
現行プリウスの試乗は、既に年末に済ませております。技術的な部分ではTNGAボデー構造を新規に採用しているとのことで、ロングドライブの必要性を感じておりました。本来は6月初めに
メルセデス・ベンツGLAとの並走ドライブで検証する予定でしたが、人数と予算の都合で断念しておりました。素人試験ゆえ、予算を低く抑えること、すなわち参加人数を確保することも、長く続ける趣味としては大切です。
さて、本来なら複数人数で行くはずのこのロングドライブですが、人数が集まらなかったこと、一人での気楽なドライブも良いことなどから、一人で行くことにしました。試乗記については、短距離試乗の年末試乗記に対して異なる部分を示す、という形で書きます。お時間が許せば、先に
年末試乗記に目を通してください。
車両について
エンジン+モーター
長距離や山岳路を走ることで、電池マネジメントの考え方が大きく変わっていることがわかりました。これまでのモデルでは、なるべく電池を満充電状態に保つ考え方で充電制御やモーター駆動力が行われていました。今回のモデルでは積極的にモーターを使用し、SOC(バッテリー満充電に対する現在の充電率)が、半分程度になることも受け入れるようにしています。
加速時にもアクセル操作に対してエンジン回転は2000回転程度までは連動するようにしているものの、それ以上には上げていません。その際にもエンジンの燃焼音は高まりませんので、あくまでもジェネレーター(発電モーター)を回すためにエンジン回転を上げているような印象です。加速はモーターによる動力が中心であり、時折「エンジン回転の割には加速するな」と感じさせる場面があります。すなわち、エンジン車を演出している状態以上に、加速が鋭くなっています。
一般路で長時間に渡って加速することは少なく、やがて定速運転になり、コーナーでは減速します。その際にエンジンの余力を使用したり発電(回生)ブレーキによる充電が行われ、満充電に近い状態に戻ります。
家計に例えると、1000万円が入っている貯金箱(電池)があり、月収10万円(定速時や減速時などに行える発電)の家があるとします。親戚に祝い事があり、お祝い金として臨時出費10万円があるとします。旧型では1万円を貯金箱から出し、その月の月収から9万円を調達、その月は1万円で生活していたのが旧型までの電池マネジメントです。すなわち、貯金箱を満タンにしておくことが最重要課題であり、加速時にも電池からの放電を惜しんでいた印象でした。
一方で現行型は、「そんなに臨時出費は続かない」とばかりに、祝い事がある月には貯金箱から10万円を出費し、その月は普通に生活、翌月から毎月5000円を積み立ててゆっくり貯金箱を満タンにする考え方です。上にも書いたように、実走行では減速発電回生ブレーキ(臨時収入)があります。その際に電池を満充電に出来るだろう、と構えています。
電池の充放電が著しく、そろそろ街にあふれている「電池が寿命になった3代目プリウスや初期アクア」のようなことがより短期間で起こる心配はありますが、エンジンが働く場面を減らすことで燃費を稼いでいる印象でした。
加速は、リーフやアコードにも近い、モーターならではの鋭い加速が可能で、エコモードによる加速が旧型のノーマルモードの加速に相当します。パワーモードはアクセルペダル操作に対するモーターの反応が大げさで、運転しづらい印象でした。
エンジンの印象は変わりませんが、高速道路走行時の遮音が行き届いたためか、静かな走行が可能になっています。加速も前述のとおりモーター中心ですから、これまでのようにエンジンの回転を上げてから加速するような、いかにも余裕がないCVT車の「エンジン全開、加速度はスピードメーターで読み取ってください。」とでもいうような、加速力を読み取りづらい印象が薄くなりました。この辺りの印象は、値段相応の高級感を感じられました。
ブレーキ
試乗時以上に印象が悪化しました。ブレーキペダルを踏み込むと、回生ブレーキ中心の領域では概ねブレーキペダル操作量に応じたブレーキ力が得られます。回生効率が悪化し、油圧ブレーキ併用領域ではブレーキペダル操作量一定でも、減速力が高まります。そして極低速域の油圧ブレーキのみの領域では、急激にブレーキ力が高まります。減速度を調整しようとブレーキペダルを踏む力をやや弱めると、全油圧が解除されてしまうかのように、急激に減速力が低下します。そこでまたブレーキペダルを踏む力を強めると、急激に制動力が立ち上がる、という、まるでオンとオフしかないスイッチのようなブレーキ操作感です。
