
なんと私、大阪転勤になった今でも
埼玉の床屋に行っています。この床屋は、「理容室」ながら気遣いが良く、気持ちよく利用することができるためです。
この店では、これまでも何回か「サービス業」について談義を重ねています。そもそも私は、ほぼ一番最初にしたアルバイトが「販売店」であり、学校で学んだことは製造関係ながら仕事としての基本精神は「サービス業」寄りとなっています。「三つ子の魂百まで」ですね。
さて、産業の歴史を紐解くと、最初の産業は「第一次産業」です。稲作、畑作、漁業でしょうかね。人間、食べないとならないからでしょう。そして産業として生産量に余裕が出てくると、当然「売る」仕事が出てきます。第三次産業ですね。「あれ?第二次産業は?」と思うでしょう。鉱工業が第二次産業です。まあ、農耕具や漁具の製造から始まり、刀、弓、鉄砲、大砲と、兵器産業が主体だったかもしれません。もっとも、地理で分類しているこの分類法が、今や古くなって役に立たないのではないかとも思います。
もっと視点を最近に移してみましょう。明治時代の富国強兵、殖産興業時代に、人口の多くが第一次産業から第二次産業に転換し始めました。そして第一次世界大戦、第二次世界大戦を経て、戦後の朝鮮戦争特需、神武景気、岩戸景気、いざなぎ景気を経て、いわゆる高度経済成長期となりました。いずれも、「第一次産業はどんどん衰退し、人口は田舎から都会に向かって流れ込み、多くの人は第二次産業についた」時期です。もちろん、商社や銀行などの第三次産業にも付いた人はいますよ。しかし、「第二次産業で出来た製品を海外で売るための商社、第二次産業を進行させるための銀行」であったわけですから、純粋にサービス産業かというと、私は違うと思います。
これは、当時の「図鑑」や「新聞」、「百科事典」等から感じる雰囲気なのですが、サービス産業につく人は、「第一次産業を継ぐ長男ではなく、第二次産業に就けず、どうしようもなく販売などの産業につくしかなかった人」、という風潮があったように感じます。そのサービス産業が陽の目を見るのは、昭和61年であると考えています。
昭和61年、円高から日本はそれまでの「材料を輸入して加工して輸出する、加工貿易国」だと言っていたのが、円高とNICS(ニックス、韓国などの東南アジア諸国で、工業が産業として定着しつつある国を、当時はこう呼んだ)の隆盛で、日本は加工貿易国として対抗できなくなる、と言われていました。生き残る道として、コンピューター製品や自動車といった高度な加工を要求される製品の製造輸出か、内需で補うかを選択された時期です。
結果、高級乗用車の輸出と内需の拡大と、両方を選ぶことになりました?
そこで注目されたのが、「小売業」です。それまでのサービス産業は、「とりあえず誰かにやらせておけ」的な扱いであったものが、「挨拶」「お辞儀の角度」「マナー&エチケット」「身だしなみ」「売ってからもお付き合い」となりました。もとより内需は限られているわけですから、いち会社レベルで内需を伸ばすには、他社を圧倒しなければなりません。当時もメーカーごとの技術は、それほど大きな差はありませんでしたので(?)、そういった販売する製品外のことも重視されるようになったのです。わずか26年前の出来事です。
となると、具体的な目に見える製品がなく、さらにお客様との距離が極めて近い「理美容エステ産業」は、非常に厳しいサービス品質が求められます。もちろん理美容は太古の昔から存在しているのですが、これまた他の産業と同様、「理美容師が客の髪を整えてやる」といった時代が長く続いていました。
それがお客様に近づいて、しかも長い時間接し、体臭や口臭に気を付け、しかも世間話を振られても無難にやり過ごしつつ、髪を整えるのです。しかも、失敗はできません。(医師と比べると、責任は軽いですが。)
そしてこれが重要。最後は主に現金で料金を頂戴し、気持ちよくお帰りいただく、ということです。しかも、失敗したら、次回その人は来なくなるかもしれません。
理容師さんは、笑顔で接していてもそんな緊張の中で働いています。それに、こういうことは若いうちに基本をつくっておかないと、なかなか歳をとってからできるものではありません。
「他人に頭を下げる」
「他人の話の腰を折らずに持ち上げる」
「気分を害さない受け答えをする」
他産業にいた人が、おいそれと出来るものではありません。
「相手への奉仕の精神」と、
「接客要因の心に余裕が生まれるような組織内体制」と、
「接客要因自身の心の余裕」、
そして何よりも
「お客様から直接お金をちょうだいすることの大変さと喜び」
これをわからない限り、接客サービス産業の基本は絶対に出来ません。
というところで、この日髪を切ってくれたその店舗の店長と意見が一致したのでした。
Posted at 2012/05/29 00:32:24 | |
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