「予想通りの楽しいクルマでした」
待ち望んでいたSPIRIT Rの試乗を終え、担当セールス氏にこう答えた私。
慎重に言葉を選んだその裏には、決して期待を裏切られることはなかったものの、期待を超えるほどの大きなインパクトもなかった・・・という辛い事実がありました。
でもそれはある意味、当然といえば当然のこと。
なぜならこの特別仕様車は、専用色のシートやアルミホイール、ブラックベゼルのランプ類、そしてオーナメントなどで一定の”特別感”を演出しているものの、少なくとも走りに関する部分は従前のType-RSとスペック的に共通なのですから。
いやいや、そんなことは判り切った上で、私がプラスαで求めていたのは、初めて新世代デミオやSKYACTIV TECHNOLOGYに触れた瞬間に感じた「これは応援しなければ!」というスペシャルな気持ちだったのです。
(そんな特別な動機がないと前に進めないくらい、現在のお財布事情は厳しいのです・・・)
誤解のないように言っておきますが、私はこのSPIRIT Rが最新・最良のロータリーマシンであるということに全く異論はありません。
RX-8は、21世紀のクルマとして相応しい安全・環境性能の基本を押さえた上で、スポーツカーの名に恥じない抜群のシャシー性能と、個性的で美しいスタイリングを実現し、そして何より、RE特有のエンジンフィーリングとそのエッセンスを贅沢に盛り込んだ個性的なクルマで、世界的にみても独自の存在感を放っています。
全てのマツダ車が明快に「走る楽しさ」を志向する今となっては、RX-8の素晴らしいハンドリング性能は以前ほど際立つ存在ではないものの、スポーツカーを所有する多様な楽しみとフル4シーターのパッケージングを巧みに共存させた偉業は、現在でも全く色褪せていません。
そりゃあ、超・刺激的で日常離れした走りやスタイリングは”ロータリー・ベスト・ピュア・スポーツ”を謳ったRX-7に一歩譲るかもしれませんが、あの時点(2003年)にマツダが世に問うRE搭載車としてRX-8はひとつの必然であったと思うし、そんな独自の魅力を持つ商品を生み出したマツダのエンジニアの発想力には今でも感服しています。
ただ残念ながら、こうして貴重なSPIRIT Rの現車をじっくり味わう機会に恵まれながらも、私自身SKYACTIVデミオに出会った時のような、現所有車の放出も厭わないほどの強い行動力を呼び起こすことはできなかったのです。
大のRE好きの私をして、なぜそんなにも冷静な反応に至ってしまったのか・・・
じっくりと考えてみた結果、ある2つの理由が浮かび上がってきたのです。
(つづく)
Posted at 2011/12/23 20:43:48 | |
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隠れ家のロータリー | 日記