旧型のような、まるでブレーキペダルにガムでも付いているかのような、ブレーキペダルの戻りの悪さこそなくなりましたが、およそコントローラブルという言葉が遠く感じるブレーキです。他社が採用する電動マスターシリンダーの方が、回生ブレーキに回せる動力が少なくなるものの、ペダル操作感やブレーキ力の調整という点から言えば優れています。
サスペンション

スプリングを弱めてショックアブソーバーを強めた印象のサスペンションでしたので、緩いカーブではロールがよく抑制されるものの、曲がり続けるような山岳路、高速道路のインターチェンジなどでは、かなりロールします。特に屋根が重く感じられ、人間の頭はかなりコーナーの外側に傾く結果となりました。街中の試乗と実使用で最も異なる点です。
ステアリング
旧型はストロークを拒むようなサスペンションでありながら、目一杯ロールした状態ではほとんどステアリング操作を受け付けず、急激なアンダーステアに悩まされました。ストロークを拒むのに、ステアリングの切り始めではかなり動きが鈍く、車が曲がり始めるまで時間を感じたものですが、
現行モデルではサスペンションの動き出しが柔らかいのに、ステアリング操作に対する反応は鋭くなっています。ロールした状態からでもステアリングを切ると、もう少し曲がろうとする反応を見せます。サスペンションストロークに対するキャンバー角の変化が少なく、キャスター角を強めたことの良さが現れています。
結局のところ、シート上でロールする人間が一番困りもので、結局はロールの深さがここでも一番の問題になります。
ボデー
ボデー後部のしっかりした印象は、市街地走行時以上に素晴らしく感じました。普通の車が相対的に後部の剛性が低いのに対し、この車では前部、特にAピラー周辺の剛性が負けているほどです。
高速道路出口、減速帯から料金所に至るまでの270度カーブには、轍が出来ています。轍のように、横方向と縦方向にボデーが著しく曲げられる道路では、後部はしっかりしているのに、屋根とボデー株を結ぶAピラーが横に曲げられ、キシミを感じてしまいました。
ロックピラー(Aピラーの付け根からサイドシルを結ぶ部分の柱)がTNGAによって強化された一方、Aピラーやその結合部は少し手を抜かれたのかもしれません。車体のどこかに弱い箇所をつくりませんと、どこかで破断が起こります。難しい選択ですが、最も弱い箇所がAピラーになってしまったようです。
テールゲートが寝ており、その部分で捻られるリフトバックボデーなのにこのように感じるということは、かなりボデー後部の剛性が高いと言えます。
シフトレバーは再びインパネシフトになりました。扱いやすさはまずまずですが、モードスイッチが遠くて扱いづらいです。一方でステアリングホイールにはオーディオなどのスイッチを付ける、全く理解できません。
トヨタセーフティセンスについて
衝突軽減ブレーキの予告ブザーを経験しました。右折路がない交差点手前において、前車が突然方向指示灯をつけて右折しようとしました。私は当然、前車は直進するものとして走っていました。また、右折路はないものの左側には余裕があり、少々減速するだけで脇をすり抜けられそうでした。また、対向車はいなかったために、右折車はすぐに右折出来そうでした。そのために、私はそのままの速度で前車に接近する形となりましたが、ここで「ピピピピ」とブザーが吹鳴しました。「え、この程度で警告?」と思うほどの怯え?ぶりで、これでは「狼少年」になってしまうことが危惧されます。
前車追従クルーズコントロールも使用しました。前車がいない状態では、速度変化しか見ていない調整ぶりでした。橋など少しの上り坂では、坂に差し掛かって負荷によって車両は失速、すると慌てて出力を増して加速、橋の上の平坦路に差し掛かっても加速中であるために設定速度を超える、下り坂では速度が増し過ぎてしまうために、今度は回生ブレーキで減速、と、全く下手くそな運転そのものです。
高速道路では、下記に示したように豪雨に見舞われました。前車のアクアを認識して前車に合わせて追従しておりました。しかし、水しぶきで姿が見えなくなると、前車がいなくなったものとして認識、設定速度まで加速しようとしました。かなりの急加速であったために車間距離は急に狭くなり、私は慌ててブレーキを踏むのでした。
