
2005年の夏頃だったか、私は富士山の五合目までドライブに行きました。これまで行ったことがなかったからです。そして車を駐車場に止め、風景を楽しんでいると周囲の人が私をじろじろとニヤニヤして見ています。どうやら、私の服装(半袖、ハーフパンツ、サンダル)を見て、「バカが平地の服装で登山、死にに来た。新聞に載るから、今のうちによく顔を見ておこう。」と、嘲笑の目だったようです。時に、服装で人の中身まで判断されます。
今日のインターネットニュースで、「「セシル・マクビー」という若い女性向けファッションブランドが、実店舗だけでなく通販事業からも撤退する」という報道がありました。実は、昨年の同時期に同ブランドの方針転換のニュースが報じられており、時代が急変している様子が感じられます。
このブランドは、いわゆる「'90年代後半以降のギャル」に支えられたブランドだったそうです。早い話が、「アムラー」に代表される、短く細いトップスでへそを出し、ミニスカートやショートパンツにブーツを組み合わせる、などといった着こなしを支えたブランドだったとのことです。
以前、ファッションの傾向が変化していることをブログ化したことがあります。アムラーこそ色々変化し、ファッションの傾向が変わりました。まず、その変遷を負います。
1987年頃 ブレザーにチェックのミニスカートに制服をモデルチェンジする学校が増える。
1990年頃 白いハイソックスをわざわざたるませ、ソックタッチで止めるくしゅソックスという履き方が現れる。「探偵物語(松田優作版)」の再放送の影響で、薄茶色のダウンジャケットが横浜から流行る。
1991年頃 金ボタンのブレザーが流行る。
1993年頃 白いポロシャツとブルーデニムの組み合わせによる、渋カジが流行る。
1995年頃 「TRY ME~私を信じて~」以降、安室奈美恵の曲が流行る。同時に、「この曲を含む安室奈美恵が歌う曲のジャケットに描かれたような、へそ出し、ミニスカートまたはショートパンツにブーツ」のような服が「アムラー」とされる。
1996年頃 MAXの4人のファッションが、OLに導入される。OLと水商売の女性の垣根が低くなる。
1997年頃 Every Little Thingが流行り、ボーカルの持田香織のファッション「細眉、まつげを強調、目元に青いアイシャドー、キャミソールにミニスカート」をはじめとしたファッションが「モチダー」と呼ばれる。
1999年頃 長身の女優が主人公のドラマ(ナースのお仕事、ナオミ、ショムニ、お水の花道など)が増え、目元を強調したファッションが増える。
2000年頃 浜崎あゆみ、モーニング娘。など、金髪、細眉、美白などが流行る。
2003年頃 若槻千夏など、アムラーとギャルを融合させたファッションgみられる。
2006年頃 倖田來未を中心とした「エロかっこいい」ファッションが現れる。アムラーの再来。
2008年頃 「エビちゃん、優ちゃん、もえちゃん」などを中心とした、CANCAN誌のファッションが現れる。「モテ系」と呼ばれる。アムラーのお姉さん版。
2010年頃 水商売をしている人たちのファッションを取り上げた「小悪魔ageha」が人気になり、小学生女の子が将来なりたい職業に「キャバ嬢」と挙げるようになる。
2011年頃 東日本大震災発生。「美咲ナンバーワン」のギャル/ギャル男イメージが、この種の外観の最後。
2011年にギャル/ギャル男が絶滅したのではなく、実質的には2014年頃に絶滅しているようです。
報道によると、セシル・マクビーの売り上げピークは2007年、昨年度はピークの半分になっていたそうです。すなわち、コロナウィルス関連による業績悪化ではないのです。
プレ・アムラー登場から、少しずつ姿を変えながら来たファッションの流れが、なぜ10年間で急激に縮小されたのでしょうか?私は、「ギャルの行く末」が見えてしまったためではないか、と思っています。
ここ数年、DVや子供の放置死事件が見受けられます。そのDVの被害者や放置死の加害者の多くが、地味な女性ではなく元ギャルやキャバ嬢、あるいはそれらの見た目を有する人たちです。
そういう人たちですと、どうしても「アクセサリーじゃらじゃらクズ男」などに引っかかり、「若くして妊娠・出産、女性が面倒になった男は暴力をふるい、そして男は遊びまわって離婚、自身も遊びたくて子供を放置死」、となっていってしまうのです。
すなわち、ギャル的服装でいると、「あ、あの人はそのうち男に暴力を振るわれたり、子供を放置死させたりして、新聞に載るんだね!今のうちに顔を覚えておこう。」と見られるのです。すなわち、冒頭の「富士山五合目に、半袖ハーフパンツ、サンダルで行った私」を見る周囲の人、と構図が同じなのです。
今、街を行く人を見ても、かつてのギャルのように「頑張っておしゃれをしました!」という人は絶滅しています。コロナウィルス前でもそうでした。おしゃれをしていると、まるでダメ人間であることを触れ回りながら歩いているようなものです。
ギャル的服装は、シャープで意志の強さを感じさせてかっこう良い服装だと思っていましたが、思わぬところで物言いがついてしまったようです。そんな歴史の突然変化に見限られてしまった形の「ギャル服メーカー」ですが、このまま若年者ファッションの火が消えてしまうのでしょうか?なお、昭和40年代半ばにもファッションの火が付き、石油ショックで火が消えました。以後も何らかの流行がありましたが、トータルコーディネート的なファッションは、プレ・アムラー期まで途絶えていました。
まとめ
どの産業も、世の中の流れに翻弄されます。特にアパレル業者は、流行や経済動向に左右されます。今反映していることは、10年後反映していることの理由になりません。今の10歳代が地味になり、遊び惚けなくなったのは、歓迎しべきことなのでしょうか?それとも、経済活動を縮小させてしまっているのでしょうか?私は、後者のような気がするようになってきました。
Posted at 2020/07/25 22:32:51 | |
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