三菱iMievに続き、市販された日産のリーフに、この日試乗に行きました。この頃は転勤が決まったばかりで、しばらくは試乗はお預けかと思ったこと、この頃、各ディーラーにリーフが配置されるようになったことによる試乗でした。
電気自動車の歴史
そもそも電気自動車は、ガソリンエンジン自動車と同じころに出来たものでした。20世紀の初めころだったかな?電池は鉛硫酸バッテリー、モーターは直流直巻でしょうか?詳細は不明です。抵抗制御か運転士がスイッチで制御するかどちらかしかありませんので、速度制御はしづらかったはずです。
その後、日本では第二次世界大戦後に2年ほど販売されました。戦争のため、ガソリン精製施設も流通も途絶えたことが原因だったようです。しかしその後、朝鮮戦争による特需で日本は急速に復興し、電気自動車も滅んでしまったのでした。
次に注目されたのは、昭和40年代後半です。自動車による排気ガス公害が問題となり、1970年にマスキー法が制定され、排気ガス対策が始まったのでした。当時は三元触媒はなく、酸化触媒は知られてはいましたが、それまで研究は放棄されていました。既存のガソリンエンジンの改良で乗り切る方法、ガスタービンエンジンなどの異なるエンジンの研究、そもそも個人用自動車をやめる方法とともに、電気自動車が検討されたのでした。今問題にあげられている大阪市営交通はバスに導入したり、ダイハツではハイゼットベースの電気自動車を実験的に走らせるのでした。
しかし、酸化触媒とエンジン本体改良、各種排ガス対策装置の装着により、ガソリンエンジンでも排気ガス対策が可能となるのでした。
そして2000年代となり、二酸化炭素の問題や化石燃料の問題が発生し、再度電気自動車が取り上げられるのでした。これまでと異なるのは、
「電池技術が進化していること」
「IGBTなどの高性能なパワーエレクトロニクス装置が、安価に手に入るようになったこと」
「行政や国、世界的に関心が高いこと」
「CO2規制が始まること」
など、すべてが電気自動車に追い風になっていることです。某評論家さんが、「200km未満でもほとんどの要件は満たせるので、電気自動車でも大丈夫。」とおっしゃってはいますが、500kmは充電せずに走れてほしいですね。おっしゃるように大丈夫は大丈夫なのですが、年に数回行くようなロングドライブに、やはり自分の車で行きたいということが本音、複数台車を持てないほとんどの人は、やはり今の電気自動車は「不十分」と映るのだと思います。
電動機
三相交流型の電動機を採用しています。インバーターを電動機上に乗せ、デザインをOHVエンジンのタペットカバーのようにしています。これも過渡期ゆえのデザインなのかもしれません。
出力は108馬力となっていますが、ガソリンエンジンとは出力特性が異なり、低回転から十分なトルクとパワーを発揮します。曲がり角の立ち上がりでフルスロットルにしてみましたが、後ろから蹴飛ばされるようなパワーを発揮しました。もちろん、アクセルペダルを少しだけ踏む領域ではなめらかに走ります。おそらく、タイヤ性能に合わせて出力は絞り気味にしているのでしょう。おそらく、もっと急激にパワーをかけることも可能なはずです。
エクストレイルのターボディーゼルエンジンのパワーにも驚きましたが、あくまでも低回転域での力であったエクストレイルに対し、この車は途切れることなくパワーが持続します。もちろん、回転が上昇するにつれて力そのものは低下します。これは電動機ゆえの特性です。
トランスミッション
この車には、いわゆるトランスミッションはありません。モーターの回転を減速する減速機のみが存在します。モーターに負荷がかかると、受動的に電流が増すので、トランスミッションは不要なのです。
サスペンション
最近の日産車に共通する、やわらかくてしなやかな乗り心地です。ゆったりしていて、モーターゆえの静けさとで、フーガなどのエンジンを搭載した高級車が一気に古く感じられてしまいました。
若干ショックアブソーバーの効きが悪いかのようにも感じられます。しかし、床下に重いバッテリーを搭載することで重心が低くなり、ロールは思いのほか少なくなっています。これまでの車では「屋根がぐらっと傾く」感じがしていたところ、この車はロールスピードも少なく感じます。
また、突起などを乗り越えたときの傾きの収束のしかたが独特で、非常に収まりが良くなっています。このリーフの乗り心地は、非常に独特なものになっています。
ステアリング
もちろん電動パワーステアリングを採用しています。若干軽い感じがしたかな??上記のロールのおさまりの良さもあり、気持ちが良い操作感となっています。
ブレーキ
マスターシリンダーのピストンを、送りねじ機構のモーターで押す方式の電気指令式油圧ブレーキとなっています。先に登場した
フーガハイブリッドと同じブレーキ機構を採用しています。運転士がブレーキを操作しても、回生ブレーキを優先するために摩擦ブレーキを効かせない機構です。いわゆる、「遅れ込め」にも似ています。
フーガの場合は、ブレーキペダル操作に対して制動力の立ち上がりが一瞬遅れる印象がしました。おそらく、クラッチ機構がエンジン系統を切り離すロスなのかもしれません。この車は動力が一系統しかないため、そのような時間的ロスがなく、全く違和感なく制動力が立ち上がります。細かいコントロールも受け付けられ、違和感ないブレーキングが可能です。
トヨタの
ソレノイド式ECBは三代目プリウスになってだいぶ改善されたのもかかわらず、この方式と比べて違和感が強いブレーキとなっています。しかも、高圧にされたブレーキフルードを蓄える「アキュムレーター」が、おおむね10年程度で故障、ブレーキアクチュエーターごとの交換になる可能性が高いことを考えると、日産のこの方式は賢い方式であると思います。
同じくアキュムレーターを採用し、某評論家が絶賛したY32セドリック・グロリアのブレーキ、これはアキュムレーターが非常によく故障しました。この車が10年程度たった頃にちょうど故障し、オーナーに車を廃車させる決心を付けさせたのでした。Y32の無念を晴らしたブレーキといえます。
ボデー
駆動バッテリーを搭載するためにフレームを強化したのか、ボデー剛性が非常に高く感じられます。もしかすると、重心が低いためにロールやショック吸収による「揺れ」の収束が良いことが、こう感じさせるのかもしれません。
反面、乗車位置がかなり高く、普通のハッチバックとクロスオーバーの中間のような感じがします。床下にバッテリーを積む、ということが、かなりボデースタイルに影響しているはずです。
スタイルについてはいろいろ意見があるようですね。トヨタ4500GTのリヤスタイルにも似ていますが、意外に腰高で、スタイリッシュには見えないなあ。視界はまずまずですが、
プリウス同様、「いかにも環境に配慮しています的な潔癖症スタイル」に嫌悪感を抱く人は少なくないはずです。
まとめ
この車は、「充電電池型電気自動車」が普及するかどうかは別として、「電動駆動車」が普及するかもしれない第一弾ということで、評価しなくてはならないと思います。しかし、満充電時の走行距離が180kmというのは、買い物にしか車を使わない個人宅や、駅と会社を往復するだけの社用車にしか使えないでしょう。
車としては全く刺激がなく、乗ると鎮静効果があります。これを「つまらない」「飽きる」とする方もいることでしょう。
充電池が高性能になるか、燃料電池が実現されてインフラが整備されるか、どちらが早いかはわかりませんが、一度乗ってみることをお勧めします。
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試乗 | クルマ
Posted at
2012/01/21 23:20:06