前車が見えづらくなったらシステムが停止し、マニュアル走行モードへ移行すれば良いものの、見えない=いなくなった、と判断することに怖さを感じました。常識的に考えれば豪雨の際にはシステムを止めて運転すべきですが、このような単純な意地悪にもシステムが破綻、誤作動とでも言うような制御をしてしまうので、カメラだろうがレーザーだろうが、自動運転は信用できません。
まとめ
770kmを走行し、約28リットルを使用、燃費は27km/リットルになりました。2代目プリウスが22km/リットル程度、3代目プリウスが24km/リットル程度と、順調に成績を上げています。エンジン自体の熱効率向上もあるでしょうが、電池マネジメントの宗旨替えも効いていることでしょう。PHEVも高成績を上げてくるでしょうが、電池寿命が気になります。
車としての味わいは向上しており、乗り心地良く、楽しく走れる車になりました。無機質を貫いてきたプリウスでしたが、乗って楽しい味わいをも身につけてきました。トヨタの車としての先進性は薄れましたが、楽しくて快適で、非常に良い車だと感じました。もっとも、車両価格を聞くと「うん、それだけ高ければ、この位は良くないとね。」と、普通の評価にはなってしまいます。
一方、アクセラハイブリッドとの比較では、若干運転の楽しみは落ちます。エンジンとアクセルペダルの関係性において、プリウスはこれまでのプリウスを継承し、アクセラハイブリッドはTHSを感じさせない仕上がりとなっていました。
燃費よく乗り心地もよくと、所有期間を7年くらいとした場合には、非常に良い買い物になると思います。もちろん、ガソリン代で車両価格の差を埋めることは不可能です。
参照して欲しい記事
トヨタ
プリウス(NHW10)
プリウス(NHW20)
プリウス(NHW20)
プリウス(ZVW30)高山往復
プリウス(ZVW30)インサイトと同行
プリウス(ZVW30)CR-Zと同行
プリウスα(ZVW40)
プリウス(短距離)
アクア(短距離)
カムリ
SAI(初期型)
日産
スカイライン
エクストレイル
マツダ
アクセラハイブリッド(短距離)
アクセラハイブリッド(長距離)
ホンダ
フィットハイブリッド(短距離)
フィットハイブリッド(長距離)
アコード(前期型)
グレイスハイブリッド
スバル
XVハイブリッド
スズキ
イグニス
ドライブ自体の話
今回は一人で行くために、市内のレンタカー店で調達しました。ところが、国道と高速道路の料金所までの区間がノロノロ運転で、40-50分ほどロスしてしまいました。
いつのの通り、常磐自動車道を勿来まで進みます。100km地点は、コースが従来通りですので水戸の北付近で迎えているはずです。勿来インターチェンジで高速道路を降り、西に進路を取ります。200km地点は田臥からもう少し西進したところでしょうか。
塙、棚倉を経由し、白河市に至ります。
白河市内を抜けて、甲子道路を下郷や南会津に向かいます。300km地点は、下郷の手前だったかな?
下郷の交差点は、今回も檜枝岐村側を経由することにしました。尾瀬入口辺りから雲行きが怪しくなり、断続的に驟雨に見舞われました。
シルバーラインを抜けて小出から、関越自動車道に乗ります。石打塩沢に至るのですが、途中からかなりの豪雨に見舞われました。石打塩沢からは再び西に向かい、津南を通ります。この付近で400kmだったかな?
いつも通る奥志賀林道は、2日前に岩が崩れ、通行止めになってしまっていました。
仕方なく、飯山、中野を経由して志賀高原に入りました。
途中のスーパーで、コーミの駒ヶ根ソースカツどんソースを購入しました。寄り道、回り道をしましたが、この方が時間は速そうです。
志賀高原でもまたひと問題発生です。草津へ抜ける区間が夜間通行止めで、万座を経由して山を下りるという、遠回りを強いられました。万座ハイウェイの途中で仮眠を取り、今後の計画をします。中之条から日光へ抜けても良いのですが、充分走りましたし、余裕を持って11時台に帰宅するのも悪くないと考え、そのまま渋川伊香保から関越道を走ることにしました。
600kmは渋川伊香保へ向かう途中の一般道で、700kmは、関越自動車道の上で迎えたと記憶しています。万座から渋川伊香保の一般道はかなり整備され、速度も上げられ、カーブも減っている印象でした。あちこちの国道が整備され、狭い道やカーブが減っていました。