
来週開かれる、日経BP社主催の講演会を聴講するため、基本となっている雑誌を本日読み、その時に備えました。しかし、結論から言うと違和感をあちこちに覚えるのでした。自動車は確かに日本の基幹産業ではありますが、あまりにも経済の点から書きすぎていて、「車に乗ったことある?」と聞きたくなるような記事ばかりなのでした。
・サスペンション部品などのコストを○○%削減
性能が同じか優れるのにコストを削減するのでしたら「これはすごい」と思うのですが、性能の点にはほとんど触れられていません。一部に、「耐荷重を落とした」という記述がありましたので、おそらく性能は落ちていることでしょう。こういう重要なパーツの性能は、素人の人でもなんとなく気づくものです。「高いものを買ったのに、なんとなく安っぽい。これよりもうちょっと高い方は、ちょっと高いだけなのに随分良いな。」と思われたのが、現行マーチです。
そういえば、現行マーチについても「コストを削減した」とは書いてありましたが、「旧型の人気を全く無きものにした」とは書いてありませんでした。これを書いた人は、「食べ物はお腹が膨れれば良いし、着るものは暑さ寒さをしのげれば良い。」なのでしょうか。
・googleは、完全自動運転のgoogleカーで
特に非自動車系会社では、完全自動運転を狙っているようですね。googleでは、人を車の運転から開放し、人は自動運転車の中で検索やらをする、と考えているようです。少し前、通信会社かパソコン会社が「インターネットは人を覚えることから解放し、人は高度な判断に力を注ぐことになる。」とCMで言っていましたが、覚えない人に高度な判断ができないのは明らか、今はそんなことを言わなくなりました。
余談ですが、信州大学の学長がスマートフォンを否定するスピーチをしたそうです。新聞の読者欄では「スマートフォンはノートを書くより便利」と反論する学生がいましたが、なんにもわかっていません。学問に関わる人がスマートフォンを否定するのは、スマートフォン派は、
「検索して出てきたことを、さも自分の知識であるかのように言う。」→カンニング
「途中経過を放り投げ、誰かの結果をそのまま言う」→基礎学習や思考の省略
「今する必要のないことを、その場でしようとする」→落ち着きのなさ
だから学長は学生には不要と否定していたのにね。デジタルネイティブ、おそるべしです。
ところで、4人が向かい合わせに座る車を提示しているメーカーがありましたが、おそらく酔います。
・自動運転で自動回避
横滑り防止装置(VSC,VDC)が採用されるようになってから、シャシー性能を怠けるメーカーが増えたのだそうです。最後は電子デバイスの力を借りれば良いや、という傾向なのだとか。障害物を避けるのは、ブレーキで行くのかステアリングも使うのか、あるいは減速、ブレーキ、転舵とするのか、という高度な判断が必要です。この書き方ですと、「原理はわからないけど、なんでも自動で回避」
と言われているようで、「あなた、パイロンスラロームもしたことがないでしょ。」と言いたくなります。
こう言う人が、「金さえ払えばレストランは料理を提供するのが当然だろ!」と居直るのです。
・ITSは言われなくなったのに、地図インフラですか!?
15年くらい前、「将来の自動運転に備えて道路に電波発信機をくまなく埋め込み・・・」という論がありました。土木系の利権が関わっていたのでしょうか。最近はめっきり効かなくなりました。その一方で、個々の車両のレーダーが収集した周囲の風景を3次元データとして国がサーバーに・・・」という論が出てきたようです。サーバー導入、維持管理、システム維持ビジネスの創出?
・借り車ビジネス
自動運転化が進むと、車は所有するものではなくなり、タクシーのように必要な時に呼んで目的地まで利用する、という方式になるとのことです。一見すると良いことづくめなのですが、現在でもカーシェアリングにはこんなことが起こっているのだそうです。
・運んではならないとされている灯油を運び、車内にこぼしてだんまり
・車をぶつけてだんまり
・車内にゲ○を吐いてだんまり
やはり、生理的に知らない人が触れたものに触れるのはどこか不快ですし、そんな車内に長時間閉じ込められるのも不快ですよね。また、同じような狙いで出来たビジネス「高級バッグなどのレンタル」も、うまくいった、とは聞いていません。また、「自分のものではない」と思ったものだと、誰しも大切に使わないのですよね。人間性を無視した机上の論。
また、既存のメーカーのトップに聞く、のような内容もありました。
F社の社長
ご自身は販売側の方だそうで、「基本は任せる」のだそうです。「部長は部長の仕事をする、課長は課長の仕事をする」。結果が良ければ、誰がしようとお客様には関係ありません。なんだかどこかの経営セミナーの資料を読んでいるようで、この方のお話の部分が一番薄っぺらでした。さもありなん、この会社はマニアから一般の方へ客層が拡大しているのですが、どうにも「過去の高性能イメージを利用した普通の製品を売るメーカー」になってしまったように感じます。遠からず、転落の道が待っているように感じました。
M社の社長
途上国で人気があるピックアップトラックを収益の柱とし、日本国内の車種を削減、「自社は適時他社と協調して生産を請け負い、工場の稼働率を上げている。過去の栄光にはこだわらない。」のだそうです。早く言えば、「他社の波動製造品を委託生産する製造工場」にするのだそうです。メーカーも利益を上げて働く人の生活を守らなければならないのはわかります。しかし、波動生産品がなくなったら??そんなイメージのメーカーの、決して安くはない自動車を誰が好んで買うの?と思えてなりません。この社長、短期的には会社を守ったのかもしれませんが、長期的に見ると「あの時あの人が転落の原因を作った」と言われる人になるような気がします。
ミネラルウオーターすらブランド化が進む今、この本はなんとなく「お客は自動でお店に車を買いに来る、自動購買マシン」としか考えていないような論調で、「自動車は家に次いで高額な買い物であり、購買欲を満たす商品」であることを忘れ、「性能よりコストダウン」だけに興味が有り、「運転の力学をすっぽかした自動運転論」ばかりで、気分が悪くなってしまいました。
この種の論調は全てお金が絡んでいます。この種の自動運転システムに参加するのには、毎月定額の利用料をとることでしょう。インターネットも携帯電話もなくても充分生きられるのに、皆当然のように契約、人々から幅広くお金を徴収するシステムに気づいた企業は、あの手この手で普通の人からお金を取ろうとしています。
この講演会、自動車ジャーナリストは一人も講演せず、上とは別のM社の常務とこの雑誌者の寄稿している謎のコンサルタントたちの講演なのですが、どんな内容になるのか楽しみです。
Posted at 2015/04/18 00:43:31 | |
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