
この日、数日前に届いていた「2018年度版 間違いだらけのクルマ選び」を読み終えました。EV化や自動運転などにも触れられており、2017-2018年を象徴する内容になっていました。
「間違いだらけ~」シリーズは、最新版を読むのも面白いのですが、何年か経過してから古い本を読むのも、これまた歴史の流れが読み取れて面白いものです。
年代は人間が勝手に決めたものです。しかし、過去の、特に経済や世相の歴史を見てみると、西暦や昭和和暦の10年ごとに変化があったように思えます。もちろん、末尾9の年から0の年に変わったからといって、世の中がガラっと変わるものではありません。概ね、末尾が3の年と8の年に次の10年の兆候が現れてくるように思います。
そこで今回は、過去のシリーズプラスαで、5年ごとに過去の世相を振り返ってみました。ただし、いずれの版も、年度の前の年に書かれております。
2013年度版
マツダがスカイアクティブシリーズを本格化させ、その技術が受け入れられていた時期でした。また、スバルもアイサイト技術で躍進しており、この時期まで話題になっていた「第三のエコカー=低燃費技術を導入した車」の話題は、忘れ去られようとしていました。既にトヨタ86やスバルBRZもあり、「平均燃費の数値を稼ぐために車に乗っているわけではない」という機運になっていた時期でした。マツダCX5など、SUVが本格的に投入され始めたのものこの時期です。
2018年に世の中が変わりそうな印象がありますが、その初年度とみなすこともできる時期でした。
2008年
現「間違いだらけのクルマ選び」復活前であり、発行はありませんでした。ミニバンが売れている時期で、念頭にアルファードが姉妹車ヴェルファイアを伴って登場しました。ミニバンの高級路線化です。その発表会を、「セカンドライフ(仮想現実世界)」でも同時中継するとかいうこともありました。
また、「ロハス」などという言葉を伴い、「環境意識が高い人」が特別視されるかのような風潮があり、「車の運転を楽しむ」ことが、反社会的であるかのように見られていた時期です。
商業的な場面でも、「富裕層」「おもてなし」や「女性の意見を聞くことが成約につながる」などと言われた時期で、結果、多くの企業が女性の意見ばかりに耳を傾けることになりました。
2003年度版
この時期は、「新しい感覚を持った新時代のセダン」が投入されていた時期です。この時期までの、「ハイパワーなターボエンジンを搭載した4WDセダン」が旧時代のものであるとされ、キャデラックCTSなどから始まった「無機質デザイン」が出始めた時期でした。
結果、市中に多くいた「走り屋」などが乗る、古いスカイラインやローレル、セフィーロ、マークⅡ/チェイサー/クレスタなどと差別化され、「富裕層が買う車」が出始めました。前年には、「排出ガス規制への対応がこんなんだから」という理由でスポーツカー/スポーティーカーが軒並み廃止され、ハイパワーエンジン車に乗ることが、反社会的だとされ始めた頃でした。
売れていたのは「コンパクトカー」で、年配の方でも若者でも、マーチ、ヴィッツ、フィット、デミオなどの車でも恥ずかしくない風潮が生まれていました。
1998年度版
この時代までの、「ハイパワーエンジンを搭載したワゴン車」、「シャコタンワゴン車」、「タウンユースクロスカントリー車=RAV4やCRV」などの人気が沈静化してきた時期です。トヨタは2年前から「セダンイノベーション」とセダンに力を入れるキャンペーンをしており、この年には「アルテッツア」を発売します。が、それほど火がつかず、これまでの車ブームは終わるわ、新しいブームは来ないわで、これから車を買う人は減ってしまうのではないか、とすら感じた時期でした。なお、トヨタのプリウスはこの時期に登場しております。まだ電池が大きく、「ハイブリッド自動車は電池運搬車」、「ちょっと変わっている、新しいもの好きの人が買う車」とすら陰口を叩かれていました。
その割には、地方へ行くと「峠を車で走る漫画」の影響で「走り屋」が、街中では、ステーションワゴン車の車高を下げた車が多数いました。景気悪化の慢性化と新卒者の就職率の低下などから、上品なものに対してアンチテーゼを唱えるかのような、「退廃文化」の始まりが見られました。
1993年度版
既にバブル景気が終わったことは誰の目にも明らかになっていた時期でした。新車はバブル期に企画されたものばかりで、懐具合が寂しくなった人とはかけ離れた商品ばかりでした。そんな中、やっと余暇時間ができたからなのか、ステーションワゴンといわゆるジープ型の4WD車の流行が起こっていました。
一方で、1990年頃から出てきた「環境問題」が一般化してきました。自動車では、フロンガスの問題、排気ガスからの酸性雨と地球温暖化問題、シュレッダーダストなどの産業廃棄物問題があります。石油資源の枯渇を含めて、自動車は全く悪の存在ですが、まだまだ多くの人は「よその問題」として捉えており、この時期に出てきた「リーンバーンエンジン車」などはあまり売れませんでした。
1988年度版
世間のバブルは1989年からですが、自動車のバブルはすでに始まっていました。何しろ土地家屋が高騰化したため、「家は買えないのでせめて車は贅沢に」、という風潮が出てきたからです。トヨタのマークⅡをはじめ、いわゆる「ハイオーナーカー」「ハイソカー」ブーム真っ最中でした。もちろん、当時のハイテクも多数盛り込んだ車がいろいろ発売されました。何となく、「国産車は海外の車を上回った」時期です。ただし、自称「おしゃれな人」は輸入車を購入する傾向が有り、BMW3シリーズやベンツ190Eが街にあふれました。その結果、前者は「六本木カローラ」、後者は「小ベンツ」などと呼ばれました。
一方で、車で個性を主張することを勧めていたこの本では、いろいろな輸入車を進める傾向がありました。しかし、販売や整備網の都合上、本当に勧められる車だったかは,「?」です、
1983年度版
すでに国産小型車のFWD化は終了目前でした。その中で日産のFWD車は不人気になり、「FWD化慎重論」が出ていました。著者も「FWDかFRか」などと書いており、なんとも懐かしい気分にさせられます。
一方でハイパワーエンジンブームも起こっており、ブルーバードのSOHCターボとトヨタのDOHCターボとが激しく争っていました。国産車が排出ガス規制を完全に克服し、次の段階へと進もうとしていた時期です。合わせて、「クーラー」を装着することが一般化し、多くの人は競って車を買い替えていました。
1978年度版(続とあるもの)
この時期はまだ年度別発行となっておらず、初版に対する追補版としてこの版が発行された模様です。初版の頃とは少し時代が変わり、スタイルは直線基調になり、エンジンも排出ガス規制を克服しつつありました。海外を中心にFWDの小型車が増え始め、著者は「小型車にはFWDが理想的」と述べ始めました。
世相も、排出ガス規制やオイルショックによる暗い世相から脱したい気分になっており、RX-7などが登場するに至って、新しい時代の到来を感じさせるものでした。
それにしても、この本は保管して後年に読むと、当時のことが手に取るように思い出されてきます。
Posted at 2017/12/30 21:56:59 | |
トラックバック(0) |
時事 | クルマ