この日はじっくり体を休めつつも時間が空いたため、CR-Zを試乗しに行きました。ホンダの車に試乗するのは初めてです。
エンジン
L15ASOHC4バルブVTECエンジン+電動機です。以前
シビックハイブリッドに乗ったことがあります。エンジン自体はVTECというほど明確なパワーの盛り上がりは感じません。ごく普通の実用エンジンという感じです。トルクカーブもフラットで、扱いやすいエンジンですね。
音質はフィット
で感じましたが、ジリジリ、ザラザラと砂をかむようなフィーリングです。もしかしたらノッキングぎりぎりの点火時期にしているからなのかもしれませんが、低回転では普通の感じがし、中回転域から上ではあまり気持ちがよくないエンジンです。加速騒音規制が厳しいからかもしれませんが、あまりドラマチックなエンジンではありませんね。軽快感もいまひとつです。実用エンジンですね。だからと言って面白くないかというとそうでもなく、「そこそこのパワーを使い切って楽しむ」感じがします。スポーツカーがいつの間にか「大馬力でドリフトして走る」車になってしまったかのような印象がありますが、三本和彦氏が言うとおり「少ないパワーのエンジンを、一所懸命シフトして速く走らせる」ことがスポーツカーだと思います。なので、狙いとしては良いところをついているものの、ちょっとフラットトルク過ぎるかな??
トランスミッションとの組み合わせでだいぶ印象が変わり、CVTではもっさりした吹け上がりを強く感じましたが、MTでは幾分シャープさと軽快感が顔を出します。
排気マニホールドレスだからなのでしょうかね?ホンダはここ最近になるまでマニバーター(排気マニホールド直下触媒)を採用していませんでしたが、同じマニバーターでも日産などはもっと良いフィーリングです。たぶん、次の世代のエンジンに移行することには解消するのではないでしょうか?
「バラードスポーツCR-X」も、普通のエンジンを小型軽量ボデーに載せたシティランナーという出で立ちだったので、先祖に戻ったといえます。
トランスミッション
CVT
すでにほかの車では廃止した「油圧多板クラッチ式CVT」です。このクラッチはオイルの劣化に大きく影響を受けること、発進時にトルク増大作用がないため、MTで2速発進したようなもっさり感が出ることが最大の欠点です。ただ、その領域を過ぎればスムーズに変速します。マニュアルモードはスムーズすぎて変速のありがたみと喜びを感じられませんでした。この点では
レガシィの方が変速ステップ比が大きくて、変速のありがたみを感じられましたね。
MT
MTの場合は、エンジンの感じがダイレクトに伝わり、軽快感が増すと書きました。また、適度にギヤノイズが加わって走っている感じが強く伝わってきますよ。クラッチはよじれが強いのかエンジンマウントがゆるいのか、クラッチをつないだ直後に駆動系がねじれるような感じがし、エンストしづらい代わりにクラッチミートがあいまいな感じで気持ちよくありません。
ギヤのステップ比としては6速MTとして普通です。モーターも付いていることだし、5速でも良かったのではないかと思えるほどです。一般道では4速ではちょっとギヤ比が低く、5速では高いという感じがしました。
シフトフィーリングは「全く分かっていない」感じがしました。たしかにカチカチとダイレクトに決まるのですが、E100カローラ系統まで強く感じた「シフトレバーを動かすと、レバーASSYがガコガコと音を立て、フロアパネルを振動させる」不快感が伝わります。トヨタではE110カローラ6速から改善を進め、今のオーリスではかなりしっかり、しっとりしたフィーリングを実現しているのに対し、これはトヨタ初期のものです。カタログ等ではこのシフトのセレクト距離(レバー左右の操作距離)とシフト距離(前後方向の操作距離)の短さを自慢していましたが、レバーの支点が操作点に近いため、レバーを操作するとノブの角度が大きく変わるんですよ。なので、手が動かされてしまい、気持ちがよくありません。また、スバル6速MT(現行レガシイで設計したケーブル式6速ではない)も同じなのですが、レバーのカチカチ感を出すあまり、シフトしたときに位置が強制的に決まり、手首にその「見えない壁」にぶつかった感じが強く感じられてしまい、操作したときの印象が「ゴリゴリ」したものになってしまっています。レーサー出身者がこういうシフトを良いと言いますが、とにかくゴリゴリしていて気持ちがよくありません。
この日店においてあったCL7アコードユーロRのものはもっと私には合わず、、、これでもましな方だと思い直しました。
ブレーキ
回生ブレーキが付いているため、停車直前に車のフリクションが大きいかのような印象を受けます。慣れればどうということはありませんよ。また、踏み始めはやはり回生が始まるためか、ちょっとブレーキを弱めにしないと効きすぎてしまうことがあります。フルブレーキは試せませんでした。
ボデー
ホイールベースが短いかもしれませんが、しっかりしています。タイヤに負けていません。ものすごく硬いかというと、それほどでもありません。タイヤは過剰に扁平させないほうが良いと思います。
斜め後方の視界は「最低」ですね。これでは合流をするような道で苦労します。後方視界は、プリウス、インサイト並です。ちょっとこの視界の悪さはないですよねえ。かつてブルーバードUやケンメリスカイライン、マークⅡハードトップを「穴蔵にこもったようだ」と評価した徳大寺有恒氏は、何も言わないのでしょうかね???
