
アルバイトの記憶 スペード社シリーズ
そもそも、高校生活を総括して語る場などなかなかない中、私は急ごしらえながら高校生活を総括して語らなければならなくなったのです。
私は、中高一貫の固執楽学校に通っていました。当時は第何次かの受験戦争でして、各種の報道などから、中高一貫または大学付属の学校が有利と判断、中学のうちから大学を決めることはない、という両親の判断もあり、私は中高一貫校に通ったのでした。しかし、受験の回数は減らないので、私は少々疑問ではありましたが、ゲーム感覚で受験を乗り切っていました。
そして中学が終わり、高校の入学式の頃に事件は始まりました。
「たるんだ一貫生、受験まであと1000日」
普通の入学式では、教員たちは歓迎の言葉を述べるものです。しかし中高一貫ですと同じ敷地で、教員も一部持ち上がりということもあり、ほとんど連続した印象です。その場で、たしか受験対策かかりか何かの教員氏が、このように言いました。
「君たちの貯金は終わった。そして君たちが小学校の時に別れた友達で、この学校と同じレベルの学校に通う人がいたとしたら、君たちの方が劣っていると思った方が良い。人間は中だるみをするものだ。君たちは保護された6年間の中で、今最もたるんでいる時期にある。そしてその友達は、おそらく来年たるむだろう。たるんだ状態からどこまで元の状態に戻せるか、それは個人の努力による。だから君たちは、マイナスからのスタートなのだ。」
私や私の周りの人は、間違った道を歩んでしまった、と思ってしまうのでした。周囲でも中学の頃にゲームばかりしていた人がきっぱりとゲームをやめたり、商業予備校に通い始めるものなどが現れ、一種のパニック状態となりました。
私としても、
「勉強は努力やセンスによってしか伸ばせないが、少なくとも学園生活を謳歌するような、「楽しい」生活をしたら弛むであろう。」
と、楽しい気持ちにならないように気持ちの切り替えを誓ったのです。
また、中学から高校に進学する際にも審査が行われ、一部の違法行為をした者は「進学お断り」処分となり、排除されていました。そんなことから、「気づき」が早い人から、順次受験生化が進んでいったのです。
1年生の頃はまだのんびりした人もいましたが、2年生時の「文系、理系分け」から事情が変わってきます。文系は数学が2段階目で停止される一方で社会科は2科目目を選択、理系は数学が3段階目になり社会科は停止、物理と化学を受講していたように思います。ここで漠然と系統が分かれていったのですが、どことなく遊び感覚が抜けていない文系学生に対して、理系学生は受験準備の色合いが強まっていきます。
3年生時になると、さらに私立文系日本史、私立文系世界史、私立文系政治経済、私立文系数学、国立文系、私立理系、国立理系に分かれ、さらに受験ムードが高まっていきます。それを象徴する出来事がいくつもあります。
まず、秋の学園祭は学級ごとの出展は「なし」、部活の展示にも参加しない者は朝の点呼時のみ学校にいて学校を抜け出し、公立の図書館や商業予備校の自習室で勉強をしていたものが多数いた、と聞かされました。
学園祭で出展こそしなかったものの、来ていた他校生と仲良くなった人がいたようですが、その人のことを「はい、1人脱落。」と言ったり、「この非常時に目障りなんだよ。」とつぶやく人すらいました。
また、学校推薦枠の話が来ると、推薦を取ろうとする者が現れます。「推薦?取らないよ。」と言っておきながら同級生を油断させ、締め切り直前に推薦枠に応募する、という者もあらわれます。つかみ合いのけんかになっていたと聞いたような記憶がありますが、私は推薦を受けた人を「戦場放棄者。戦わずして楽な道に逃げるようなら、その後の人生でも逃げる」と、見下していました。
いやはや、戦場でした。そんな中私は、得意科目を高得点化してくれる学校のみ志望する「受験生Z計画」を晩秋から開始、他人に目をかけている暇すらない、という気持ちになっていたのです。
このように、何も謳歌せず、同じ学校の人も他の学校の人も「敵」としていた中では、「
和田焼盛君事件」は、殺伐とした学校生活でのちょっとした楽しみになったのでした。
この話を終わると、誰も何も言おうとしません。漫画やドラマで語られているような、一般的な私立中学・高校の雰囲気がまるでないからでしょう。その後、南大阪さんや山町さんは、私を「たたき上げの苦労人」と見るようになったようです。
そんな生活を送った私が、もし仮に違う学校、特に願書を送っておきながら試験を受けなかった隣青学園に通っていたら、あるいは公立校に通っていたら、またはヤマト産業大学に行かずに浪人をしてコーヒー大学などに通っていたらどうなったのか、他の人の学校思い出話を聞いて楽しんでいます。
Posted at 2025/06/13 22:33:07 | |
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