先日、カーグラフィックTVでは「BMW 120」と「MINIクーパーC」が取り上げられていた。BMW1とMINIは車名こそ違うが、実は姉妹車である。
趣味性の強い「MINI」とは違い、実用性の高い「1シリーズ」は1.5ℓ直列3気筒ターボマイルドハイブリッドエンジンと2ℓ直列4気筒DOHCディーゼルターボ、そして2ℓ直列4気筒ターボの3つのユニットが搭載される。
昨年、プラットホームそのままに「F40」から「F70」としてモデルチェンジをしたが、事実上フェイリフトのようなモデルチェンジをした。そして、マイルドハイブリッド(以下MHEV)のガソリンとディーゼルをスタンダードなモデルに搭載した。なぜ、PHEVを選択しなかったのだろうか?
もちろん欧州企業の多くはトヨタやホンダのようなストロングハイブリッドシステムの技術を持たないからといえばそのままであるが、PHEVやBEVにしなかったのも不思議である。

また、メルセデス・ベンツのAクラスはモデルチェンジを行わず、事実上、現行モデルが最後になる模様だ。ベンツは収益性の低さを理由に現行型でAクラス、Bクラスは廃止する方針を固めているといわれる。
Aクラス、1シリーズ、ゴルフ、A3、308、C4、といった欧州のCセグメントの車を見ていると現行モデルのほとんどがその動力は直噴1.4(ゴルフは1.0ℓ308は1.2ℓ)~1.5ℓダウンサイジングターボ、2ℓディーゼルターボがほとんどである。
しかし、来る電動化に向けてA3と308はPHEVをC4とゴルフは、EVモデルをラインアップしている。その中でAクラスは、セダンがEQA(Cセグメントの電気自動車)のセダンとしてデビューするといわれている。また、そしてこのエンジンは内燃機関とモーターとの併用となるともいわれている。さらには現行Aクラスは2027年まで延命されるという報道もある。
BMWの1シリーズは、先代から5年目にしてモデルチェンジをした。初代は2004年 ~ 2011年、2代目は2011年 ~ 2019年、3代目が2019年 ~2024年。つまり4代目はから以前のケースよりも短い期間でバトンタッチをしたわけだ。それも4代目となる現行はプラットホームは変更されていない。
昨今の自動車メーカーでのモデルチェンジはかなり長くなってきている。そのメーカーの経営状態もあるが、昨今は熟成させながら延命させているところも多い。特に日本ではそれまで4年が普通であったが、最近は4年を過ぎているモデルも多数見られる。電動化に向けて、各メーカーが開発費用を内燃機関から電動化に重きを置いていると考えられるし、経営者としては思い切った舵を切れなくなっているとも言えないだろうか。
※MAZDA2とMAZDA3のモデルチェンジが不鮮明であるのもこれが理由ともいえないだろうか。
ここ数年は欧州は環境問題とそれらに対する環境団体やそれら団体から支援を受けている政治家などからEVに舵を切ったわけだが、実際の開発費とコストから車の価格高騰を招き、さらには中国の低コストで販売できる車の影響を受け、その流れは鈍化しているのはご存知のとおりである。

Cセグメントは販売のボリュームが大きく、各メーカーが多様なモデルを投入している。その中にあってトヨタのCセグメント、ホンダのシビックはストロングハイブリッド(プリウスはPHEVも)である。価格面から考えると、当然PHEVが一番高くなる。そして次はスポーツモデルとストロングハイブリッド、その次がMHEVになる。その意味では日本は多様なモデルを購入できるわけだ。
では、なぜ、1シリーズはPHEVを搭載しなかったのだろうか?
性能面から言えば、燃費と加速の力強さはストロングハイブリッドやPHEVであろう。しかし、高速道路では思ったほど燃費は伸びないようだ。反対に都市部や郊外での燃費はかなり良いという。
欧州の場合、一般道路の平均速度が高いことやバカンスで高速道路を使って長距離移動の多い生活においては、部品点数が多くなり、価格が高めの車よりもディーゼルを選ぶというのは真っ当である。

そうなるとCAFEとよばれる欧州の燃費基準が高くなったからと言って高額な車を購入できるのは限られてくる。そしてEV市場が予想以上に広がらなかったことや中国のEV進出ためか、ゴルフはドイツ国内工場を閉鎖するという報道が昨年から言われている。それを考えると当面確実に利益を確保できる1シリーズを内燃機関中心に販売をしていく理由が見えてくる。

では、日本市場ではどうだろう。
日本では、欧州とは違い大都市部では交通機関が発達しており、列車やバスがある程度整備されている。しかし、地方都市部であれば、自家用乗用車がまだ主要な交通機関である。
ただ、都市部ではSTOP&GOの多いところでは短距離走行(1回の走行距離が8Km以下の場合)の繰り返しになることから車にとってシビアコンディションにもなるわけである。また、年間の走行距離が2万キロ以下で渋滞が頻発しているところでは価格の高いハイブリッドを購入しても車としてはシビアコンディションであれば、劣化は早くなるということにならないだろうか。

そう考えてくるとマイルドハイブリッドの車のほうが価格面と維持費はストロングハイブリッドよりも有利になってくる。
スズキがソリオのストロングハイブリッドを廃止にしたことやマツダがMAZDA3やCX-30でマイルドハイブリッドを継続販売していることは、技術面の遅れだけではないとも言えないだろうか。燃料代が高騰することからできるだけ燃料代の支出を抑えたいと思うことからストロングハイブリッドを購入することを考えてしまうが、一概に正しい判断ではないかもしれない。

ましてや昨今ハイブリッドを搭載するということは、車の重量が増大するのである。1シリーズの車両重量は1,460~1,570 kgであるが、ディーゼルエンジンが重いといわれた先代のマツダアクセラは1430kg〜1450kgである(ちなみにプリウスやシビックは1500㎏以下)。つまり今後バッテリーの重量が重くなれば、タイヤの摩耗が大きくなり、長期に維持すればタイヤの交換の回数が多くなる可能性を含む。さらには昨今大口径ホイールの流行からタイヤの一本の価格からしてもかなりの大きな金額になると、燃料費は節約できてもタイヤの購入金額が負担になってくるともいえる。
こうして考えると、高額納税者や高収入の職種ならまだしも一般の人であれば、マイルドハイブリッドの車を購入するという選択は間違いではなくなるのではないだろうか。 もちろん1シリーズよりもプリウスやシビックのハイブリッドは安価である。だからと言ってこの手の輸入車を選ぶ人はきっと燃費だけを考えての購入は決めないと思うが、BMW本社は競争力として他のメーカーに追従しなかった理由も見える気がした。
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自動車産業 | クルマ
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2025/05/05 13:31:56