
雑誌に「プリウスのブレーキ抜け」現象について解説があったため、本当にそうなのか調べてみました。
ECBⅡ制御系統油圧配管図を示します。まず、「ハイドロブースター」とあるのは、「ハイドロマスター」ないしは「マスターリシンダー」の間違いです。このマンガだけでなく、配管の位置からしてもそうであることは明らかです。
まず、普通のブレーキ作動に関係ない部品について説明します。ストロークシミュレーターは、運転手に「ブレーキを踏んでいる」感じを起こさせるための部屋です。FLH,FLR,FRH,FRR,RLH,RLR,RRH,RRRバルブは、ABS用の増圧、減圧バルブです。
この車では、ブレーキ操作に関係なくポンプモーターが電動で作動し、アキュムレーターに油圧を蓄えておきます。ここに貯めた油圧だけで、ブレーキペダルを30回も軽く踏めます。
また、マスターシリンダーは二重構造になっていて、ピストン部とその上のバイパス管で成り立っています。ブレーキペダルを踏むとマスターシリンダーは図の左へ動きますが、通常時はSMCとSRCバルブが閉じているため、発生した油圧はホイールシリンダーへかかりません。また、後輪ブレーキについてはマスターシリンダーと全く独立し、マスターシリンダー左端の配管を通じてSLAバルブを経由してホイールシリンダーへかかります。このSLAバルブは断続的に駆動(デューティ制御?)され、アキュムレーターに蓄えられた油圧が徐々にかかるようになっています。そうそう、SCCバルブは電源がかかると開く構造になっています。なお、回生ブレーキ時にはSLAバルブはあまり開かず、油圧ブレーキは弱作動となっています。
SMC、SRCバルブは、何らかの原因でブレーキアクチュエーター系統の電源が停電して電源がかからなくなったときに開く構造のバルブです。他のバルブは、電源がかかると開くバルブです。
すなわち、通常作動ではこのバルブは使わず、SLA経由で高圧にされたブレーキフルードがホイールシリンダーにかかります。電源がかからなくなったときだけSCCバルブが閉じ、SMC,SRCバルブ経由の油圧がホイールシリンダーにかかりますが、マスターシリンダー側を見てください。SMCに来る油圧は、マスターシリンダー内で完結している部屋から油圧がかかります。すなわち、倍力作用がない「人力」のブレーキ力となります。これは前輪ブレーキのお話です。
後輪ブレーキは、マスターシリンダー左端のロッドが左に移動し、切り欠き部がアキュムレーター経由とマスターシリンダー上部のバイパス管へつながる通路を開き、SRCバルブを経由して後輪ホイールシリンダーへとかかります。
配管の解説においては、ABSが作動した場合もSLA経由で油圧が供給されるとあります。雑誌等の記事では、ABS作動時にはSLA経由ではなくSMCやSRCも(?)電源が切れて、上記電源がかからなくなったときのブレーキ力になると説明しています。私はトヨタが発表している説明を聞いていないので、どちらが真実か分かりません。しかし、ブレーキ踏み込み時はSLA経由の高い油圧のブレーキでロックが始まり、次の瞬間この通路が閉じてSMCとSRCが通路を開いて、前輪がマスターシリンダー経由油圧、後輪がSRC経由高圧フルードになるとしても、液圧が弱まるだけでかからなくなるわけではないので、踏み増せば再び車輪ロック域までブレーキを使えるのです。
ただし、低速時の停車直前にはSLA経由油圧を使わず、SMC,SRC経由油圧がかかる可能性はあります。リニアソレノイドのSLAをもってしても滑らかな油圧ブレーキが再現できないこと(仮に使うと、カックンブレーキになる)、この領域で回生ブレーキを使っても電圧が上がらず、充電できないことなどから、マスターシリンダーからの油圧にしてブレーキフィーリング優先にしたのだと考えられます。
もしブレーキが効かないと思ったら
「ブレーキを踏め!」です。フットブレーキが効かないと思ったら、パーキングブレーキを、それも効かないと思ったらエンジンブレーキを、それでもダメなら「壁ブレーキ」を、と昔の自動車雑誌は書いていたはずですが、いつから何でも他人のせいにするようになったのでしょうかね。
みなさん、ガンダムの「マ・クベ包囲網を破れ」を見ましょう!
Posted at 2010/03/12 00:03:50 | |
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