
2016年に大ヒットしたアニメーション映画「君の名は。」は、太陽にほえろ!を見ていた私にはちょっと甘く、時系列性にも難を感じていました。そこで、なるべく元々のストーリーや設定を残しながら、「私版」としてプロット(あらすじ)を書いてみました。ただし、あらかじめ「君の名は。」を見た方を対象とし、以下の点はあらかじめ変更とお断りしておきます。
登場人物の年齢
立花瀧(タキは、苗字ではなかったのですね。)やその仲間は大学生に、彼のアルバイト先の先輩である奥寺ミキは、立花瀧のゼミの先輩に変更します。
舞台
彗星が落ちて消滅するはずの宮水三葉らが住む村は、クレーターができて全滅するのではなく、彗星が祭りの最中に神社に落下、村人は直撃と火災によって死亡することにします。クレーターが出来たら、キノコ雲が出来た上で粉塵が成層圏まで巻き上げられ、地球規模で冷害になります。おそらく県規模でドロドロの溶岩となり、村全滅どころではありません。また、こんな災害を忘れたら、ただのバカです。クライマックスシーンの都合からも、落下したのは十数cmの破片である必要が出てきました。
年代
瀧と三葉が東京で初めて会ったのは2013年、彗星落下が2016年、二人が再開したのは2020年頃になるようです。当初はハレー彗星を持ってきて76年前後のすれ違いにしようと思いましたが、現在と少し先の二つにしたいと思います。そして彗星は500年周期の到来とします。なお、現在の設定では、瀧は彗星落下を覚えていないは、村人を避難させたことも記憶から遠ざかるは、と、まるで若年性認知症のありさまです。この辺も「ちょっとおバカ」感を感じてしまい、感情移入が出来なかった点です。
時系列
ドラえもんでは度々話題に出される、「過去を変えてはならない」が、この物語では反故されています。「概ね現在」とすることと、時間の流れを擬人化し、運命を変えようとする登場人物たちを消そうとする、あたかも一つの意志を持ったものの形で描きます。
あらすじ
500年周期で地球をかすめる彗星が来る年、東京都内に住む立花瀧(以下、瀧)は大学生2年生、岐阜県の山奥の村に住む宮水三葉(以下、三葉)は高校3年生であった。瀧は怠惰な学生生活を送り、三葉は都会での生活に憧れていた。
ある朝、目が覚めると瀧と三葉は体が入れ替わってしまっていた。入れ替わりは恒常的ではなく、数日置きであった。男性的な行動と体力を生かし、三葉(の体に乗り移った瀧)は学校で大活躍、瀧(の体に乗り移った三葉)は、柔らかな物腰と丁寧な行動から、ゼミの先輩の奥寺ミキの注目され、良い関係になった。なお、入れ替わり初日、三葉の体に瀧が乗り移った際、罠に引っかかった猪を逃がしてやり、あとで文面で三葉に叱られている。また、河原で勅使河原や名取と「水切り(石を水面とほぼ平行に投げ、石が水面ではじかれて遠くまで飛ぶ、あの遊び。)」などもして、田舎の日々を楽しんだ。
お互いは入れ違いであるために、決して会うことはなかった。生活を共有する中で、相手のことが気になり出す瀧と三葉であった。
そんな日々が続く中、突然入れ替わらない日が数日続いた。その後、再び入れ替わりが起こったのだが、その日一葉(三葉の祖母)は、三葉(の体と入れ替わった瀧)を、山頂の御神体に連れて行くのであった。
「すまんのう、この村のために来てもらってなあ。」
一葉は、三葉(の身体の瀧、面倒なので以下、三葉瀧、瀧の体に三葉が乗り移る状態を立花宮水)に語りかけるのであった。三葉瀧は、
「あんた、何で入れ替わっていることを知っているんだ?」
と、聞き返した。
