
パート1がスマッシュヒットし、異例の次々期にパート2放送となった「ファーストクラス」は、視聴率の点で苦戦しています。以前に分析した通り、期間不足による練り不足と脚本家の変更が大きな原因ではないか、と思います。
あるいは、既に企画されていた別ドラマの企画に、ファーストクラスの吉成ちなみをドッキングさせただけなのかもしれません。というのも、このパート2は、「企業買収」や「株主総会を利用した経営権奪い合い」にかなりの時間を割いています。吉成ちなみはその企業買収の戦いに大筋では巻き込まれていますが、直接的な関係は薄くなっています。
吉成ちなみがいる現場と企業買収が繰り広げられる場面の二つの場面展開があるという、全く不思議な場面構成となっています。全くの想像ですが、半沢直樹全盛期に作られてオクラ入りになっていた脚本を利用して、吉成ちなみをくっつけただけのような気がしてならないのです。
この第八話も相変わらず企業買収話は続くのですが、吉成ちなみ付近は、人情話になっていました。
あらすじ
店頭で製品アンケートをしていた吉成ちなみらは、若いカップルに話を聞く。「次に欲しい商品は?」、と聞くと、「ウエディングドレス」だという。結婚する年齢には見えない二人に、その理由を尋ねると、女性の父親が末期ガンで、余命幾ばくもないとのこと。そのような状況ならば、と、吉成ちなみは、サンプルモニターとして彼女らを選ぶ。
ウエディングドレスの試作は予定通り進んでいたが、彼女から「父の容態が急変し、命が危ない」という、吉成ちなみは予定を変更し、当初予定していた高級な素材から、どこでも手に入る素材へと変更し、すぐにウエディングドレスを完成させることを選ぶ。吉成ちなみが駆けつけたのは、以前の勤務先であった、衣料材料店であった。
ウエディングドレスは完成し、それを着た彼女は病床の父親のもとに駆けつけ、その姿を見せるのであった。涙ぐむ父親と彼女。
敵対的買収活動は進んでいたが、その中でヘッドハンティングされた吉成ちなみの部下たちのもとには、彼女と父親、婚約者の写真が届けられるのであった。
いやあ、全く「平凡な」人情話です。こういうお話、大好きなんですよ!服は単なる布ですが、それがウエディングドレスになり、彼女と父親には大切な意味を持つということ、ウエディングドレスを作った吉成ちなみたちは、大変な感謝を受けて喜びを感じること、そこに深みを感じるんですよね~。
ファーストクラスのパート2は、パート1で特徴的だった「罵詈雑言」と「どこにでもある職場感」を捨ててしまったことが敗因とされています。しかし、以前も書いたようにパート1そのままに来ていても、おそらく飽きられていたことでしょう。
こういう「良い話」を積み重ねていくことによって心が荒んでいた「悪女」たちに人間らしい心が蘇り、活気ある会社が出来上がる、という話でも良かったのではないでしょうか?
なお、現実のシリーズでは、最終回近くで川島レミエ(菜々緒)が蘇ってきてなにか悪さを働くようです。ここも、「活気ある職場」になったところに、(何らかの理由で)職を失い、気が変になったレミエが吉成ちなみを刺す、というストーリーにすると悲壮感が出てよかったのではないでしょうか?そのまま吉成ちなみを殺しても良いのですが、争っているうちに落石があり、命からがら吉成ちなみは川島レミエを救い、「私は誰にも死んで欲しくないんだ(太陽にほえろ!、「ドックのつぶやき」または「石塚啓次殉職」のゴリさんのセリフのコピー)」と、人間愛で終わらせるのも良いでしょう。
いずれにせよ、ドラマ界にまだ残っている「半沢直樹ショック」を除去しない限り、ドラマの再生は難しそうです。半沢直樹は、太陽にほえろ!の「テキサスは死なず」以来の高視聴率ということで、非常に話題になりました。
しかし、最近の高視聴率は昔の高視聴率とは、価値において全く異なります。今の作品で25%以上の視聴率は、次のような需要で発生するものです。
・学校(会社)で話題に乗り遅れるから見ておこう
・お客さんの会社に行ったり、お客さんが来たりした時に話題になって「見ていません」では話にならないから、とりあえず見ておこう
・週刊誌に出ていたから見ておこう
・みんな見ているから見ておこう
という、引きずられ需要です。その証拠に、作品が終わると火が消えるのも早いものです。今、「家政婦のミタ」や「半沢直樹」で騒いでいる人、います?太陽にほえろ!の方は視聴者がファン化されたことによる需要増大であるため、今でも話題になる(?)のです。
また、企業買収などの話は「人間ドラマ」が描かれないために、ドラマとして取り上げても全く深みを醸し出しません。所詮は、お金のやりとりですから、人間の「情熱」は出てきません。心意気なき人物のお話など、見ていても全く感情移入できません。
そんなことから、やっぱりドラマは「基本」にあると思うのです。
添付の写真は、この第八話を味わい深いものにした一番の功労者である、「末期ガンの父親」です、顔色の悪さ、セリフの張りのなさ、貧相な感じ、どれも見ている人を引き込みます。「はぐれ刑事純情派」で同僚刑事を演じていた「若林哲之」さんだと思うのですが、エンドロールには出てこなかったなあ。
戸にもかくにも、脚本家やプロデューサーの皆さんには、こういう「基本」を大切にしたお話を望むのです。
Posted at 2014/12/16 00:03:09 | |
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