2021年02月12日
森喜朗会長辞任に、謝罪を許さない世の中の到来を感じる
森喜朗会長が、辞任することになってしまいました。発言について考えてみました。もう、「〇性は、これこれこんな性質で」という論調が許されない時代になったことを強く感じさせた出来事でした。〇性が、〇座が、〇型は、などという区分けは、2000年ごろの心理学ゲームブームの頃なら、掃いて捨てるほど語られていました。私は、今回の発言は謝罪で済むものと思っておりましたが、時代の変化は速いようです。
それにしても、海外メディアが攻撃的な論調になったのを確認後、国内メディアがそれに右に倣え、となるのは、なんとも情けないことです。
森さんにかぎらず、多くの現在80歳前後の人を挨拶の場に出してしまうと、このような発言をしてしまうことが考えられます。今回は、森さん個人の人格ではなく、80歳代の人がそうしてしまうメカニズムを考えてみました。
1.昭和60年頃の風潮
昭和60年頃は、日本が経済の上で欧米諸国に追いつき、さらに伸びるには欧米にさらに学ばなければならない、とされていた時期でした。2008年頃に「欧米では~」をギャグに使うお笑い芸人がいたらしいですが、昭和60年頃はいわゆる知識人層がまじめに議論をしていました。
これより前の時期、人前に立つ人のあいさつというのは、「いかに人間性を消すか。」にかかっていました。
「なるべく漢字を訓読みではなく音読みで読むような文章にする。」
「自分の思いよりも、ことわざや故事成語、古典などから引用する。」
などです。
一方、欧米人はジェスチャーを加えたり、ユーモアを交えたりし、話している人の人となりを感じさせる「スピーチ」をしていました。
どういうわけか、「ユーモア≒(アメリカン)ジョーク」を解釈されて伝えられました。昭和60年よりもう少し前の時期、「オレたちひょうきん族」などで、「本来言ってはならないようなことを言ってしまう」ことが面白いかのような風潮がありました。
結果、言ってはならないことを、場合によってはわざわざ言って、聴衆の笑いを誘う手法が出てきてしまいました。時に、「オジさん改造講座」などという本があり、従来方式を脱した中年男性は「面白いおじさん」、従来方式の中年男性は「オジサン」「オヤジ」などとされてしまっていました。
森さんは当時45歳、一般企業なら中間管理職になっているような時期です。おそらく、この「笑いを誘う」癖が染みついてしまっていたように思います。
少し前に蔓延した「バカッター」と、基本的なメカニズムは同じです。「ウケる」は、今やしてはならないこと、と思っていた方がちょうどよいです。
2.考えは変えられなくなってくる?
価値観は、時代の流れとともに変わることがあります。近代史を振り返ると、十数年前のことは完全に「過去のこと」になります。人間がある程度若い頃は、自分の考えを変えることもできることでしょう。
しかし、年齢を重ねれば重ねるほどこれまでの自分に自信を持ってしまい、考えを変えづらくなってくるのではないでしょうか。
森さん世代の男性と女性の関係性を振り返ってみました。
昭和35年頃(森さん20歳)
仕事の多くは力仕事でした。女性は、農業や漁業、電化製品や軽工業製品の工場で働くことはありましたが、多くは専業主婦だった時代です。「男が守ってやらなければならない。」と思ったことでしょう。
昭和45年頃(森さん30歳)
ウーマンリブ運動が日本に伝わってきた頃です。雑誌社などに勤務する女性や、一般事務につく女性は増えてきたようです。男性と並ぼうと口が強い女性が出てきたようですが、内情はどうだったのでしょうか。まだまだ、「男性が折れてあげる。」時代だったようです。
昭和55年頃(森さん40歳)
第一次、第二次石油ショック後のことです。すでにウーマンリブは完全に消え、「男性に守ってもらいたいと思わせる」女性が、女性として理想だとされていたようです。
平成2年頃(森さん50歳)
女性の大学進学率が急上昇した時期です。そんな女性は「小生意気」と陰口をたたかれたものでした。しかしそんなことを本当に言ったら「オヤジ」と揶揄されるので、男性が黙っていた時期です。うまくやり過ごして、そんな女性が寿退職するのを待ったようです。
平成12年頃(森さん60歳)