サスペンション
上記にリンクさせたフィットや
インサイトの時には、まるで自分の尻で上下動を吸収しているかのような感じがしましたが、この車はそういう硬さ(フリクション?)を感じさせません。コーナーリング時には適度にロールし、外側のサスペンションを沈めてコーナーリングする感じがします。乗り心地はフラットで、疲れを感じないのではないかと思います。
ハンドリング
乗り心地が良いサスペンションになったためか、過剰にシャープな感じはしません。適度なシャープさであり、これは気持ちが良いですよ。
デミオはシャープすぎて疲れる車でしたが、この車のシャープさは絶妙で、微妙な遊びと車の反応の鈍さが残っています。たぶん、長時間運転しても疲れないでしょうね。
また、ショートホイールベースゆえの軽快感はありました。が、街乗りなので真の安定性はわかりません。
そうそう、電動パワーステアリングは時々アシスト遅れを感じました。中速で大きくハンドルを切るようなときに、「モーターが手かせになっている」感じがしましたね。
アイドルストップ
シビックハイブリッド、インサイトと比較して、積極的にアイドルストップをしようとする努力が感じられます。エンジンが止まるときやかかるときの「ブルブルッツ」と来る感じもほとんどなくなりました。MT車でニュートラルにし、パーキングブレーキをかけて止まるような状態でもエンジンが止まっています。クラッチを踏んで、シフトレバーをシフトしたときにエンジンがかかります。そうそう、
マツダi-STOPは普通のスターターモーターで始動をしているのですが、この車と印象が全く同じです。マツダのi-STOPのすごさを改めて感じました。
まとめ
この車は、「ハイブリッドだから」という理由で選ぶのではなく、CR-Zだから、という理由で選ばれるべき車だと感じました。私は、「エコ」という言葉が大嫌いです。そんなに環境に配慮したいのなら、もっと自転車や電車を使えば良いのです。(ちなみに、この日は自転車で行きました。)この車は、スポーティーカーとしての走りの楽しさと、無駄にアイドリングをしないためと、減速時に発電するためのハイブリッドを持っている、楽しくて合理的な車といえます。プリウスは確かに燃費が良いかもしれませんが、やはり乗っていて全く楽しくありません。この車のMTは、運転していると自然に笑みがこぼれてくるような楽しい車です。面白い車が減っているといわれる中、やはり面白い車はあるんだなあ、と
スカイラインとともに強く感じました。この車、面白いですよ~!
トヨタは焦るだろうなあ。社長が代わって以来、従業員なども「トヨタの車没個性だ」「走る喜びを感じない」と平気で前の時代を否定するようになりましたが、この感じはトヨタの今の車にはありません。たぶん、2年後くらいにこれにぶつける車を出してくると思います。
おまけ
本命は、フィットハイブリッド1500ccの5速MTですね。こういう仕様が加わるのかどうかは不明ですが、実用的で楽しい車を皆待っているのです。派手で速いとか、高くて豪華な車を喜ぶ最近の自動車評論家の意見を無視し、ぜひ昔ながらの「トヨタのSR、SL、日産のSSS、ホンダのSi」グレード的な車を待っています。
おまけ2
MTを買っている人の下取り車を聞いたところ、やはり全員MTだったそうです。。。渋滞で断続クラッチをするのが面倒くさいのかもしれませんが、この「面倒くさい」という言葉、キライなんですよねえ~。
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試乗 | クルマ
Posted at
2010/04/29 23:38:18