一葉の説明では、この村は以下の様な歴史を繰り返していた。
彗星は500年周期で地球に来ているが、その度にこの村に破片を落として行くのであった。その度に村外から勇者がやってきて、その破片を始末、村を守っている伝説があるのだという。500年前は武士が刀で彗星を両断して破壊、1000年前は天狗がうちわで彗星を跳ね返していたとのこと。それらの勇者は、一葉の神社の神主が日本の中から特殊能力で選別し、連れて来ているらしい。そして2016年の今、日本の若者の中から瀧を「特殊能力を持つ勇者」として一葉が選別、三葉と体を入れ替えるということを繰り返させ、村外の者に「この村を守ろう」という気持ちを起こさせていたのであった。彗星が落下するのは3日後、その日は村で伝統の星祭りが行われる日であった。
この話を聞いて怒る三葉瀧、
「何で自分が知らない村を守るために危険を冒さなければならないんだ!」
それでも御神体に酒(三葉が口に含んで出し、これを発酵させたもの)を備え、帰途についた。その帰り道、大きな地震が起こり、地割れが出来る。転落してしまう一葉。かろうじて淵にぶら下がる一葉は、三葉瀧に言うのであった。
「とうとう「時間」が我らの行動に気づき、(自分たちを)消そうとし始めたか。」
「勝手なお願いじゃが、この村を彗星から守ってはくれまいか!」
必死に一葉を救おうとする三葉瀧であったが、一葉は三葉瀧を巻き込んではなるまいと、三葉瀧の手を振り払って、地割れの中に落ちるのであった。ほどなく地割れは塞がり、三葉瀧は一葉の名を叫び続けるのであった。
神社へ戻る三葉瀧と妹、明日になると元に戻るであろう本当の三葉に、三葉瀧は書き置きをするのであった。
彗星接近まで3日、瀧はゼミの仲間にこのことを打ち明けた。皆、話を信用しなかった。瀧自身も、あれは夢だった、と思い込むのであった。
その3日後、彗星は地球に接近した。この様子をゼミの皆で見物し、(若者らしく)バカ騒ぎをするのであった。しかしその翌日、新聞は「あの村で原因不明の火災が発生、村人全員が焼死した」ことを報じていた。顔が青ざめる瀧らゼミの皆。
「自分が一葉の願いを無視したからこの村人は全滅したのか。」
自問自答を続ける瀧。
しかし、奥寺ミキ、藤井司、高木真太らは、「これがあの村の運命。運命を変えることは正しいことなのだろうか?」と、瀧を慰めるのであった。
その日のゼミの内容は、この事故を受けた内容であった。日本全国に伝わる神話であり、教授はこの村のことも取り上げた。
「500年置きに勇者が現れて村を守るという言い伝えだけれど、言い伝えをそのまま信じた村人が悪かったのではないだろうか。言い伝えは言い伝えだね。」
後悔と自責の念にかられる瀧であった。
「500年ごとに繰り返されていた伝統を、自分は破ってしまったのか。これはむしろ、自分が歴史の流れを変えてしまったのではないだろうか。一葉を含め、村人たちはあんなに自分に良くしてくれたではないか。そんな実直な村人を殺してしまったのは自分だ。」
どうにかして彗星の落下から村を守れないか、と考える瀧だったが、村に行こうとしていた。その行動が心配なので同じゼミの奥寺、藤井、高木も付いて行くのであった。
村は彗星落下当時と様子が変わらなかったが、神社とその周辺だけが著しく焼けていた。村人は皆祭りに集まっていたために、焼死していた。呆然とする4人。当然だが既に落ちてしまった彗星を元に戻すことはできなかった。三葉との出来事を3人に話す瀧であった。