フジテレビ長身女性ドラマシリーズの時期です。「女のカン」で「私が一番正しい」という顔をした女性がいたものです。「カン」は外れるので、男性はこっそりフォローに回るのが良いとされていた時期です。
平成22年頃(森さん70歳)
「エビちゃん、優ちゃん、もえちゃん」ブームが終わり、ようやく普通にしていられる、中身が伴う女性が増えてきた時期です。
すなわち、ほとんどの時代で「男性は女性を守る」ことが良いとされていた時期でした。森さんの頭に、「女は助けてやるもの」と刷り込まれていたのではないでしょうか。70歳の時期に転換せよ、となっても、それまでの70年間が違ったのですから、すぐには変えられるものではなかったのではないか、と思います。
3.根回しシステム
今でこそその場でいろいろ議論し合う会議スタイルが良いとされていますが、少し前までは違いました。会議までに会議以外の場(喫煙所、居酒屋、料亭など)で話をまとめておき、会議は決まったことの集大成を発表する場所、であることが良いとされていました。森さんは、その手腕にたけた人物だったそうです。
しかし、男性でも50歳代半ばよりも下の世代、女性には通用しない技なのではないでしょうか。森さんにとっては、自分の手法が通用しない人は「面倒」なのだと思います。
4.女性が加わると面倒です。
当然のことです。男性とは視点が違うのですから、単純計算で調整しなければならないことが、2倍になることがあります。しかし、選手や観客にも女性がいるのですから、そこを調整してこそ「調整者」の手腕が発揮される、というものです。
私は、いつも同じ種類の人間で固まる会議というのは、危険性をはらんでいると思います。「〇性ばかりで楽だ」、というのは、全く誤った思考方法です。そのため、男子校や女子校の学校、あるいは、生徒の割合が偏っている学校は、さっさと学校法人格をはく奪するか、私立学校なら助成金を削減してもらいたいものです。
5.失言者は、辞職か自殺する世の中になってほしい?
私は、今回の件と昨年7月の、木村花さん自殺事件が重なって見えてしまいます。もちろん、木村花さんの場合は演出付きの番組、森さんは公人と、立ち位置は異なります。
とはいえ、失言した時に謝罪することは許されず、それこそネットリンチ的に追い詰められて辞めさせられるか、あるいは、自殺するまで追い詰める世の中というのは、どうにも生きづらい世の中になると思います。これを読んだ皆さんのおじいさんやお父さんが何かの代表職に選ばれて、ほんの少しの失言で自殺まで追い込まれた、となったら、それこそ世の中を恨むことにならないでしょうか?
私は、今回の件は森さんに、「罵詈雑言を一時的に浴びせられ、それでもなお職を全う」してもらうのがちょうどよかったのではないか、と思います。
6.歳をとったら隠居
昭和60年頃までは、「これまでの経験の積み重ね」がものをいう時代でした。そのため、困ったことがあったら年長者に相談すればよい時代でした。年長者は、その道の経験者でしたからね。
しかし、時代は変わりました。10年も経過すれば技術革新で手法が新しくなったり、環境が変わることが珍しくなくなりました。世の中の進化が、これまでの積み重ねで進化をするのではなく、全く変化をすることで進化をするようになってきた、と感じています。
そのため、歳を重ねた人を表に出してしまうと、かえって間違ってしまったり、その人に恥をかかせてしまうことが出てきました。すなわち、高齢者に時代に合わせて努力をしてもらうか、ご勇退願う時代になった、と思います。森さんには、最初から一歩奥まった「相談役」でいてもらった方が良かったことでしょう。
以上、個人的な思いを書きました。中でも「1.」の項目は、人前であいさつやスピーチをする可能性がある人はすべて意識してほしく、「2.」の歴史については、森さんがああなったのは、時代のなせる業と思ってもらいたいものです。そして、「5.」のような、社会的リンチを与えるような世の中に、変わっていってほしくない、と思うのでした。
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Posted at
2021/02/12 23:56:11
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