
この日は勉強会に参加するため、丸の内にに行きました。勉強会終了後、大きな本屋があったために、勉強の続きと考えて入りました。そこには珍しい本こそありませんでしたが、「モーターファンイラストレーテッド」も置いてあり、いろいろ読んでみました。面白い本です。
その中で、ちょっと気になる記事がありました。展開が始まった、スバルの「SGPシャシー」の設計をされた方の記事です。このSGPシャシーは、これまでの「SIシャシー」に対して、電動駆動への対応が可能になったり、剛性の向上が図られています。
昨今、どのメーカーもシャシーの一新が行われており、高張力鋼板や板厚を自在に変えたパネルなどを採用することを前提で、設計されています。合理化も行われ、同時に軽量化も図られています。
これまでも、自動車メーカーは何度も同じような施策をしております。1980年代前半にはFWDシャシーの構築、1990年代は剛性向上やハンドリング向上の流行を狙った改変、1990年代半ばの、衝突安全基準の確立による一新、1990年代末は、いわゆる「安全ボデー」による一心ないしは改変、2000年代初めは、車型が変わっても同じシャシーを伸縮して成立させられるようにするための改変などです。
その後、ミニバンの流行などから、ボデー剛性向上は売りにならないようで、カタログから文字が消えてしまいました。
剛性向上について、気になったことや言葉がいくつかあります。
まず、1996年の二代目レガシィ後期型に行われた剛性向上策です。当時は、フルモデルチェンジ並みのマイナーチェンジと言われたものです。この時の変更で、Bピラーにはいくつもの「パッチ」が当てられています。Bピラーの内側に、パイ生地のように同じような形状の当て板を溶接し、Bピラーの厚みを増すことと同じ効果を狙いました。「初めからその厚みで作れば」とは思いますが、鉄板メーカーから供給される板の厚みは決まっていますので、それ以上の厚さで製造するとなると、このような方法しかありません。また、それだけでは足らず、何と「中空丸棒」までもがBピラー内に溶接されています。
その効果もあって、二代目後期型レガシィや三代目レガシィは、「ボデー剛性が大幅に向上した」と、高い評価を得たのでした。
また、四代目レガシィは、さらに高張力鋼板を各部に採用しています。モデルライフ途中にも各部に補強材を採用し、剛性を向上させる努力をしています。また、私を含む一部には「3ナンバー化」を惜しむ声がありましたが、幅が広いエンジンをより低い位置に搭載するとともに、フロントサイドメンバー(エンジンルーム部縦方向の骨材)の太さを増し、エンジンルーム部の剛性を向上させています。
一方、メーカーが変わってマツダですが、二代目アテンザを発表したモーターショーで、メーカーの方がこのように言っていました。
「今まで補強というと、やたらと補強材を追加していました。ところが、後から解析してみると、全く補強につながっていないことがわかった部分があります。そういった無駄な補強を排除し、一から設計したので軽量化が進みました。」
その後、スカイアクティブシャシーが登場しました。歴代の担当者が次々補強、その担当者が異動したら、なぜそこに補強材を加えたのかわからなくなり、後の担当者が「まあ、いいか」と、そのまま受け継いだ歴史だったのでしょう。
「先輩の言うこと」は、話半分に聞くことが大切だな、と改めて感じました。
そしてこの日、SGPシャシーの設計者の文章を読んだのでした。その方は2002年入社だそうです。当時のことを、このように振り返っていました。
「私が入社した頃は、解析法もベンチマークも曖昧でした。それをコンピューターで設計することで適正化し、無駄のない補強が可能になりました。」
とのことです。
コンピューターの性能もソフトウェアの機能も進化しますので、当然のコメントです。2002年頃というと、四代目レガシィ発売直前の時期です。その前の三代目レガシィでは、カタログや「すべて本」では、以下のように書かれていました。
設計担当の桂田氏という方は、シャシー設計の渋谷氏をして、
「全面体に信頼している。渋谷が言うことは全て正しく、渋谷が「ここが不足している」というと、その子の改善を指示している。」
とのことでした。
渋谷氏は、ダートトライアルなどモータースポーツ活動もされており、徹底的に走り込んで新型レガシィ(三代目レガシィのこと)を鍛えた、とのことでした。
すなわち、「走り込んでは評価して改善し再度走りこむ」設計が、SGPシャシーを設計する以前の設計方法だったとのことです。走り込んでは補強していけば、補強は進むばかり。ある補強をした結果、前の補強が当初ほど効果がなくなった、ということはありそうです。結局、構造物の設計はコンピューターで行うことが理想的になったのですね。
とはいえ、トヨタ自慢のTNGAですら、モータースポーツに使うともう不足が出てきたとのこと、現在のメーカーのシャシーも、いずれは「再補強」の繰り返しが行われ、またある時に一から再構築されることでしょう。
ブログ一覧 |
新型車調査 | クルマ
Posted at
2017/08/14 22:56:47