
この日は、2018年初のロングドライブを実行しました。選んだ車は、以前から同行者の一人である会社の人が乗りたいと言っていた、初代マツダ ユーノスロードスターです。借りる前は1600ccエンジン車と思っていましたが、1800ccエンジン車でした。
走行する道は奥志賀林道方面を想定していましたが、路面事故によって通行止めであったため、ここを避ける道にしました。
ユーノスロードスターについて
ユーノスロードスターは、マツダの販売店の一つである、ユーノス系列の基幹車両として投入されました。この車は1989年夏に発売されました。自動車雑誌の騒ぎはものすごく、ロータスエランと比較したり、マツダはジャーナリスト対抗4時間耐久レースを富士スピードウェイで開催するなど、お祭り騒ぎでした。
車体こそ後輪駆動のオープンカーとして登場しましたが、エンジンはファミリアのものを、トランスミッションはボンゴ他後輪駆動車のものを流用していました。サスペンションや四輪マルチリンク式と凝った方式を採用し、シャープな運動性能と取り回しの良さから、当時「現代に蘇ったAE86」とも言われました。
デートカーともされた時期がありましたが、「髪型が乱れる」「日に焼ける」「周囲の人の目にさらされる」などから、当時はデートカーとしては失格の烙印を押されてしまいました。
以後、古き良きブリティッシュライトウェイトスポーツカーの再来と扱われ、グリーンの車体にタンの内装色のモデルなども追加されながら、1993年には排気量を1800ccにアップしました。変更当初は「エンジンの吹け上がりが鈍った」などと評価されましたが、エンジン制御系統の変更やフライホイールの軽量化などにより当初の吹け上がり具合が戻ったとされています。
モデル後半は景気後退期にありましたが、1998年には外装の変更を中心としたフルモデルチェンジが行われ、二代目モデルへと移行しました。
エンジン
BP-ZE(RS)型の、1800ccDOHC燃料噴射の自然吸気エンジンを搭載しています。当時のファミリアやアスティナにも搭載された普通のエンジンで、最高出力は135馬力/6500rpm、最大トルクは16.0kgf・m/4500rpmを発揮しています。当時のエンジンとしてはまずまずの性能で、中低速域の出力を犠牲にしていない特性です。
そのため、発車の操作は楽で、クラッチ操作に気を使わず、エンジンをストールさせることはほとんどありません。低回転域からでも高いギヤで十分に加速出来ますので、神経質なシフト操作は不要です。車重が軽いことも影響しているかもしれませんが、取り扱いの容易さは普通の乗用車のものです。この車を長く所有させる要素のひとつかもしれません。
最大トルク発生回転は4500回転ですが、より低回転寄りの特性に感じます。中回転程度から上の回転域では力強さが無くなり、高回転域での力強さは感じられません。上の回転域では「フン詰まり」の印象になり、エンジン回転数を上げて楽しむ爽快感は得られません。
エンジン音はある方に聞いた「マツダサウンド」そのもので、ややざらついた印象です。ザラザラ音は回転には比例せず、アクセルペダルを大きく踏んでエンジンに負荷をかけると高まります。そのため、機械音ではなく燃焼音であると推察されます。
以上のことより、スポーツカーのエンジンというよりは、乗用車用のエンジンがそのまま使用されていると考えると良いでしょう。
トランスミッション
マツダの後輪駆動車に採用されていたR5(?)型トランスミッションを採用しています。シフトレバー付近はロードスター用にチューニングされ、短いシフトレバーと遊びが少ないシフト/セレクト機構が実現されています。
今回の車両ではやや経年劣化があり、シフトレバーの遊びが感じられましたが、それでも操作が楽しくなるシフトレバーでした。いわゆる「無駄にシフトしたくなるトランスミッション」ですが、前述の通りエンジンは低回転域でも十分に出力を発揮しているために、シフトダウン操作を度々行わなくても、十分に走行可能です。
シフト位置はマツダ伝統のもので、ニュートラル位置でレバーが直立するものです。現在のマツダM/T車にも受け継がれるもので、企業の伝統を感じさせますが、私としてはニュートラル状態でややレバーが後傾していた方が操作しやすく感じます。
トランスミッションが縦置きである場合は、走行中には概ねギヤノイズが聞こえるものです。ところがこの車では、全くと言って良いほど聞こえませんでした。走行距離が伸びていることによるギヤの摩耗か、ギヤ噛み合いが良いためか理由は不明ですが、意外な結果でした。
ステアリング
シャープでクイック、遊びが少ないステアリングで、車両側もステアリング操作に敏感に反応します。正確な操舵が可能で、この反応性であれば、コーナーへの対応、道路状況の変化、車体姿勢の変化にも十分に対応が可能です。操縦系統が正確ですと運転が疲れず、何時間でも運転できます。
車体剛性は後述しますが、非常に低いです。後輪の追従性も良くないはずなのですが、操舵に対して適度に反応します。シャープなステアリングと低いボデー剛性である場合、後輪のヨーに対する安定度がなくなるため、非常に疲れるものです。しかし、高速道路の車線変更でも山道でも適度な応答性で後輪が追従します。
なお、シャープなステアリング操作感は
3代目デミオでも感じましたが、FWDの場合と比較して神経質さがありませんでした。
ブレーキ
特別なところはないブレーキでしたが、現代にも続く、サーボアシストが少なめでやや硬い、正確なペダルフィーリングのブレーキでした。正確なブレーキは、減速時や停車時に自信を持って操作に臨めるために、疲れを感じなくなるものです。