一葉とともに御神体に酒を備えに行った事を話すと、奥寺が反応した。「神社が備える酒には、昔から飲んだ者の特殊な能力を引き出す力がある」という伝説を思い出す。4人は、山頂の御神体に行った。被害は神社周辺のみであるために、御神体はそのままであった。その酒を分けあって飲む4人。酔いが回るかのように、4人はその場に倒れてしまった。
何時間が経過したのだろうか、高木が目を覚まし、3人を起こす。付近はうす暗く、夕方のようであった。
「飲み過ぎちゃったなあ、さあ、帰ろうか。」
と、藤井が促す。
あきらめにも似た雰囲気が4人に漂い、山を下っていった。
しかし、神社には明かりが灯り、賑やかな声が聞こえてきた。混乱する4人。どうやら、彗星落下の直前のところにタイムスリップをしてしまったようだ。神社では、500年に一度の「彗星を追い払う勇者伝説」を祝う祭りが行われていた。もちろん科学の時代であるからして、人々は彗星が落下するとは考えておらず、ただの祭りとして集まってきたのであった。神社に設けられた舞台では、三葉と四葉が踊っていた。もちろん、伝説は知っているが、本当に彗星が落ちるとは思っていない。
4人は焦りを感じた。村人を避難させるのか、いや、村民でも何でもない自分たちの言うことを聞く村人などいやしない、など、意見がまとまらない。
奥寺は、事故時の神社の様子を思い出し、こう言う。
「神社は燃えただけ。大きな彗星が落下したら、大きなクレーターが出来て被害は村にとどまらない。落ちたのは小さな破片に過ぎない。それなら、爆破することも可能よ!」
当然ながら、爆弾はない。どうする!神社の周辺には屋台が出ており、それらのお店にはガスボンベやガソリン缶が予備として置いてある。
また、藤井は、彗星が来る方向や落下場所である神社を計算すると、神社とは湖を挟んだ反対側の山並みをかすめて彗星が来るという。ガスボンベやガソリンを山並みに配置、爆破して彗星を誘爆させよ、という。
こっそりガスボンベやガソリンを盗む3人であった。また、瀧は三葉の友達である勅使河原克彦と名取さやかにも声をかける。もちろん2人とも瀧(の体)との面識はない。とまどう二人であったが、二人と三葉しか知らないことを話す瀧に、「なんだかわからないけれど、村の伝説もあるし。」と、山へガスボンベやガソリンを運ぶことを手伝う。二人の姿が消えることで、違和感を覚える三葉と四葉。
爆破は、山並みにガソリンやガスボンベを配置、彗星が山並みをかすめる直前に遠隔操作で起爆させることで決定した。ガソリンにガスボンベ、起爆剤を設置し、離れた場所で起爆スイッチ(携帯電話)を用意する4人と2人であった。
しかし、彗星を爆破しようとする6人を、またもや時間が襲う。通信状態が良かったはずの起爆装置と携帯電話の接続が途絶えてしまったのだ。どうする!これも運命なのか!?瀧は単身、爆破場所へ向かって、直接爆破するという。止めようとする3人(奥寺、高木、藤井)、一方、二人(勅使河原、名取)は、あきらめにも似た表情で、祭りに帰ろうとするのであった。その姿は、運命を受け入れようとするものであった。
瀧は、止めようとする3人を殴り、気絶をさせて爆破場所に行こうとする。そして二人には、「危険が迫っている。自分は失敗するかもしれない。なるべく多くの人を避難させるんだ!」と言う。
爆破場所へ向かった瀧は、起爆装置の近くに構える。
「もしかしたら、自分の行動は自分自身を死に至らしめるかも知れない。しかし、多くの村人を守らなければならない。」と、使命感を感じつつ、彗星が来るのを待つのであった。そのころ、神社の周辺では勅使河原と名取、そして彼らの行動に気づいた三葉と四葉とともに、村人に避難を呼びかけた。しかし、皆笑って相手にしてくれない。
