2023年10月07日
「花のあすか組」第六話に、古き良き時代の脚本と当時の世相を見る
以前より映像制作会社では、有料会員制のみならず期間限定無料で過去の作品を配信し、地上波テレビの視聴時間を脅かしています。私も、バス旅行や誰かに付いて行ったとかひな壇でタレント同士が話をしているのを見るよりも、過去の作品を見た方が楽しいので、専ら配信を見る時間が増えました。しかし、あまり昔の作品ばかりを見ていると現代感覚に乏しくなるので、十分自制しています。
先日見た作品に、脚本の強い味わいや当時の風情を感じさせられたので、ブログで紹介することにしました。1988年に放送された「花のあすか組」第6話です。
VIDEO
あらすじ
あすかたち3人は、街中でツッパリ女子3人に火炎放射器で火炎を浴びせている女子(祥子)を見かけた。翌日、祥子は転校生としてあすかが通う学校へと来る。祥子はアメリカから来た転校生だったのだ。一方、地域を制圧しようとしている組織の全中裏も火炎放射器を持つ女子が領地内に出没していることを聞きつけ、刺客の弥勒を差し向ける。
そんな祥子は、火炎放射器を持ちつつも何かに怯える様子を見たあすかは、祥子が火炎放射器を持つようになったのは、深い理由があると推察する。そんな祥子を救わなければ、祥子自身が死ぬと考えるあすか。そこへ弥勒が現れ、あすかと祥子を始末しようとするが、あすかの仲間であるミコとひかりの助太刀によって一時退散する弥勒。
翌日、学校の屋上で一人たたずむ祥子にあすかは話しかける。祥子がアメリカにいた頃、友達とダウンタウンに出かけた際に祥子と友達は暴漢に襲われ、友達が傷つけられていたのだった。以来、自分の身を守るためには火炎放射器で自分を守るしかないと考えたのだった。武器を持たない者に武器を持って戦うと、いずれ武器が武器を持つものを襲うと諭すあすか。
そこへ再び弥勒が二人を襲う。飛び道具のお手玉であすかを襲う弥勒だったが、必殺技の金貨を祥子に渡して無抵抗を貫くあすか。そんなあすかに祥子は心を開き、預けられた金貨を投げ返す。弥勒の攻撃にピンチに陥っていたあすかだったが、金貨で逆転、弥勒を倒すのだった。
翌日、祥子は再びアメリカへ発つと伝える。もう火炎放射器は必要ないのだ。そんな祥子を見送るあすかたち3人。
私の対作品感想
あらすじの中に、金貨やお手玉、全中裏だとか領地、果ては火炎放射器など、荒唐無稽かつ日常生活を逸脱したセリフが出てきてすみません。でもこの作品、女子高校生同士の争いを戦国時代のように描いている漫画原作のドラマなので、しかたがありません。
この、「主人公の働きによってゲスト人物が心を入れ替え、再び旅立っていく」ストーリーは、1970年代の魔女っ子アニメや時代劇によくあったものです。あすかが無抵抗を貫くシーンも、最後にみんな笑顔で別れるシーンもなかなか良いです。脚本の武上純希さんという方は、1980年代から2000年頃まで子供向けドラマやアニメの脚本を多数手がけており、基本に忠実な作品であることが特徴です。しかしまあ、30分間で描くには少々難しいテーマで、1時間で出来たらもっと良い作品になったことでしょう。
私の作品周辺に対する感想
・エンディングテーマについて
エンディングテーマは、当時数年間だけ活動していた女性二人組の、「BaBe(ベイブ)」が歌っています。作品がつくられた前年の1987年から翌年の1989年頃は、ユーロビートの日本語カヴァーが流行っていました。なおさらに前の1986年からは、渡辺美里などの「ニューミュージック(?)」が流行っていました。このユーロビートカヴァーが流行っていた頃は、荻野目洋子や長山洋子、winkなどが代表格です。音楽をあまり知らない人にとっては、
「松田聖子などのアイドル歌謡時代と比較すると、邦楽はレベルアップしてかっこう良くなったね!」
と感じられたものです。この「Get a Chance!」はユーロビートのカヴァー曲ではなくオリジナル曲のようですが、サビの部分にユーロビートの強い影響を感じます。解散したとはいえおニャン子クラブの影響が残っていたいた当時を考えると、
異例ともいえるかっこう良ささです。なお、1989年になると「平成いかすバンド天国」が放送を開始、音楽の流行はユーロビート調からロックへと変わっていきます。
・主人公のあすかと「強い女性」について
1984年に男女雇用機会均等法が可決すると、いろいろと「強い女性」を題材にしたドラマやまんがなどが出来てきます。「スケバン刑事」もその一環だったのではないでしょうか。この「花のあすか組」もスケバン刑事の流れを強く受けた作品ですが、完全に荒唐無稽だったスケバン刑事を比較すると、より普通の女子高校生的です。しかしながら、ショートヘア、切れ目の釣り目、シャープな輪郭と、「聖子ちゃん」どころか前年までの「おニャン子」も、まるで過去の人としてしまうようなう強いイメージの人です。
しかし、男女雇用機会均等法による強い女性ブームはこのあたりから後退が始まります。
1989年放送「オイシーのが好き」の主人公ユキは当初、「仕事中いかに楽するか」を考えるアルバイトでしたし、w浅野(浅野ゆう子、温子)が演じるキャラクターは、基本的に「早くいい男を見つけて」の考えで、1991年放送の「東京ラブストーリー」に至っては、うじうじした里美(有森也実)と、ただの変な子のリカ(鈴木保奈美)といった具合です。
「結局、世の中の男は主張が強い女性よりも、うじうじか不思議ちゃんが大好き」と言われているような気がして、私は非常に気分が悪かったものです。ところが実際には、「うじうじ子や不思議ちゃんがかわいい」と言い、「あすかのようなはっきりした女は生意気で面倒くさそう」と言う男性は存在しました。
時は流れて現代、男性どころか女性でも、このあすかのようなキャラクターはちょっと、という人がより増えているように感じます。一時は女性にも適用される言葉になっていた「格好良い」が、女性には完全に適用しない言葉になってきています。一朝一夕に男女平等にはならないものですね。
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Posted at
2023/10/07 15:42:54
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