
今年の夏も暑いですね。十分寝たと思っても疲れが取れません。仕事から帰ってくると余力がなく、ブログを書けません。ようやく休暇となりましたので、少しずつ書いていくことにしました。
春頃のことですが、「飛び出せ青春」という青春学園ドラマを視聴しました。1972年初めから1年間、日本テレビで放送された学園ドラマです。村野武範さんが教員として主演しており、生徒役は第一期学園ドラマやその他の学園ドラマで人気があった人が多数出演しています。「青い三角定規」というフォークソング?グループが歌う主題歌の「太陽がくれた季節」も大ヒットし、一時期は「青春」の代名詞ともされた作品です。
以前見たと書いた第一期青春ドラマは、夏木陽介主演で「青春とはなんだ」でした。これがヒットし続編を、となったところで夏木氏のスケジュールが一杯で、当時無名だった劉雷太が主演を務めた「これが青春だ」を放送します。翌年はマンネリ化を危惧したプロデューサーが設定を変更したものの、不評で途中から元の路線に戻った、「でっかい青春」となります。さらに先生共々成長のドラマを、とした「進め!青春」は不評となって打ち切り、当時のウーマンリブ運動に合わせた「炎の青春」も打ち切りとなっていました。その後、制作会社が異なる森田健作主演「おれは男だ!」がヒット、プロデューサーは第二期青春ドラマの制作を決意し、この「飛び出せ青春」」が制作されたとのことです。
「飛び出せ青春」は、おおむね第一期青春ドラマの路線を踏襲しているものの、時代に合わせて作品の雰囲気が変更されています。
1つ目は、劇中の音楽(サウンドトラック)が充実したことです。登場人物の行動が音楽によって演出されるため、より臨場感が強まります。
2つ目は、カメラワークが早くなることで、シーンの転換にメリハリが出たことです。第一期青春ものの場合には現代の感覚では「のんびりしているな」と感じたものですが、ストーリーがテンポ良く進んでいきます。
3つ目は、フィクションが強まった一方で、ドラマらしいストーリー展開になったことです。クライマックスも用意され、より感情移入出来るようになったことです。
以上の変化は、テレビ局がドラマの制作に慣れてきて、1時間の中で視聴者を引き込む方法がわかってきたためによる変化だと考えられます。プロデューサーの岡田晋吉氏はこの年に「太陽にほえろ!」の制作にかかわり、脚本の鎌田敏夫氏は 翌年から「太陽にほえろ!」の脚本に参加、1970年代らしいドラマを確立していきます。すなわち、ドラマを1960年代の叙景型から叙情型へ進化させたのが、この「飛び出せ青春」だったといえます。
当時、この作品を見ていた人が夢中になるのも当然で、その後のコントなどで青春ドラマ的シーンがあったり、その際に「太陽がくれた季節」が流されるのも、この作品への敬意があったからなのだ、と改めて感じたのでした。
さて、その作品の一つの22話「飛び込もう青春の海へ」は、以下のようなストーリーでした。
あらすじ
舞台となっている太陽学園は、夏休みになった。学校の寮に入っている先生と多くの生徒は、寮母さん(演:菅井きん)が育った島へ合宿旅行に行くことになった。寮母さんの甥っ子(演:柴田光(光ににんべん)彦)がいるのだが、「気楽な高校生活を楽しんでいる、嫌な高校生」とみているようだ。
島では、廃屋となった建物に泊まることになった。島にいる間は、何か目標を決めて行動しようと呼びかける先生。しかし、甥っ子の態度が気に食わない生徒(演:石橋正次)たち。ケンカになり、生徒の一人は腹いせに船を壊してしまう。
そんな折、島民の中の女の子は高熱を発してしまう。島には医師はおらず、電話もなかった。交通手段だけでなく、連絡手段も船だったのだ。そこで、海を泳いで連絡に行くという甥、しかし、甥はケンカでけがをしている。
自分たちが起こしたことの責任は自分たちでとる、と、出発しようとする甥を殴り飛ばし、そのまま駆け出していく生徒(石橋)と追う先生、そしてそのまま波止場から海に飛び込み、陸を目指して泳ぐのだった。
感想
まるで、クライマックスの泳ぎのシーンを持ってくるためにストーリーがあるようなものです。クライマックスには、すっかり生徒と先生を応援してしまいました。実際の学校ではこんなことはないだろうとも思いつつ、こんなことなら起こるかもしれない、という絶妙なウソの要素が絶妙です。自分が損な役(海を泳いで助けを呼びに行く)を引き受けるために、相手を殴る展開も青春ものっぽいです。
この要素は同じく1972年に放送を開始する「太陽にほえろ!」にも引き継がれ、特に鎌田敏夫氏が参加した1973年以降の作品に青春ものの雰囲気をもたらします。
今まで「古い」と見ることもしなかった「飛び出せ青春」ですが、1970年代ドラマの元祖的作品で、とても楽しめました。
その後の第二期青春ドラマ
その後、やや間を開けて中村雅俊を教員として迎えた「われら青春!」が放送されます。しかし、学校というのは1年周期なのですよね。「飛び出せ青春」で、視聴者側も「すべてをやりつくした」と感じたのか、人気が出ずに半年で打ち切りになりました。岡田晋吉プロデューサーは、「われら青春」で高校を舞台にしたドラマの終了を痛感したそうで、以後は中村雅俊氏ほかを大学生に据えた共同生活モラトリアム学生ものの、「俺たち」シリーズに移行します。
おまけ
この作品の3年前に放送された青春学園ものドラマ第一期第4作の「炎の青春」では、大学生の学生運動をまねてゲバ棒やプラカード、赤ヘルメットをかぶって学校に反対する生徒が出るシーンがありました。この「飛び出せ青春」では、第一話の冒頭に「まだ学生運動をしている一部の人たちがいるんだね」というセリフがあります。1970年を過ぎたら学生運動は沈静化した、とありますが、世の中が急変したことの表れではないか、と感じました。
おまけ2
以前、制作関係者と思われる方のブログを読んだことがあります。製作終了後の打ち上げの場を、村野氏はすぐに抜け出して近くの海だかどこかにいたそうです。制作関係者が声をかけると、村野氏は
「もう(こんな子供が出ている番組は)やらないからな!」
と言ったそうです。村野氏はもともとシェイクスピアなどの古典劇志向だったそうです。この作品はというと、ところどころコミカルなシーンや音楽があり、それほどシリアスではありません。村野氏の気持ちも、よくわかります。
Posted at 2024/08/13 14:58:49 | |
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