ところが、起爆装置の近くで構える瀧に、猪3匹が体当たりし、瀧を突き倒すだけでなく。ガスボンベの多くを谷に落としてしまう。
「クソー、ここまできて時間が自分たちを邪魔するのか!」
猪の体当たりで怪我をした瀧は、万事休すと、伏せてしまう。脳裏には、村人たちや一葉の笑顔、三葉と入れ替わった楽しい日々のことが去来する。
その時、猪が瀧の心に直接呼びかける。これは夢なのか、現実なのか、瀧は不思議な空間にいる。
「命を無駄にするな。」
「あの時、君は私たちの息子を救ってくれた。」
「生きるんだ!最後まで諦めるな!」
猪の声なのか、瀧の心にこだまする。
ハッと我に返る瀧、水切りをしていたあの日のことが脳裏に蘇る。
「そうか、彗星は爆破しなくてもほんの少し角度を変えれば良いのだ。」
残ったガスボンベをミサイルにし、ガソリンを起爆剤にしてガスボンベを発射そして、ガスに点火する。放物線を描いて上昇から落下しようとするガスボンベの側面に彗星を当て、彗星を湖に落とすことにする。時間はない、急いでセットする瀧。
彗星が山並みを通過する直前に、瀧はガソリンに点火、彼の体は爆風に吹き飛ばされる。ガスボンベは彼が計算した結果の通りに飛び、彗星の前に立ちはだかる。彗星はガスボンベ側面と爆発によって向きを変えさせられ、湖に落ちる。大きな水柱が立ち、神社にいる三葉、四葉、勅使河原、名取、その他村民は、呆気にとられる。
瀧の無事を祈り、奥寺、藤井、高木、勅使河原、名取、三葉は、瀧がガスボンベを発射した山並みに向かう。周囲の木々が焼け焦げている中、瀧の白い歯が光る。
瀧は重症ながら無事だったのだ。泣き崩れる4人。瀧に肩を貸して、山を下りる。
神社からは、ガスボンベやガソリンを盗まれたという屋台店主たちが、警察を連れて登ってくる。三葉、勅使河原、名取は、「彼らは泥棒ではなく、この村を救った勇者だ!」という。そんなことを信じない屋台店主と警察。これを説明しようと瀧たちの方を向く三葉、勅使河原、名取であったが、瀧たちの姿はない。再び屋台店主や警察の方を向くが、今度は「あれ、何で私たちはここにいるんだろう?」と、記憶が消されている。そして屋台店主も警察も、「あれ、ここには何をしに来たんだろう?まあ、伝説とは違って勇者はいなかったけれど、彗星は湖に落ちて良かった良かった!」と、記憶がなくなり、無事と伝説のデタラメぶりを笑いながら、揃って山を下りる。この時、瀧、奥寺、藤井、高木は、元の時間に戻ってしまう。
御神体のそばで目が覚める4人であった。彗星を落とした記憶も消されており、祭りは三日三晩行われており、神社へと向かう。神社の舞台では、三葉と四葉が踊っている。目が合う瀧と三葉。記憶は蘇らないものの、二人はなんとなく過去に会っていた印象を覚える。
「君とは、どこかで会っていた気がする。名前も知らない君、しかし、私たちは絆で結ばれている。」
そんな心の対話をするのであった。
「瀧くん、足を地面に着いて大丈夫なの?」
奥寺が言う。
「え?」
途端に足に痛みを覚える瀧。怪我はそのまま引き継がれていた。
「瀧はバッカだなあ!」
怪我を思い出して飛び上がる瀧、笑う奥寺、藤井、高木であった。
まとめ
入れ替わりも彗星から村を守ることも、夏休みのできごととして書いてみました。主人公の命を削る行動も、最後に怪我を思い出せて、軽い感じで終わらせています。ロマンス色はやや後退しましたが、元の作品の、「彗星到来前にマイペースにロマンス」をしたりすることや、「3年くらい前を行き来する瀧のご都合主義的な行動」も、自然にすることが出来ました。大満足です。