
アルバイトの記憶 スペード社シリーズ
夏期にもその職場には行ったものの、秋期は全く行きませんでした。そして復活したのは12月と書きましたが、リハビリの意味で積極的に外出業務をこなそうと考えていました。その復活日は、関東南岸を低気圧が通過する、どんより曇った風がない日だったと記憶しています。私は、オフィス街への配達仕事を請け負いました。
その指示図は、オフィスビルの地下の一室を示していました。多くの場合はビルの3階以上の場所でしたので、「変わったところだなあ」と思ったものです。そしてその場所につくと、鉄の重い扉があります。これまた珍しいことでした。たいていは受付があるか、ドアが開けられているかして開放的なイメージなのですが、さらに「何だか変だなあ」と感じたのです。
変だと感じていても仕事は進みませんので、仕方なくドアをノックします。返事がないために、さらにノックを続けます。これまたノックをしていても仕事の意味を成しませんので、「太陽にほえろ!」523話「ゴリさん、死の対決」のボギーのように、「〇〇会社さん、ドアを開けないとぶち破って入りますよ!」と小声で言いながら、ドアを開けました。
すると、ロッカーと机があるだけで、誰もいません。そして、独特な臭いが漂ってきました。中学や高校生の頃に、身体検査や体育の授業の後に教室に帰ってきたときに感じる「モワッ」とくる種類の臭いです。そう、そこはその会社の何らかの更衣室になっており、着替えた服が積まれていたのです。気が遠のきそうになる中、高校の化学の授業の際に、「低級脂肪酸(?)は悪臭に感じられるだけで利用価値が全くない」と先生が言っていたのを思い出しました。
次の瞬間我に返り、自分の姿を客観的にみると「更衣室に忍び込もうとしている泥棒」であることに気づきました。これは大変だと思い、すぐに近くにあった電話でその会社に連絡をします。すると、
「え?そこに行ったのですか?ハハハ。そこには去年まで事務所がありましたが、仮の場所だったんです。今は完成した隣のビルにいるんですよ。」
と、笑われてしまいました。仕事自体は無事終わりましたが、このブログを書いている今になっても、その時の臭いが鼻の奥に残っているような気がします。
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スペード社 | ビジネス/学習
Posted at
2025/03/17 00:01:07