
アルバイトの記憶 スペード社シリーズ
毎年この時期になると、過去のアルバイト職場のことが思い出されます。以前第一期の「納豆さん」「そばつゆさん」「大根さん」のことを書きましたが、今回もその方々に関する出来事です。
そのアルバイト職場では、山場の仕事が終わると会社が「お疲れさま会」を開催してくれます。単なる労のねぎらいだけでなく、翌年度に就職する人を送る会も兼ねています。
私は車を購入するためにひたすら働くだけでしたが、クラブ活動感覚、ないしは、サークルやゼミで代々受け継いでいるアルバイト職場と考えている人もいたようです。納豆・そばつゆ・大根さんたちも、ゼミで一緒だったようです。その3人のうち、納豆さんは前年10月頃に来た職長との相性が悪く、11月頃には職場に来なくなっていたとのことです。そのため、私もお疲れさま会で初めて拝見しています。ただし、11月からお疲れさま会までアルバイト職場に来ていないということは、そのシーズンはほとんど働いていないということです。
納豆さんは、当時としては流行の末期だった、「お嬢様ルック」で他の女性とはレベルが違うきれいさでした。現代で言うなら、坂道系アイドルグループ的イメージです。そんな納豆さんですが、そばつゆさんや大根さんにとってもその後は会う機会が減るということで、その二人がお疲れさま会に呼んだと聞いています。
お疲れさま会は午後6時ころから開催されたと記憶していますが、もちろんその前に職場に集合です。遠目に見てもきれいだった納豆さんには、多くの男性が注目していた模様です。会が始まると、宴会というよりは合コンのような雰囲気を感じました。まあ、あちこちで男女が会話をするような場ですね。
この時点での私の職歴は約2か月でしたし、仕事も始業時刻から終業時刻まではほとんど外出、そして勤務開始当初は「誰が誰だかわからないほど人がいて、立って待機」していたほどですから、人の顔と名前が一致しないどころか、名前も顔も初めて見るような人もいました。
そんな場で勤務歴が短い人たちは、男性は男性同士、女性は女性同士固まりがちです。私も自然とそのような「よどみ集団」に属してしまったのですが、卒業する男性で細かいところに気が付く人がいて、納豆さんを呼び寄せてくれました。呼び寄せてくれても、当時としては麗しさを感じさせる芸能人レベルの雰囲気ですから、あまり口がきけません。結局口も利かずに短時間で納豆さんは去って行ってしまいました。
その後の納豆さんの行動を見ると、同年齢の男性の輪にしかいません。納豆さんの1歳下になる、それこそ男性ファッション誌「men's non-no」のモデルでもおかしくない顔立ちのタクシーさんとも話していませんでした。
翌日、職場に行くとお疲れさま会のことが話題に出ました。私と同じヤマト産業大学に通う年上男性のABさんという男性は、
「昨日いた女の子で誰が良かった?」
と聞いてきました。誰と言われても名前と顔が一致しませんから、誰とも言えません。思い出そうとしていると、
「納豆さんだろう?」
とからかうように聞いてきます。
いろいろ女性はいても、納豆さんは嫌だな、と感た私は、
「いや、納豆さんは良くありません。」
と答えるのでした。
するとABさんは、
「まあ、そうだよな。」
と、納得した雰囲気でした。そう言われれば、ABさんが納豆さんに話しかけても、冷たくあしらわれていたように記憶しています。
職長は、その日出勤していたそばつゆさんと大根さんに、
「なんでお疲れさま会なのに、ほとんど働いていない納豆さんに声なんかかけたの?お疲れさま会なんだから、よく働いたmoto'91君のような人こそ楽しめなければいけないのに。まあ、納豆さんは私のことが嫌いだから、働きに来なかったんだろうけどね。」
と言います。
大根さんは、
「ごめんなさい。納豆さんを合コンに連れて行くんだけど、いつも評判悪くて。お疲れさま会なら良いかな、と思っていたんだけど。」
と、私ではなく職長に謝るのでした。
納豆さんに関する情報はほとんどないのですが、
「実家は田舎の専業農家で、お婿さんを探している」
か
「実家は田舎で、東京で結婚相手を見つけないと田舎に戻される」
か
「そもそも就職はしても働く気はなく、結婚相手を見つけて早く辞めるつもり」
のいずれかで、「親が病気で結婚を急いでいる」のではなかったと記憶しています。
納豆さんは、表計算ソフトウェアの「ジャガー社」という会社に就職が決定していると聞きました。「いわゆる良妻賢母養成色が強い、鉄腕女子大学がソフトウェア開発会社で何をするの?」と感じましたが、どうやらジャガー社は一種の職員のお見合い要員として、鉄腕女子大学から一定数一般事務職を採用していた模様です。営業にも開発にも就くことはできず、おそらく昇給もわずかであると思いますが、早期に家庭に入ることを望んでいた女性には人気があったとか。
お疲れさま会の場で、初めて会った多くの人から高い評価を受け、その後3時間以内に最低評価になった納豆さん、もちろんその後一切会ったことはありませんが、約半年後、その職場の女子同士の会話に蘇ったのでした。その話は、また別の機会にします。
みなさんは、納豆さんのような女性をどう思いますか?
Posted at 2025/03/02 18:49:32 | |
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