
ゴールデンウイークは、珍車や旧型車、老人車が街中を走るものです。今年もこんなきれいな車に出会えました。二代目トヨタ カリーナ(A40型)です。
初代は人気と排出ガス規制への対応からフルモデルチェンジが延び、1970年から1977年まで当時としてはかなり長期間生産されました。
二代目は、排出ガス規制への対応が落ち着いた1977年8月に登場し、1979年8月にフロントマスクを変えるマイナーチェンジを実施し、1981年9月まで生産されました。この日出会った車体は、1979年8月までの前期型です。
車に近づくと、エンジンルームからは若干ながら「ドロドロ」とノイズが聞こえました。エンブレムを見ると、「TTC-C」「GT」とありました。
18R-GUエンジンを搭載していると推察されました。バンパーは黒いウレタン製でした。その場では18R-GUエンジンとウレタンバンパーの組み合わせに違和感を感じましたが、
帰宅後二玄社刊「日本車検索大図鑑」より、1978年2月にオプションで装着できるようになっていたことがわかりました。その後このカリーナは、1978年9月にエンジンを18R-GEUに換装していますので、この車は前期の中期型(C-RA40)と断定できました。若干違和感が残りましたが、リヤクオーターパネルの「CARINA」エンブレムが無くなっているようです。また、純正のマグスタイルホイールが、私の記憶の中の色と比較すると、少々黒いように思います。
とはいえ、きれいに修理または維持されている車であることは確かです。新車の頃からきれいに維持されているのか、それともレストアされたものなのか、いずれにしても大切に扱われていることは確かです。ドライバーの運転も丁寧で、左折時にはしっかり巻き込み確認をし、エンジン回転を上げず(すなわち、独特な吸気音もほとんどせず)2速へとシフトチェンジをしていました。
この個体を見たのは二度目のように思いますが、いつまでも大切にしてほしいものです。
車としては、最近の一般の人に向けた旧車解説記事では、「排出ガス規制に悩まされたモデル」と書かれれいたことでしょう。しかし、当時のカーグラフィック誌を見ると「排出ガス規制前のモデルと比較すると若干パワーダウンをしているが、それでも高性能を実現している」とあります。こういう私も排出ガス規制移行期モデルには乗ったことはないのですが、当時の書物を見る限りは昭和50年排出ガス規制対策モデルはいろいろ急造ぶりがうかがえ、触媒コンバーターが過熱したり燃費が悪かったりしたそうですが、昭和51年排出ガス規制対策モデルではだいぶ落ち着きを取り戻してきたようです。
しかし、車両個体としては、先日のスプリンターもそうですが、よくぞ生き残ってくれた、と言えます。この車が2回目の車検である4年を経過した1982年には、ターボ付きエンジン車が大ブームになっていました。ブルーバードが大人気で、カリーナも次のモデルへ移行し、160馬力のDOHCターボエンジンを搭載しました。10年を経過した1988年には、DOHCターボに4WDが加わったハイパワーモデルが増えていました。2000ccで130馬力のこの車は、まったく時代遅れになっていました。その後はバブル景気が本格化し、4-5年もたった車は「’70年代後半の車なんか、ただ時代遅れで古臭くて乗れない」かのような風潮すら生まれていました。’80年代前半の車でも、どんどん解体されていたことでしょう。この車は、そんな時代を生き残ってきた、まさに「隠れ物件」だったのかもしれません。
余談
この車が登場した時代は、景気としては良くなかったものの、第一次オイルショックと学生運動が落ち着き、世の中が安定してきた頃です。「太陽にほえろ!」が視聴率30%を超える怪物番組となり、学生を中心に「宇宙戦艦ヤマト」「さらば宇宙戦艦ヤマト」が人気を博していました。音楽は、キャンディーズが人気を下げつつ、ピンクレディが人気を得ていました。団塊の世代や全共闘世代は当時の大学生を「ノンポリ」「無気力」と評価していましたが、レジャーが生まれ、旅行やサーフィン、スキーなどがレジャー化を始めた頃だと思います。色の流行も、’70年代初めの深緑や深い青から、この黄色、黄緑、橙色などのビタミンカラーに移っていきました。
そんな若者のライフスタイルの変化を受け、車もやや変わりつつあった時代です。レジャーの道具としての車の役目が出てきた結果、リヤにハッチを加えた「リフトバック」「ハッチバッククーペ」が増えてきた頃です。スタイル重視のハッチ付き車から、レジャー道具を入れるためのハッチに変わってきた頃だと思います。この時代背景にあっては、もしかしたらこのセダン型GT車は、少し懐かしい車だったのかもしれませんね。しかし、その後レジャー車は本格的なハッチバック車(マツダ ファミリア)へと移行し、セダンGT車はブルーバードの大ブームで復活しています。車の流行は、片時もとどまっていない、ということを改めて意識しました。
Posted at 2020/05/05 22:58:17 | |
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