
意欲的かつ魅力的なパッケージングながら、
短距離試乗ではよいところを見出せなかったこの車、ロングドライブでは何かよい点が見つかるのではないかと思い、レンタカーでロングドライブをしてみました。なお、この日は先週の代休です。連休は絶対混雑するため、無理をしてこの日にいきました。
エンジン
やはり3気筒の振動は大きく感じました。走行をすると騒音に隠れるのか微振動が隠れるのかそれほど感じなくなりますが、走行レンジにしたまま停車するとダッシュボードが震えます。
AT車で停車中に振動がひどいのは、かつて家で乗っていたSV20カムリ以来です。もう少しアイドル回転が高ければ振動を回避できそうですが、この車はスロットルが汚れているのか、それとも本当の姿がこうなのか、振動がありました。
パワー感は、1000ccエンジンということもあり、それなりです。CVTとの連携が強いようで、DやSレンジではがっかりしますが、Bレンジでは結構力強い加速を見せます。ECOモードスイッチは、私のアクセルワークではその存在を意識させませんでした。
CVT
トヨタお得意の、「低速走行に移るとどんどんアップシフトする」変速スケジュールになっています。市街地走行では低い評価をしましたが、空いた一般道で燃費配慮走行をするのには悪くありません。エンジンの出力に対し、「余裕トルク」が少なくなるようにどんどん高い変速比に移行させるようで、燃費には有効かもしれませんが、走っているとまるで「爪に火をともす」ような、ぎりぎりの走行をします。
Sレンジはスポーティー走行ができるように低めの変速比を選ぶことになっているのですが、あまりそのような感じはしませんでした。スポーツ走行に適しているのは、Bレンジです。シフトレバーは、、、ちょっと下過ぎませんか??
ステアリング
可もなく不可もなく、トヨタらしい前輪が突っ張って弱アンダーステアのまま安定して曲がっていくコーナーリングをします。遊びも適切で、長距離運転をしても疲れません。この辺は、この車もヴィッツもカローラセダンフィールダーもほとんど同じですね。楽しくはないものの、評価できるハンドリングです。この車はホイールベースが極端に短く、コーナーリングでのリヤの追従性は良好ですが、かといって不安定でもなく、気持ちよく曲がっていきますよ。ホイールベースが短い車を曲がりくねった道で運転すると、リヤタイヤがコーナーリングパワーを出すまでの時間を実感できます。普通の車が「よっこらしょ」と曲がっていることがよくわかります。
直進性は、さすがにあまりよくありません。そのために、ステアリングセンター付近での車の反応が鈍く作られているのでしょうかね?遊びの範囲内ではそこそこの直進性を示しますが、そこを超えると結構敏感に車が反応します。敏感ながら遊びを減らした
デミオとは対照的です。
また、幅の広さから来る舵のききのよさも感じられます。ステアリング切れ角は、FR車並みです。そのせいで、駐車は楽ですよ。
乗り心地
雑誌などでは「ショートホイールベースによるピッチングがひどい」と書かれていますが、これはピッチングではありません。ショックアブソーバーが突っ張って路面の凹凸をいなさないことによる上下動です。車高が高い車のため、急な姿勢変化を嫌ったのでしょうか?でも、カローラやヴィッツとも同じ乗り心地なので、ショックアブソーバーがよくないのでしょう。とにかく、ツンツンと突き上げを感じます。かといってうねりをうまく抑えるのかというとそうでもなく、うねり路面ではあおられる感じがあります。しなやかさがどこかに行ってしまったようなサスペンションです。そのため、荒れた路面でのブレーキングではタイヤが断続的にグリップを失い、ABSが作動することもありました。
ボデー
これはもう、ホイールベースが短いことによる入力点のスパンの短さにより、高い剛性感を感じます。ボデーの曲げやねじれは感じられませんが、舗装の下に木の根が張ったような感じの突起があるような路面では、フロアパネルがびびる(?)感じがしました。
ブレーキ
全車横滑り防止装置(VSC)付です。とはいうものの普通に乗っている範囲では反応しません。(しないと思います。)ただ、限界時に車の操舵を優先させるのか、車の姿勢を優先させるのか、その辺が心配ですね。操舵を優先して倒れそうになっても怖いし、姿勢を優先して車が障害物にぶつかっても困りますし。いったいどちらなのでしょう???
内装
最近の車の例に漏れず、プラスチックの安っぽさが目に付きます。「レザーパッケージ」なるものも設定されているようですが、ステアリングとシフトノブとシート(?)がレザーでも、ドア内装やダッシュボードがこのままだと、ちょっとバランスが悪い感じがします。また、斜め前方、斜め後方、後方とも視界がよくありません。自分の回りはすべて見えるかのように感じられますが、高速道路の車線変更や山道のコーナーリングでは、結構不安を感じてしまいます。そして今回、途中で仮眠を取ったのですが、シートがフラットになりません。
燃費
途中何度かフルスロットルをしました。山道も走りましたし、ちょっとだけ渋滞もしました。でも、おおむね燃費走行をしました。総走行距離は、678km、燃料は36.92リットルを消費しました。割り算をすると、18.36km/リットルです。すばらしい!インサイト(これは燃費を考えない人も乗ったためだが)よりも燃費がよいですね。車重が890kgだったかな?これも効いているでしょう。コースは違いますがブルーバードシルフィが15.4km/リットルと考えると、余裕がない走り味で18.36km/リットルで、燃費配慮走行をしつつも余裕がある走り味で15.4km/リットルだと、ちょっと考えてしまいますねえ。やはりCVTでも限界があるのでしょう。
となると、思い出されるのが、プリウスです。プリウスのハイブリッドバッテリーは、総走行距離2-3km程度の電力しか蓄えられませんが、加速時にエンジン動力を助けることであれだけの(意識しなくても20km/リットル以上)の燃費を稼ぎ出すわけです。CVTで余裕出力を削りながらやっとたたき出したのが18km/リットルなのですから、エンジンに負荷をかけない、エンジンを加速に使わないということは、燃料を余計に使わないためのもっとも適した手段なのでしょう。
まとめ
この車は、景気がよいままであればもっと売れたでしょう。お金持ちのセカンドカーです。しかし、160万円もする車で、アイドル時にダッシュボードがブルブルし、加速も余裕が感じられないこの車、残念ながら軽自動車に劣っているといわざるを得ません。軽自動車の3気筒エンジン車で、いまどきこんな不始末の車はありません。
その昔、徳大寺有恒氏が「パブリカ」のことを「軽自動車の代用品」と評価しましたが、この車はまさにそれです。軽自動車よりも高くて不始末で荷物も人も詰めなくて、、、これではやっぱり買えませんし、他人にも勧められません。
*4気筒や追加されるであろうMTについては、この限りではありません。
Posted at 2009/10/14 23:51:17 | |
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