
前回、「ふたりの愛ランド」をもって1984年がのちのバブル景気の前兆だったことを書きました。南国の島などへのレジャー旅行を一般化した効果があったのでした。
この1984年が時代の変革期であったことを示唆する曲が、もう一つあります。中原めいこによる「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」です。
カネボウ化粧品のCMに採用されることが前提の曲だったそうで、歌詞は後付けのような感じだったのですが、新しい時代の到来を予感させるものでした。
まずこの時期は、南国の果物を食べることが難しかったのです。キウイこそようやく売っているスーパーマーケットが少し出てきた程度で、パパイヤもマンゴーも大都市でしか食べられませんでした。
そしてこの中原めいこという方、アイドルではなく、この年くらいから目立ってきた「シンガーソングライター」として売り出していました。プロモーションビデオを見ても、ノースマイルで顔立ちも大人っぽさを前面に出しています。当時から「子供が嫌いな大人」がいることは何となくわかっていました。身近に接することができる人物としては、「学習塾の職員」などにいました。近づきがたい雰囲気はありましたが、子供に対するそっけなさに、むしろ正直さすら感じたほどです。
さて、この曲ですが、二番の歌詞に「タバコはメンソール」とあります。私は歌詞を読まない派なので誰が吸うかはわからないのですが、当時は特に女性においては、「苦み走った大人の女性」を演出するために吸う人もいました。この時代のすぐ後に清潔ブームが始まりますので、全く意外です。
その、「素っ気なさを伴ったタバコを吸う大人の女性」が「都会の女性」とするような雰囲気がこの曲から感じられます。この年の初めの頃まではまだアイドルブームが残っていました。しかし、この曲はその甘いアイドルにとってかわるのは「大人の女性」ということを示唆していました。そして、日本を「キウイやパパイヤやマンゴーを食べられる都会」と「田舎」に二分化し、高度経済成長期に次いで再び多くの人を都会に引き寄せる効果があった、と考えられます。
追伸1
私は歌詞を読まない派なので、当時この歌は、果物の名前を出した子供向けの歌だとばかり思っていました。音楽自体も明るい感じで、楽しい雰囲気の曲に仕上がっているように思います。
追伸2
都会派志向の女性の点では、同じ中原めいこさんの曲では翌年の「ロ・ロ・ロ・ロシアンルーレット」の方が強いように思います。ただ、1985年はもう都会派志向が明らかになっていました。
Posted at 2020/08/15 22:56:18 | |
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