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2018年03月06日

新幹線台車亀裂問題を考察する

新幹線台車亀裂問題を考察する  東海道・山陽新幹線の台車亀裂問題が、現場における加工に落ち着きましたね。この結果に対する朝日新聞の社説は、「ものづくり云々」「断面4mm以上の規定が周知されていなかった」と、学生小論文並みの着眼点で、むしろこちらの方にがっかりしてしまいました。

鉄道の台車に関する事故は、この事故の少し前にもありました。東武鉄道の東上線中板橋駅の上り線ポイント付近で発生した脱線事故です。台車に亀裂が発生して車輪のトータルトー角が発生、車輪が線路に乗り上げて脱線に至った事故です。

先に結果が判明した東武鉄道の方は、溶接組み立て式台車の内部補強板部に溶接出来ていない箇所があったことが原因だそうです。長年の運転の間、この部分に応力が集中して亀裂が発生、破断に至ったとのことです。

この車両は、1993年から1996年の間に製造された車両です。検査は一定期間ないしは走行距離ごとに実施され、台車も分解洗浄し、目視検査されて再塗装されています。検査での見落としも指摘されておりますが、亀裂が発生すると亀裂に応力が集中し、あっという間に破断に至りますから、検査責任を問うのは厳しすぎます。

この車両の先代車両の後期、1972年頃から台車の梁部分は一体鋳造から溶接組み立て式に変更されておりますが、溶接は人が行う作業だけに、ミスがつきものです。といっても鋳造も湯流れや酸化鉄の問題がありますので、完全ではありません。結局のところ、「検査に時間をかける」か、「乗っている人が危険に気づく」ことで最終的な安全を確保するしかありません。

 さて、本題の新幹線の件に移ります。

新幹線の台車も、溶接組立式になっています。前後の車輪を連結する梁の部分は外観は「ロ」の字形状です。「ロ」を組み立てることはできませんので、左右別々に製作し、中央を連続溶接して「ロ」の字断面に仕上げます。

映像を見ると、各「辺」の部分は真っ直ぐではなく、丸みを帯びています。完全な直方体ではありません。丸みを帯びさせることで、応力集中を抑制していると推察されます。

一方、車輪の上下動を吸収するサスペンションのコイルスプリング台座は、この梁の側方に溶接しています。点付溶接ではなく連続溶接のようですから、人が手作業で行っていると考えられます。

 報道によると、「このコイルスプリング台座を溶接する際にガタが発生するので、梁の下方が真っすぐになるように研削した」とのことです。そのため梁の肉厚が7mmから4mmに減ってしまいました。加工時に発生した傷も要因となり、路面からの衝撃に耐えられなくなった梁に亀裂が発生した、とのことです。ちょうど、台車の製造工程を紹介した動画ありましたので、ぜひご覧ください。



この記事を読む方の専門によって意見は異なると思いますが、あちこちの意見を総合しながら考えると、以下の点を挙げられるようです。(順不同)

1.「溶接しづらいから真っ直ぐにしよう」という、自分の工程しか考えない改善提案
 辺の部分が丸まっていると、地面に置くと母材の座りが悪くなり、作業性が悪化します。溶接工の方の気持ちは分かりますが、理由があって丸まっているのです。溶接しづらいのは溶接工程だけの問題です。「しづらい」は「出来ない」ではなく、出来ないことはないのですから、我慢して作業をしなければなりません。
 母校の入学案内に、当時のレーサーの一文が寄せられていました。「車のドアを閉める時にドアと車体が当たる場合、車体を削って済ますのは職人、どうして当たるようになったか考えるのがエンジニア、とありました。

2.「削ったら強度が落ちる」ことを想像できなかった問題
 機械の分野は多岐に渡っており、溶接と構造力学の分野は別です。溶接の専門家であっても溶接しているものは構造力学的な分野のものですから、構造力学も知らなければなりません。自分の分野以外にも、知見を広げなければなりません。

3.「目視点検」の簡略化
 その昔、オペルアストラは、日本の5ナンバーサイズ1700mmをたしか8mm超えており、これを検査官に指摘され、急遽3ナンバーになった歴史があります。
 
