まずはじめに、この日記は2006年7月の回顧録兼試乗記です。旧型ヴィッツの1000cc車に設定されていた、「トヨタインテリジェントアイドルストップ」仕様車のことについて書いています。すでにヴィッツは
3代目に移行しており、アイドルストップシステムも異なる仕様になっています。
トヨタのアイドルストップの歴史
意外に古く、KP61型スターレットの一部に設定されていたようです。詳細は全くわかりませんが、MT車に設定され、クラッチペダルを踏むとエンジンがかかり、フラッシャを作動させているときにはアイドルストップが行われなかったようです。
その後、ハイブリッド車であるプリウスが1997年に発売され、同時にアイドルストップ機能が加わりました。ハイブリッド車の燃費が良い理由の多くは、実はアイドルストップにもよります。
エンジンとアイドルストップシステム
エンジンは直列3気筒の、1KR-FEエンジンが搭載されています。アイドルストップシステム搭載に当たって特別なチューニングはなされておらず、基準車のままのエンジンです。
後に
iQの試乗をしてそこでも述べていますが、のべつ幕なし「ポロポロ、ビーン」と、直列3気筒エンジン特有のエンジン音が響き、決して快適ではありません。しかしながら、4気筒1000ccエンジンと比較すると、低中速のパワーが強いように感じます。摩擦部分の面積が少なくなっていることと、冷却損失低減による効果ではないかと思います。
が、車重に対するパワーは不足気味で、特に高速道路では余裕が感じられません。iQですら感じたことですので、より車重が増しているヴィッツではもっと不足しています。特にCVTの変速比が高い領域に移行してからのパワー不足感は特筆(?)もので、もう少し加速したいと思ってアクセルペダルを踏み増しても、車速はほとんど上がりません。全開にしてもパワー不足は変わらず、郊外の吹田一般道を、トコトコ走る車と言えます。都市部はもちろんのこと、平均速度が高い地方都市、バイパス道には全く向きません。
「ややパワー不足な車を、技を駆使して速く走らせる」ことが好きな私でも、パワー不足とエンジン音の悪さにはほとほと参り、運転する気力がなくなってしまいます。ただし、定速走行に移行したのちは、ギヤ比の高さも相まって、結構静かです。
アイドルストップは、確か停車のごく直前に行われたように感じます。ブレーキで停車し、Nレンジにシフトしてからブレーキペダルから足を離しても、エンジンはかからなかったように思います。走行レンジでブレーキペダルから足を離すと、普通のギヤ噛み合い式の12Vスターターモーターが作動してエンジンをかけます。これは、
マーチや
ムーヴ、
ミライースと同じです。始動時間は現在のものよりも若干に劣るようで、手でイグニッションスイッチを操作しているのとあまり変わりません。
また、時に始動に失敗することがあります。その時には、アイドルストップコンピューターがいったんクランキングを中止し、再びクランキングを行います。ドライブ中に2回ほどあったものの、幸い2回目のクランキングで始動に至りました。
このアイドルストップシステムを実現するために、助手席の下にリチウムイオン電池を積んでいます。予備電源としての電池だったか、スターターモーター専用電源であったかは忘れてしまいましたが、アイドルストップ車用バッテリーの規格もなかった当時としては、こうするほかになかったのでしょう。この点からも、実験車、限定車的な位置づけであったと考えられます。
トランスミッション
その後、私が何度も書いています「発進時はロー、定速走行にすると、あれよあれよという間に高い変速比に移行させる」CVTです。パワーがないエンジンを助けようとはしていますが、限界があります。しかも、アクセルペダルを踏み増した時の変速レスポンスが良くありません。
サスペンション
このシステムを搭載することで車重はあまり増していないはずですが、若干硬質な乗り心地でした。特に前輪のしっかり感(ツッパリ感?)は大したもので、コーナーでは結構踏ん張ります。もうちょっとしなやかさがあっても良いとは思いました。
後輪の乗り心地は前輪に比べてやわらかく、前輪の硬さを際立てていました。
ステアリング
二代目ヴィッツで、初めて1000ccエンジンが3気筒化されました。ただし車両の基本は4気筒で設計されたようで、上記サスペンションの感じとともに、操舵感の軽さとしっかり感がおまけになって付いてきました。私が普段乗っている車は、コロナはややフロントがヘビー、ブルーバードシルフィは当然ヘビーと、フロントが重い車ばかりですが、相対的に前輪が軽い車の気持ち良さを味わえました。
ブレーキ
この点はあまり印象に残っていないのですが、
パッソのような頼りなさは一切なかったように記憶しています。しかし、しっかりしていた印象も、これまたありませんでした。
ボデー
これは、サスペンションの感じが強くてあまり印象に残っていないのですが、結構しっかりしていたような気がします。しかし、フロントセクションが、ちょと「ブルッ」と振動したような記憶もあります。おそらく、オーリス並みであると考えられます。
また、視界も良く、クリーンなイメージがありました。現行モデルでは廃止されたセンターメーターですが、メーカーが「運転席前メーターよりも視点の移動が少なく、疲れない」は、全く感じませんでした。メーターは長い間見るものではなく、前の景色を見ながらたまに目をやる程度なので、視点を合わせないから感じなかったのでしょう。
まとめ
レンタカーによるドライブを始めて間もない時期の乗車でした。それにしてはいろいろ覚えてもいますし、フロントのしっかり感は今でも手ごたえとして残っています。しかし、3気筒エンジンの音の悪さは、どうしてもなじめませんでした。内燃機関としての効率を考えると、気筒数の減少は避けられません。しかし、3気筒や2気筒は独特な音と振動が強いため、3気筒は660ccが限度であるように感じました。1000ccだと振動が大きすぎて、バランスシャフトでもつけてくれないと我慢ができません。しかもパワー不足ですので、ますます乗る喜びがなくなっていきます。
したがって、この車は「動けば何でもよい」という人にしかお勧めできませんでした。しかしその後、パッソが発売されるにあたって、ヴィッツの1000ccは居場所がなくなってしまっています。このため、3代目では1300ccが主役となりましたね。
ヴィッツの
カローラⅡ化を進めたのは、この代の登場時だったのでしょうね。しかし現在では、カローラがヴィッツに押し上げられ、プレミオ、
アリオンと
オーリスの関係がおかしくなってきています。一方で、
プリウスが独自の位置を取得どころか、どんどん拡大してきています。おそらく、遠からず車種再編が行われることでしょう。
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試乗 | クルマ
Posted at
2011/12/10 13:11:48