サスペンション
改造がなされた車のようで、かなり硬いものに交換されていました。ロール角が小さく、ロールスピードも遅いために、車両も乗員も姿勢変化が少なくなっています。視点の移動が小さいことは、疲れの予防につながることは既に判明しています。
最近のミニバンは、ゴツゴツ感を取り除くことばかりを優先したサスペンションにしがちですが、姿勢変化も視点の変化も少ないことは、疲労軽減のために重要な点だと思います。
サスペンションはダブルウイッシュボーン式で、ロールに対して前輪の対地キャンバー角変化が小さいことが特徴です。対地キャンバー角の変化はステアリングレスポンスの低下やアンダーステアの増大をもたらすものですが、操舵角が大きくなっても舵の効き具合が良いことが特徴です。サスペンションの硬さと相まって、正確な操舵が可能でした。
ボデー
1989年に登場し、すでに「ボデー剛性」という言葉はあったのですが、残念ながら剛性は非常に低い印象です。以前、
トヨタMRSでは縦曲げ剛性の低さを感じたものですが、この車ではまずまずの縦曲げ剛性でした。
剛性が低く感じられたのはねじり剛性で、車体前部と後部の位相が段差乗り越え時やコーナーリング時にかなり変わってしまっている印象です。この剛性の低さが、必ずしも操縦性の低下につながっていないことが意外でした。
ただし、運転中はガタガタ、ブルブルと、サスペンションの硬さとは異なる振動に見舞われるために、決して快適とは言えません。ボデー剛性は、操縦性だけでなく乗り心地にも影響します。ボデー剛性が高い車に乗ってしまうと、この点は気になります。
内外装はあまり大切にされてこなかった車であることを物語っていましたが、仕上げ等は1980年代末というよりは1980年代前半の車であるかのような印象でした。この内装のよくなさが当時のマツダ車流で、もう少し「持つ喜び」や「見る楽しみ」を与えて欲しいものです。仕上げも今一つで、当時でも「前時代」を感じたことでしょう。
幌は、NB型ロードスター用に交換されていました。後部窓がガラス製になっていました。幌の出来は良く、ホンダS2000で感じたルームミラー上部の幌の振動は感じられませんでした。
S2000は時速90km以上出せる気になりませんでしたが、こちらの車は時速100kmでも静けさが保たれています。
一方、車両後部から風が吹き込みます。RX7カブリオレやS2000などのオープンカーでは、左右石間に防風板が設けられていますが、この車にはありませんでした。そのため、速度を上げると風は両席間を後部から前方に向かって吹きます。当日はやや肌寒かったのですが、寒い思いをしました。
荷物置き場はオープンカーの常で、ほとんどありません。席の後ろと隔壁の間、席の下、トランクがありますが、地図と少々のお菓子、身の回りのもの程度しか置けません。
まとめ
実用車ではありませんが、乗って楽しい車でした。バイクと同種で、乗って運転して移動を楽しむ為の遊び道具です。脳が活性化し、気分が転換されます。生活と車の置き場所に困らなければ、持つことで生活が豊かになりそうです。そういう点では、バイクや楽器、スポーツ用品に近い性格の乗り物です。
車としては、使いやすいエンジンと正確な操縦性で、軽快な運転を楽しめます。以後のオープンカー(ロードスターのNC型やS2000など)のような車体剛性が得られませんので、気持ちの良さはこの部分でマイナスになります。
他のオープンカー、特に現行ロードスターに乗ってみませんと最終的な結論は出せませんが、気軽に楽しめる軽快車として考え、サスペンションをあまり固めないか、車体剛性を上げる改造をして楽しむとよいでしょう。
また、よく「スポーツドライビングの基礎を学ぶ車」、「腕がそこそこでも高くても楽しめる車」と言われますが、その通りの車だと感じました。
参照して欲しい記事
トヨタ
MRS
86
日産
フェアレディZロードスター
ホンダ
S2000
ビート
マツダ
ロードスター(NC型)
ロードスター(ND型の試乗)
ドライブについて
ドライブは、借りたお店の都合でやや遅い時間の出発となりました。
9:30に千葉県野田市のお店を出発しまし、運転は1時間ごとに交代することにしました。
まず西進して東北自動車道浦和インターチェンジから高速道路に入りました。同行者の希望で日光方面を経由するはずが、つい話に夢中になって日光宇都宮道路に入れず、西那須野インターチェンジで高速道路を降りました。
国道400号を西進、塩原を経由して会津へと進路を取ります。常磐自動車道と白河を経由していた頃と違い、一本南の道路で只見方面へ向かいます。只見へ進路を取らず、南側の道路を通ります。その後シルバーラインを経由して、小出へ向かいます。
小出からは関越自動車道に入り、六日町で降り、さらに津南方面へと向かいました。同行者の希望で、棚田を見物します。
棚田以降は走りを楽しみながら帰宅するだけです。奥志賀林道を通れない場合の通り中野市を通りますが、志賀高原や万座を経由するほどの時間はなく、東御インターチェンジから上信越道へ入りました。以後、関越自動車道、圏央道と通り、同行者の家の方へ向かいました。
この時点で0時近い時間になりましたが、疲れはなく、一般道で帰宅するのでした。
出発から私の家まで780kmを走行し、燃料は58.57リットルを消費、13.28km/リットルの走行となりました。結構エンジン回転を上げた場面もあったのですが、優秀な燃費だと思います。