいます。気持ちよく、リニアに加速や運転が出来ない理由につながっています。
サスペンション
この種の車は、乗り心地の柔らかさを狙うとカーブでロールが深くなり、カーブでの安定性を狙うと直進時の乗り心地が悪化する、という二律背反性を持っています。そもそも全高が高すぎるという問題点があるからこその難しさです。
この車は、走行安定性を狙っている模様で、ショックアブソーバーの縮み側減衰力を固めています。カーブでの走行は確かめられませんでしたが、カーブでの乗り物酔いは比較的抑えられそうです。一方、一般路ではややコツコツといった突き上げを感じますが、それほど気になりません。ショックアブソーバーの初期馴染みが
ステアリング
路面の状況は、少し前のトヨタ車と比べるとだいぶまともになりました。多少手応えが有り、路面の状態はなんとなくわかります。
車体の形状と全高の都合で、あまり舵の効きが良いとかえって走行安定性が下がってしまうのですが、うまくバランスされています。適度にダルで、ステアリングをわずかに切った際の反応も緩やかです。微小舵角を受け付けないと運転をしていて不安を感じるものですが、ちょうど良い仕上がりです。
ブレーキ
これもまた一般路の試乗しか出来ませんでしたので、大きめにブレーキを踏むことは出来ませんでした。しかし、一般路でのブレーキ踏み応えは良好です。制動力の調整もペダルに込める力で僅かな減速度も調整出来ます。車の価格に似合わない仕上がりのブレーキで、これなら乗客を酔わせない減速が可能です。マツダ車やホンダ車のようなブレーキの印象です。
ボデー
基本となったトヨタ パッソと概ね同等の印象で、車体剛性はそれほど高くありません。特に前輪が突起に乗り上げた際には、若干ワナワナとした車体の変位を感じます。車体後部はそこまでの感じはなく、不満はありません。
内装の仕上がりは十分で、安価な車を買ったがっかり感はありません。
トヨタは内装の品質感を下げずに「良いと感じる」内装を身につけております。中でも中央に設置されるインフォメーションディスプレイがその感じを演出しております。
もっとも、最近は液晶モニターは安価になっているので、実際にはコストは上がっていないのでしょうね。
視界も良好で、曲がり角での巻き込み確認も容易です。ただし、二人乗車である場合のことで、功績に人を乗せた場合には若干悪化することでしょう。これもドアのベルトラインの上端が低いことの効果です。視界の良さは安全運転の基本であり、好感が持てます。
まとめ
トヨタは、他社で売れ行きが好調な車種が出ると、必ず装備を少し落として価格を下げ、市場を奪いにかかります。成功例が「ホンダ SM-Xと初代bB」、失敗例が「二代目bBと二代目日産 キューブ」です。エンジンの能力としては完全に劣り、既存の車を知っている人には不満が感じられることでしょう。トヨタは、「この種の車は家計を奥さん(専業主婦かパート)に握られている人が選ぶ」事を知っているのです。
しかし、自動車産業は日本の基幹産業です。無知な女性に家計を握らせると、日本の産業が衰退します。簡素な車が蔓延すると、国際協力を失い、自動車関連産業が失速、その他産業も失速します。
基本メカニズムを安価にし、良さそうに見える内装やインフォメーションディスプレイの装備など、まるで故徳大寺有恒氏が酷評した「ゴテゴテアクセサリー」と評していた頃のトヨタ車を思い出します。しかし、走りの性能は決して低くないことが、当時と今の違いです。
この車は、まあ、買っても悪くない車ですが、出来ることならやめた方が良い車です。3気筒エンジンとスムーズな運転を阻害するCVTがその理由で、「運転をしていて少しずつストレスが溜まる」ことになってしまっています。燃費や効率では3気筒エンジンに軍配が上がるのでしょうが、快適性を考えると4気筒以上です。
そのような理由で、この種の車を買って長く使いたい人やロングドライブにも行く人は、エンジン振動とCVTの変速制御が自身に合うか、試してから選んだほうが良いでしょう。もっとも、トヨタとしては
1NR-FKEエンジンをいつでも追加出来るようにはしていると思います。
参照して欲しい記事
トヨタ
スペイド
シエンタ(ガソリンエンジン)
iQ
パッソ
スズキ
ソリオ(ハイブリッド、後日リンク予定)
イグニス
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試乗 | クルマ
Posted at
2017/01/15 21:40:58