10年くらい前、「素人でもスイッチ一つで異常を検査できる仕組みはないか」などと、モノの使用過程における点検をいかに省くか、費用が安い労働者でも出来る仕事にできないか、論がなされた時期がありました。

「素人でも出来るようにならないか」、「スイッチ一つで自動点検」は、見落としを生むという結論ではないでしょうか。じっくり見ていれば、検査時に加工された台車とその他の台車の、形状の違いに違和感を持ったと考えられます。

4.乗客から煙の発生を訴えられた車掌や運転指令所の判断ミス
 この種の事故は昔からあり、車両交換判断をしなかった車掌や運転指令所の判断ミスを指摘する声もあります。その昔から、理由を説明されない運休や車両交換があったものですが、きっとこの種の事故もあったのでしょう。

第一、4mmでは破断に至った台車ですが、加工しない7mmであれば永久に亀裂は発生しなかった、とは言えません。亀裂の発生は、常につきまといます。それを定期検査で分かればよし、漏れは絶対にありますので、漏れた緊急事態の際には、運休に遠慮をしてはなりません。この種の判断は、みんなやりたがらないのですよね。

5.すぐに車掌の説得を諦めた乗客
 車掌さんは、運行系の職員であり、車両のプロではありません。タクシーやバスの運転師さんが、整備士や自動車設計者ではないのと一緒です。煙の発生を訴えて反応がにぶそうな場合、「この素人め!一体どこに目がついていやがる。」とどやす必要があると思います。とはいえ、やりすぎますと「お客さまご案内中です」と放送され、鉄道公安官室で楽しく?お話しタイムになってしまいますよ。

 時代の変化で製造工程が変わり、鋳造が廃れてしまったのは時代の流れです。しかし、工業品の使用過程のおける点検は、「素人でも出来るように」や「スイッチを押して青いランプが点灯したらOK」などと、簡略化した考え方は誤りだと思うのです。溶接作業員でも、構造力学や材料のことも教える、品質の維持は人づくりだと思うのでした。
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Posted at 2018/03/06 22:18:30

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この記事へのコメント

2018年3月6日 23:51
こんばんは、
さっきまでちょうど東洋経済の記事を読んでました。
設計と製造の乖離と言いますか、車両メーカー自身が設計してるのではなかったのですね。
設計は製造を知らず製造は設計を知らず、でしょうか。
同じ社内でも起きる話ですがまして別会社
単に図面を渡したら終わりだったのでしょうかね。
http://toyokeizai.net/articles/-/211007
コメントへの返答
2018年3月8日 23:42
こんばんは。
鉄道車両は、車体、台車、モーター、モーター制御器、ブレーキ、電装、それぞれ別のメーカーが担当しています。鉄道会社は、仕様の検討と決定をし、納入後のメンテナンスをしています。
運転中の問題はさておき、削って平にしてきれいに溶接するというのは、組立工や溶接、美観の点では当たっていますが、そもそも平らに削るというのは力学上はよくありません。「班長」は溶接ビードを均すくらいに思っていたのでしょうかね。力学を知らなかった加工者も、具体的な値や手順を伴わずに指示してしまった班長も、いわゆる伝達ミスです。具体的な指示をしない「コーチング」の悪い面が出てしまったと思います。
2018年3月7日 10:10
こんにちは。
古い言葉ですが「バカ除け」と言う言葉を思い出しました。溶接面が現場での手直しに頼らずに済むような精度を前工程での作り込みが出来なかったのか、それが出来ていれば削るためのグラインダも置かなくて済んだはず。過度に薄肉にならないように現場作業を徹底させると言う対策は、本当の「バカ除け」にはならないと思います。・・何かあると「現場が・・」と言い訳する最近の事例には少し違和感を感じています。
コメントへの返答
2018年3月8日 23:54
 こんばんは。
 トヨタの現場力とかいう本に、工程別作業完了制のような同じことが書かれていました。
それにしても、コの字鋼同士の溶接工程で、一体どれほどビードが盛り上がったのでしょうかね。
 今回の製造工程での件も、作業員と班長の伝達性に責任がまとめられてしまいましたね。鉄道車両は一台一台がワンオフのようなものですから、大量生産の自動車と違って昔ながらの方法が、製造工程にも改善活動にも残ってしまっていたようにも感じます。

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